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oldmanさん
oldman
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ハイジの物語を知っていますか? アニメじゃなく物語のハイジを…  読んだ人はこれを読んでみて下さい。もう一度読み直したくなります。アニメでした知らない人も読んでみて下さい。本のハイジと会ってみたくなります。
図書館の新刊棚に置いてあったのでかりてみました。

スイスと言えば日本人が思い浮かべるのはテレビアニメの「アルプスの少女ハイジ」でしょうか?
あの番組が始まった時20歳だった僕は、子供の頃読んだお話のイメージが壊れるのが嫌で見ていません。それまでテレビや映画でそれまで読んだ色々な話のイメージが壊れる事で苦い思いをしてきたからです。 

この本はスイス人である著者が分析したシュピーリの「ハイジ二部作」とそこから派生し世界を征服したこの物語の研究と論考がされています。

今 私たちがスイスと言われるとハイジ以外にどんな国を思い浮かべるでしょう? 
永世中立国? 機械式時計? アルプスなどの観光国家? デューク東郷の口座がある世界有数の信用を誇るスイス銀行? ゴルゴ13はさておき日本人にとっては行ってみたい国のベスト20に入るでしょう。(昔ならベスト10に入ってました)

ハイジ二部作の作者ヨハンナ・シュピーリは1827年スイスで生れています。
19世紀のスイスは当時の他のヨーロッパ諸国からみると、美しい自然があるが住民は少し遅れた”野蛮人”という認識です。 いわばロビンソン・クルーソーに対するフライデーの様なイメージだったんですね。(勿論シュピーリは父親が医者(外科・精神科)で母親はスイス屈指の女性詩人でした)

その頃までのスイスの産業と言えば牧畜と傭兵…農耕に向く平野は少なく男達はヨーロッパ各国へ傭兵として出稼ぎに行っていたのです。
ホラ意外でしょう? まぁ良く知っている人にすればスイスは永世中立国ですが、国民皆兵で兵役後も予備役として農家の片隅に軍用ライフルが置かれている国です。(永世中立には高い代価が必要なのですね。)

閑話休題。著者は第一章で物語の舞台であるマイエンフェルトを訪ね(ちゃんとハイジ村が有ります)その後シュピーリの生涯をなぞりハイジの生れた背景を探ります。

二章・三章では、ハイジ二部作を分析・論考しています。(知らなかったでしょう? <僕も知らなかったけど(;''∀'')> ハイジは実は二部作なんです。…第一部「ハイジの遍歴と修業時代」第二部「ハイジは習ったことを役立てる」)

ここでおおまかなハイジの物語が語られますが、その背景に有る思想はプロテスタントの敬虔主義思想と、ルソーやペスタロッチ(スイスの教育者 凄く懐かしい名前です)の教育論。そして先に書いた当時のスイスに対するイメージを改める素晴らしい自然を賛美する(その根源には神への感謝)が見られることが解ります。

第四章では、ドイツ語で書かれた物語がどの様に各国で翻訳され、またシュピーリの死後様々な二次創作によって続編が作られた事を分析しています。(そこでは、ハイジは育ち、学校の先生となり、子供が出来、お婆さんとして孫まで出来ています)
笑ってしまうのはネット世界でのシュピーリ作と言われている作品のタイトル「ハイジと不思議な鳥」(ランサムのシロクマ号と謎の鳥)「ハイジとサーカス」(ロフティングのドリトル先生とサーカス)「ハイジとサンタクロース」等々…さすがの著者も「これを全部比較検討するのは勘弁してほしい」とぼやいてます。 そして当然あのアニメ「アルプスの少女ハイジ」にも分析は及びます。中々面白く興味深い分析ですが、興味のある人は本を読んでね。 あっ 余談ですがセントバーナードのヨーゼフ”原作には出て来ません”がフランス版ではエルキュール(ポワロですかっ!)になってるそうです。
そして、沢山制作されたハイジの映画とドラマへの考察もきちんとされています。
これまた、余談ですがスイスがその”名誉と情熱”をかけて制作した映画「HEIDI]邦題「ハイジ アルプスの物語」が8月日本公開です。ほぼ原作に忠実なようです。見に行かないとね(^◇^)

最終章ではシュピーリの残した他の作品(彼女は約50作の物語を残しています)も簡単に分析論考しています。

これを読むとこの有名なお話を今一度読み返したくなります(少なくとも僕はね…)という事でそれも図書館で借りて見ようっと…

    • 多くの日本人の知ってるハイジ
    • この夏公開のスイス版ハイジ 見たいなぁ
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oldman
oldman さん本が好き!1級(書評数:578 件)

最近歳のせいか読書スピードが落ちているにもかかわらず、本好きが昂じて積読本が溜まっております。
そして、歩けるうちにとアチコチヘ顔を出すようになりました。

現在はビブリオバトルを普及することに力をいれております。
その為読書メーターにはコミュニティーも作りました。
( ゚∀゚)つ https://bookmeter.com/communities/337701

いささかひねくれた年寄りですがよろしくお願いいたします。
2016年12月 読書メーターのプロフィル画像とハンドルネームをちょっと変えてみました(*^^*)
読メハンドルネーム oldman獺祭魚翁

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