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かもめ通信
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描くことで気づくことがあるように、読むことで知ることもある。
中身よりもキラキラ光る包み紙の方が気になる。
くたくたになるまで走り回る。
大人の真似をして自分で誰かを寝かしつけたがる。
いったいどうやったらこんなところにご飯粒が飛ぶのだろうという謎?!

子育て経験がある人はもちろん
小さなお子さんと一緒に過ごしたことがある人ならきっと
あるある!わかるわかる!と思わず笑ってしまうネタが満載のこの本が
他の育児マンガとちょっと違うのは
話題の中心が10歳の男の子だということだ。

カムくんは、先天性サイトメガロウイルス感染症。
発症自体がめずらしいこの感染症がもたらす障害は、人によってさまざまなのだそう。
カムくんの場合は、難聴、発達障害、睡眠障害などがある。
うまく話せない、あまり聞こえない、とても敏感、こだわりが強い、
よく歩きよく走りよく回る、夜になると元気になる、
そんな特徴を持つ男の子、それがカムくんだ。

この本はそんなカムくんの成長を、
お母さんのしおりさんが描いたコミックエッセイだ。

インスタグラムのフォロワー数、約20,000人!
「クスッと笑えてほっこりする」と人気の育児漫画が、ついに書籍化!
まったく不幸を感じさせない、むしろクスッと笑いを誘うような明るい雰囲気が、
この漫画の魅力です。
Amazonに掲載されている
出版社の宣伝文句にはこう書いてあったが、これはちょっといただけない。

「まったく不幸を感じさせない」という言葉からは
カムくんのような障がいを持っていたら
「不幸に違いない」という先入観のにおいがする。

しおりさんは“まえがき”に書いている。
悩んでいないわけではありません。
悩んで試行錯誤していますが、
カムのしぐさや反応に、大笑いしたり癒やされたり。
振り回されることが大変ではあるけど、
その中に喜びや楽しみもあり、幸せなのです。


そう、この本の中には確かにカムくんのご両親の“大変”が詰まっている。
けれどもそれ以上に、沢山の幸せが詰まっている。
だから読む人が思わずほっこり、癒やされるのだ。

これからカムくんの身体がますます大きくなって
ママがおんぶ出来なくなる日が来るだろう。
大きくなったカムくんが
公園のベンチでママの膝に乗りたがったら
周囲からからかわれることもあるかもしれない。

けれども、もし道ですれ違ったカムくんが
ママと繋いでいない方の手で
通りがかった人の手にぎって
3人で歩こうとしたならば
そしてもしその相手が幸運にも私だったならば
ニッコリ笑ってしばらく一緒に歩きたい。

そしてもし、差し出された手がふれたのがあなたの指だったとしたら
できればそっと握り返してしばらく一緒に歩いて欲しい。

そう自然にできるような社会であって欲しい。

そんな気持ちになる本だった。

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かもめ通信
かもめ通信 さん本が好き!免許皆伝(書評数:2234 件)

本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。

読んで楽しい:5票
素晴らしい洞察:4票
参考になる:23票
共感した:7票
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この書評へのコメント

  1. No Image
    もりちゃん2017-06-01 21:39

    この本の書評を読んですぐに読んでみたくなりました。「クスッと笑えてほっこりする」そんな心がなごむ本はなかなか無い。かもめ通信さんの洞察力に関心する。とても参考になります。

  2. かもめ通信2017-06-02 06:12

    もりちゃんさん、コメントありがとうございます。
    この本には、決して楽しいことばかりがつまっているわけではなく、
    ママもパパもカムくん自身も大変だなあ~と思うことも多々あるのですが、
    それでもやっぱり読んでいてとても温かな気持ちになりました。
    ぜひぜひ、読んでみてください。
    そして読まれたらぜひ、感想をお聞かせくださいね!

  3. Wings to fly2017-06-02 20:22

    「心が温かくなったけど切なくて泣きそう」に1票。私も読んでみたくなりました。

  4. かもめ通信2017-06-03 06:18

    Wings to fly さん
    ぜひぜひ!

  5. No Image
    もりちゃん2017-06-03 08:29

    「話せない、聞こえない。それはさておき息子カムは今日もゆく」を読み終えると、とても爽やかな気持ちになりました。そしてすぐに二度読みしました。作者の子育てに対する考え方がしっかり伝わるメッセージ本、それを4コマ漫画にする構成力と画力に関心しました。ブログで書いていたものを書籍化したということが絵のタッチでもわかります。後半になるほど絵が上手になっていく過程もうかがえます。丁寧で柔らかい画質は読みやすく、子育てもも気負いがなく、子供であっても一人の人間として対等な目線で接しているようすがよくわかります。
    この本は障害を持つお子さんの子育て中の方だけでなく子育てを終えたお母さんも「こんなことあった」と感じることができる本だと思います。知人にも紹介したい。これを書き終えた後
    もう一度よみかえします。

  6. かもめ通信2017-06-03 08:47

    おっ!もりちゃんさん!早速読まれたのですね。
    そうですね。しおりさんのお母さんとしての姿勢、本当に素晴らしいと私も思います。

    ところで、もし間違っていたらすみません。
    もしかしてもりちゃんさん、この本のことがお知りになりたくて、本が好き!においでになったのではありませんか?
    もしそうだとしたらぜひ、このコメント欄だけでなく、ご自身の書評として上に書いてくださったことをぜひアップしてみてください。

    その方が他のレビュアーさんの目にもとまりやすく、この本への注目度もアップしますので。
    書評登録の方法がわからなかったらこちら↓のページを参考にしてください。
    http://www.honzuki.jp/help/help/

    またもしやってみて、わからないことがありましたら、遠慮無く声をかけてくださいね。

  7. No Image

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