書評でつながる読書コミュニティ
  1. ページ目
詳細検索
タイトル
著者
出版社
ISBN
  • ログイン
無料会員登録

DBさん
DB
レビュアー:
毒を持つ生き物たちの本
何かの広告か本の紹介で見かけて面白そうだったので読んでみました。
毒の生物といえば真っ先に思い浮かぶのがヘビ、そしてサソリやクモ、ハチといったところ。
だが本書では真っ先にカモノハシが紹介されます。
嘴があり卵を産む哺乳類といろいろ規格外なカモノハシは毒まで持っている。
カモノハシの雄の後ろ足には蹴爪がついていて、そこから毒液を注入することができる。
しかもその毒にやられると、銃創よりひどい激痛でモルヒネでも緩和できなかったそうだ。

続いて紹介されるのは、ハワイのハコクラゲに刺されて数日間激痛に悩まされ、さらに数ヶ月腫れと痒みが残った経験を持つ生化学者です。
ハコクラゲは刺胞動物門のなかで一番殺傷能力が高いそうですが、その生化学者はそれ以来ずっとクラゲの毒液の研究をしているそうです。
ハコクラゲの毒液の中で最も致死的な成分であるポリンは、赤血球に穴をあけカリウムとヘモグロビンを漏出させる。
被害者は下手をすれば5分程度で死に到るそうで、ホームズのライオンのたてがみ事件を思い出した。

こうした毒を持つ生物の中で最強の殺戮者は誰だ、ということでキングコブラとインドアマガサヘビ、ベネズエラヤママユガの幼虫、アンボイナガイなどがあげられる。
毒がどれだけ強くても人間との遭遇率が低ければ被害も少ないわけですが、どの生物ともお近づきになりたくはない。
ヘビの逸話はいろいろあって、毒ヘビを使った殺人事件なんてまだらの紐事件のような実話も出てくるし、ヴィシュ・カーニャというインドの伝説の若い女性暗殺者の話も登場する。

面白いのは、なぜマングースは毒ヘビを食べられるのかという話だった。
ヘビは毒素を進化させ、マングースはヘビ毒を無害にするメカニズムを進化させてきた。
オポッサムにもヘビ毒への耐性があって、それをミルクを通して自分の子供に与えることができるそうです。
オポッサムミルクを飲めば毒ヘビへの耐性があがるのかと思ってみたが、実際にヘビの毒を注射して自家免疫を作ろうとしている人がいるそうです。
だがコカイン以上の刺激を求めて毒ヘビに噛ませるヘビ窟なるものもあるらしいから、人間の奇妙さも底がない。

毒性生物の研究をしていれば刺された&咬まれた体験がつきものだが、著者もヴァーナーというウニのトゲに刺されたことがあるそうです。
子供たち相手に海の生き物探し体験をしているときの出来事だったようですが、シュミット3.0以上の痛みと吐き気、めまいに襲われたそうです。
このシュミットとは、ハチとアリの仲間七十八種から刺されてその痛みをランクづけした昆虫学者です。
シュミット疼痛指数4.0+という一番の激痛はサシハリアリに刺されたものだった。

ウニやイモガイだけでなく、海に住む生き物は毒をもつものが多い。
ミノカサゴは水族館で毒を持つ魚として紹介されていたのが記憶にあるが、カサゴ目の中では毒性が弱いそうです。
海では生き物と触れ合おうとは思わない方がいいという教訓になる。

毒生成物の持つ独の様々な種類や、それが体内で筋肉の麻痺や激痛を引き起こすメカニズムについても詳しく書かれていた。
そこから新たな薬ができるかもしれないという期待が実現するように、学者たちの研究にエールを送りたい。
掲載日:
外部ブログURLが設定されていません
投票する
投票するには、ログインしてください。
DB
DB さん本が好き!1級(書評数:2033 件)

好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。

読んで楽しい:10票
参考になる:20票
あなたの感想は?
投票するには、ログインしてください。

この書評へのコメント

  1. No Image

    コメントするには、ログインしてください。

書評一覧を取得中。。。
  • あなた
  • この書籍の平均
  • この書評

※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。

『毒々生物の奇妙な進化』のカテゴリ

フォローする

話題の書評
最新の献本
ページトップへ