有坂汀さん
レビュアー:
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本書は思想界をリードする気鋭の哲学者、千葉雅也先生による本格的な勉強論です。千葉先生の刊行した本の中では読みやすい部類に入るのですが「有限化」「切断」「中断」の技法など書かれている内容はディープです。
本書は気鋭の哲学者、千葉雅也先生による「勉強の仕方」を徹底開示・解説した「一般書」です。千葉先生といえばジル・ドゥルーズの哲学をメインテーマとする研究で知られ、僕自身も千葉先生の本は『ツイッター哲学: 別のしかたで (河出文庫)』(河出書房新社)や、『動きすぎてはいけない: ジル・ドゥルーズと生成変化の哲学 (河出文庫) 』(同)などにも目を通してまいりました。
本書は千葉先生の著作の中でも読みやすい部類に入り、以前ツイッター上で千葉先生に
「こんにちは、千葉先生。現在『勉強の哲学』を拝読させて頂いているのですが、千葉先生が今まで刊行した本の中で一番読みやすいです!」
と送ったところ、即座に
「ありがとうございます!」
とリプライがが返ってきまして、まさにリアルタイムで著者本人とやり取りしながら本書を読むという贅沢な体験をさせていただきました。
千葉先生は常々
「親は子供に勉強しなさいと言う。でもそれは、世間にうまく内在して稼げるくらいに勉強してほしいってことですよね。ラディカルに世間を批判できる学力を得てほしいとは思っていない。ディープな勉強はしてほしくないのよ。というか、ディープな勉強などということを知らないケースが多いのだと思う。ラディカルに世間を批判できるようになる程までには勉強してほしくないのであれば、初めから「勉強しろ」などと言うな。お受験などさせるな。本来、勉強するというのは恐ろしいことなのだ。そして教師たる者は明日も、勉強することの恐ろしさを、その講義で十二分に展開するのである。」
とおっしゃっておられ、「変身」するためのディープな勉強、というものがどういうものであるかを本書でも存分に語っておられます。
僕もかつて、教えていた地元の大学の学生に千葉先生の言葉を教えてみたくなり
「こんばんは、千葉先生。千葉先生が常日頃おっしゃっている「親は子供に勉強しなさいと言う。でも、ラディカルに世間を批判できる学力を得てほしいとは思っていない」を近いうちに僕が接している大学生に教えたいと思っております。」
と千葉先生のツイッターにメンションを飛ばし、実際にある学生に伝えたのですが、件の彼はきょとんとした表情を浮かべたままでした。一連のことは拙著『斜めからの視点に立つ~釧路公立大学下山ゼミ生・学生団体SCANたちと分け合った日々~』(KDPほか)に記したのでそちらをご参照ください。
話を戻して、ここまで平易な言葉で自分の「勉強術」を公開できるのはそれ相応の「積み重ね」があることは明白で、それが最後のほうにある「補論」や「参考文献」に集約されているわけですが、千葉先生が本書を書くまでの「プロセス」が本書の中の「本編」なのかなと。そう受け取りました。
千葉先生は本書の中で
「勉強とは、これまでの自分を失って、変身することである。だが人はおそらく、変身を恐れるから勉強を恐れている」
とおっしゃっており、僕は本書を読んだ後で千葉先生にツイッターで
「昨日、『勉強の哲学』を読了しました。その上で一つお伺いしたいことがあるのですが、以前千葉先生がご出演されていた『哲子の部屋』でテーマに上げていた『「変態」の哲学』と内容が「地続き」のような気がしてなりません。」
と問いかけてみると、
「ありがとうございます! そうですね、『哲子』での変態論の続きと思ってもらってもかまいません。」
と千葉先生からリプライが返ってきたので、解釈としては間違っていなかったことを確信しました。
本書は著作を読み、著者とオンライン上での対話をリアルタイムで重ねていく、まさに21世紀的な読書体験ができた一冊であり、本書について僕からのつたない質問にも丁寧にツイッター上で答えてくれた千葉雅也先生にはこの場をお借りして感謝御礼申し上げます。ありがとうございました。
※追記
本書はその後、補章が加わった完全版『勉強の哲学 来たるべきバカのために 増補版 (文春文庫) 』(文藝春秋; 増補版)として202年3月10日に文庫化され、楽屋裏を開かした『メイキング・オブ・勉強の哲学』(同)も2018年1月26日に上梓されました。千葉先生の今後のますますのご活躍を心から祈念申し上げます。
