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darklyさん
darkly
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久々の馳星周。デビュー当時よりはパワー落ちてるか
舞台はイタリア。日本人でプロ野球の投手だった加倉昭彦(「夜光虫」の主人公)は野球選手としてのキャリアの終わりに台湾に移籍するが、故障で満足する結果が得られず金を稼ぐために八百長に手を染める。

そして台湾で出会ったリーフェンという女性に執心し、彼女を巡って多くの殺人を犯すことになり、「悪霊」と異名をとることになった。

そして整形し別人になりすましイタリアに逃亡し、現在はセリエAを舞台としたサッカーでの八百長をビジネスにしている。選手の弱みや金銭欲に付け込み、八百長させ、マフィアから報酬を得ている。そのプロフェッショナルな仕事ぶりから現在は「暗手」と呼ばれている。

夜も眠れない、物を食べても味がしない、ただ誰かが自分を殺しにくることを願っているような生活の中で、ある女性と出会うことで冷徹にビジネスを遂行する加倉に狂いが生じる。

その女性とは、現在請け負っている、日本人ゴールキーパーの大森怜央を八百長の世界に引きずり込む仕事の中で知り合った大森の姉の綾であり、リーフェンに雰囲気がとてもよく似ているのだ。

一方、中国マフィアに雇われており、暗黒街で知らぬものはなく恐れられている馬兵という男と加倉は仕事上絡んでいくことになる。

馬兵は中国人民解放軍特殊部隊出身で、殺戮マシーンであり、狙った相手を殺し損ねることはほとんどない。唯一の例外が台湾での「悪霊」なのだ。

馬兵は執念深い性格であり、未だに「悪霊」を探し続けている。もちろん馬兵は「暗手」が「悪霊」であることを知らない。

死んだ人間のように生きていた加倉が綾と出会い心を揺さぶられることで地獄の釜の蓋が再び開くことになる。

馳星周の小説は久しぶりに読みました。彼の得意とするノワール小説ですが、主人公は元プロ野球選手という設定であり、身体能力も精神力も半端なく、ダークヒーロー的なキャラクターです。通常のダークヒーロー物と違うのは、結末が勝利で終わるのか、破滅で終わるのかの違いしかないような気がします。

馳さんの小説と言えばやはり「不夜城」シリーズですが、アンダーグラウンドで金を求め、女を求め、知恵を絞り、騙し騙され、なんとか生き延びようとする男たちの高揚感、焦燥感、絶望感など異常なまでの熱が感じられ、疾走感のある名作でした。

それと比較すると、主人公も馬兵もちょっと現実離れしており、ややリアル感に欠けるかなという感じがします。ただ、私の読書のサイクル的に少し軽いエンタメ系の本が読みたい時期でしたので、そういう意味では楽しめました。
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darkly
darkly さん本が好き!1級(書評数:337 件)

昔からずっと本は読み続けてます。フィクション・ノンフィクション問わず、あまりこだわりなく読んでます。フィクションはSF・ホラー・ファンタジーが比較的多いです。あと科学・数学・思想的な本を好みます。

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