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DBさん
DB
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事件のタイムカプセルの話
以前ドイツの湿地から発見された遺体をめぐる話『ウィンデビー・パズル』を読みましたが、今回の作品も泥炭に埋まっていた遺体がらみのミステリーです。
舞台となるのはアイルランド、主人公のコーマックはダブリンの大学に勤める考古学者で、ダブリンから車で二時間半ほどのところにあるダーグ湖ほとりの湿原を目指していた。
その湿原で泥炭を切り出していた地元の農夫が女性の遺体を発見したとの知らせに胸を躍らせていた。
ドイツやデンマークでは湿原から何百という遺体が発見されていたが、アイルランドでは数が少なく五十体にも満たない。
だがタイムカプセルのように泥に埋もれて腐敗を免れていた遺体は考古学者にとって宝物だ。
期待に胸を膨らませるコーマックを待っていたのは、赤毛の若い娘の恐怖の表情を留めたままの頭部だった。

コーマックが解剖学者のノーラと発掘調査に取り掛かっていると、男が警官に止められているのを振り切るように現場にやってくる。
遺体を目にしてその場に崩れるように座り込んだのちに警官に促されて立ち去っていったが、このオズボーンという名の地元の名士の妻が二年半前に三才になる息子と共に失踪していたのだった。
刑事のデヴァニーはオズボーンの動向を目にして記憶にとどめ、おそらくは死んでいるであろう母子の事件を解決を心に誓う。

その後オズボーンに別の発掘調査を頼まれたコーマックは、オズボーンの住むブラックリン・ハウスに滞在してノーラを助手にした調査の傍らオズボーンの妻子の失踪事件に心をめぐらします。
ブラックリン・ハウスにはオズボーンと、彼の親戚の未亡人ルーシーとティーンエイジャーの息子ジェレミーが住んでいた。
赤毛の遺体を掘り当てた地元の農夫マクガンは、シングルマザーの妹ウーナがオズボーンと親しいのが気に入らない様子。
インド人だったオズボーンの妻にとってこの小さな町には知り合い以上の人間はいなかった様子で、もしそれが殺人事件だったとすれば犯人は共に寝起きしている誰かかもしれない。
そんな緊張感の中でコーマックはノーラとの距離を縮めていきつつ、遥か過去の謎とちょっと前の謎という二つの問題に取り組んでいきます。
コーマックの趣味がフルートで、地元のパブでセッションに参加するのがアイルランドらしい。
考古学とミステリーをうまく絡めた話で面白かった。
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DB
DB さん本が好き!1級(書評数:2049 件)

好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。

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