本書は千葉先生の著作の中でも読みやすい部類に入り、以前ツイッター上で千葉先生に
「こんにちは、千葉先生。現在『勉強の哲学』を拝読させて頂いているのですが、千葉先生が今まで刊行した本の中で一番読みやすいです!」
と送ったところ、即座に
「ありがとうございます!」
とリプライがが返ってきまして、まさにリアルタイムで著者本人とやり取りしながら本書を読むという贅沢な体験をさせていただきました。
千葉先生は常々
「親は子供に勉強しなさいと言う。でもそれは、世間にうまく内在して稼げるくらいに勉強してほしいってことですよね。ラディカルに世間を批判できる学力を得てほしいとは思っていない。ディープな勉強はしてほしくないのよ。というか、ディープな勉強などということを知らないケースが多いのだと思う。ラディカルに世間を批判できるようになる程までには勉強してほしくないのであれば、初めから「勉強しろ」などと言うな。お受験などさせるな。本来、勉強するというのは恐ろしいことなのだ。そして教師たる者は明日も、勉強することの恐ろしさを、その講義で十二分に展開するのである。」
とおっしゃっておられ、「変身」するためのディープな勉強、というものがどういうものであるかを本書でも存分に語っておられます。
僕もかつて、教えていた地元の大学の学生に千葉先生の言葉を教えてみたくなり
「こんばんは、千葉先生。千葉先生が常日頃おっしゃっている「親は子供に勉強しなさいと言う。でも、ラディカルに世間を批判できる学力を得てほしいとは思っていない」を近いうちに僕が接している大学生に教えたいと思っております。」
と千葉先生のツイッターにメンションを飛ばし、実際にある学生に伝えたのですが、件の彼はきょとんとした表情を浮かべたままでした。一連のことは拙著『斜めからの視点に立つ~釧路公立大学下山ゼミ生・学生団体SCANたちと分け合った日々~』(KDPほか)に記したのでそちらをご参照ください。
話を戻して、ここまで平易な言葉で自分の「勉強術」を公開できるのはそれ相応の「積み重ね」があることは明白で、それが最後のほうにある「補論」や「参考文献」に集約されているわけですが、千葉先生が本書を書くまでの「プロセス」が本書の中の「本編」なのかなと。そう受け取りました。
千葉先生は本書の中で
「勉強とは、これまでの自分を失って、変身することである。だが人はおそらく、変身を恐れるから勉強を恐れている」
とおっしゃっており、僕は本書を読んだ後で千葉先生にツイッターで
「昨日、『勉強の哲学』を読了しました。その上で一つお伺いしたいことがあるのですが、以前千葉先生がご出演されていた『哲子の部屋』でテーマに上げていた『「変態」の哲学』と内容が「地続き」のような気がしてなりません。」
と問いかけてみると、
「ありがとうございます! そうですね、『哲子』での変態論の続きと思ってもらってもかまいません。」
と千葉先生からリプライが返ってきたので、解釈としては間違っていなかったことを確信しました。
本書は著作を読み、著者とオンライン上での対話をリアルタイムで重ねていく、まさに21世紀的な読書体験ができた一冊であり、本書について僕からのつたない質問にも丁寧にツイッター上で答えてくれた千葉雅也先生にはこの場をお借りして感謝御礼申し上げます。ありがとうございました。
※追記
本書はその後、補章が加わった完全版『勉強の哲学 来たるべきバカのために 増補版 (文春文庫) 』(文藝春秋; 増補版)として202年3月10日に文庫化され、楽屋裏を開かした『メイキング・オブ・勉強の哲学』(同)も2018年1月26日に上梓されました。千葉先生の今後のますますのご活躍を心から祈念申し上げます。
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有坂汀です。偶然立ち寄ったので始めてみることにしました。ここでは私が現在メインで運営しているブログ『誇りを失った豚は、喰われるしかない。』であげた書評をさらにアレンジしてアップしております。
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- 出版社:文藝春秋
- ページ数:237
- ISBN:9784163905365
- 発売日:2017年04月11日
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