かもめ通信さん
レビュアー:
▼
語り口は柔らかでウイットにとんでいて決して読みにくくはない。思いの外読み終えるまで時間を要したのは、“明日”のことを考えるのが少しつらかったからかもしれない。
本当に“なにも考えていなかった”のだ。
誰がってもちろん、年若いドイツ人青年ピネベルクとその恋人の“子羊ちゃん”の2人のことだ。
偶然出会い、互いに惹かれあい、愛し合ったはいいが、子どもができてしまった。
そんなことになるとは、これっぽちも考えていなかったのだ。
はてさて、この先いったいどうするのか?!
ピネベルクは衝動的に“子羊ちゃん”にプロポーズするが、その結婚によって失業するかもしれなかったし、“子羊ちゃん”ときたら、いままで家事は全部母さん任せで、本当に世間知らずだった。
そんな二人の結婚生活は果たして上手くいくものだろうか?!
住むところだけでなく、料理につかう鍋さえも思うようにそろえられない二人の新婚生活をのぞき見るたび、ハラハラするどころかイライラしてくるのに、なんだか放ってはおけない気分になって、どうする?どうなる?!とページをめくる。
結局、ピネベルクは失業し、わずかなつてを頼って夫婦そろってベルリンへと向かう。
デパートの紳士服売り場に職を得たピネベルクは、予想していたよりもずっと少なかった給料で、大きな買い物をしてしまう。
明日からどうやって生活するつもりなのか?!
出産に備えたあれこれはどうするつもりなのか?!
待ちに待った“おちびちゃん”の誕生!
だが新米のパパママにとっては、おしめ一つかえるのも大事だ。
おまけに乳母車が手に入らない?!
読み進めていくうちに、この主人公ピネベルクに膝詰めで説教をしてやりたくなるのはの一度や二度のことではない。
だがこの男、愚かではあるが悪人ではなく、優しくてひどくまっとうで、本当に憎めない“坊や”なのだ。
ワイマール共和国末期、空前の大量失業時代を舞台にしたこの物語は、ユーモアと皮肉を交えながらも、貧困が若い二人の生活をじわじわと押しつぶしていく様を丁寧に描くことで、ヒトラーが政権を掌握する前夜の不穏な世相をにじませる。
1932年の発表以来、世界各国で翻訳され今なお読み継がれているというロングセラー作品の初邦訳。
語られる日常に浮かび上がる“明日”の予兆がとても切ない。
誰がってもちろん、年若いドイツ人青年ピネベルクとその恋人の“子羊ちゃん”の2人のことだ。
偶然出会い、互いに惹かれあい、愛し合ったはいいが、子どもができてしまった。
そんなことになるとは、これっぽちも考えていなかったのだ。
はてさて、この先いったいどうするのか?!
ピネベルクは衝動的に“子羊ちゃん”にプロポーズするが、その結婚によって失業するかもしれなかったし、“子羊ちゃん”ときたら、いままで家事は全部母さん任せで、本当に世間知らずだった。
そんな二人の結婚生活は果たして上手くいくものだろうか?!
住むところだけでなく、料理につかう鍋さえも思うようにそろえられない二人の新婚生活をのぞき見るたび、ハラハラするどころかイライラしてくるのに、なんだか放ってはおけない気分になって、どうする?どうなる?!とページをめくる。
結局、ピネベルクは失業し、わずかなつてを頼って夫婦そろってベルリンへと向かう。
デパートの紳士服売り場に職を得たピネベルクは、予想していたよりもずっと少なかった給料で、大きな買い物をしてしまう。
明日からどうやって生活するつもりなのか?!
出産に備えたあれこれはどうするつもりなのか?!
待ちに待った“おちびちゃん”の誕生!
だが新米のパパママにとっては、おしめ一つかえるのも大事だ。
おまけに乳母車が手に入らない?!
読み進めていくうちに、この主人公ピネベルクに膝詰めで説教をしてやりたくなるのはの一度や二度のことではない。
だがこの男、愚かではあるが悪人ではなく、優しくてひどくまっとうで、本当に憎めない“坊や”なのだ。
ワイマール共和国末期、空前の大量失業時代を舞台にしたこの物語は、ユーモアと皮肉を交えながらも、貧困が若い二人の生活をじわじわと押しつぶしていく様を丁寧に描くことで、ヒトラーが政権を掌握する前夜の不穏な世相をにじませる。
1932年の発表以来、世界各国で翻訳され今なお読み継がれているというロングセラー作品の初邦訳。
語られる日常に浮かび上がる“明日”の予兆がとても切ない。
お気に入り度:







掲載日:
外部ブログURLが設定されていません
投票する
投票するには、ログインしてください。
本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。
- この書評の得票合計:
- 38票
読んで楽しい: | 8票 | |
---|---|---|
参考になる: | 30票 |
あなたの感想は?
投票するには、ログインしてください。
この書評へのコメント
- かもめ通信2017-08-28 06:46
実を言うとナチスが台頭する時期の物語ということで、
掲示板企画「2017:本をとおして戦争と平和について考えてみよう!」
http://www.honzuki.jp/bookclub/theme/no294/index.html?latest=20
に間に合わせよう思いつつ読んでいたのですが、
読み終えてみるとちょっと違うかな…という気がして。
確かにクラウスコルドンの『ベルリン1919』に通じるものがあるのですが、
どちらかというとケストナーの『一杯の珈琲から』的な雰囲気というか…
『珈琲』よりもずっと現実的ではあるのですが。クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 コメントするには、ログインしてください。
書評一覧を取得中。。。
- 出版社:みすず書房
- ページ数:400
- ISBN:9784622085942
- 発売日:2017年06月21日
- Amazonで買う
- カーリルで図書館の蔵書を調べる
- あなた
- この書籍の平均
- この書評
※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。