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あかつき
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今日マチ子の描く、3.11後の世界
愛らしい絵の中に、人の心の奥や肉の内側をざらっと撫でるような描写が隠れ、不思議な安堵感と、終わりのある希望と、美しい残酷性がマチ子らしい作品でした。

海辺にポツンと佇む一軒家。
周りの土地は更地になっているが、電信柱などから、かつては家が沢山あったのだろうと思わせる。
海岸線の果てには、四角い建屋が見えるが、何の説明もない。
家には「あの日」から一人になった少女が住んでいる。
訪ねてくるのは、週に一度の白い服着た「調査団」の人々と、配達屋の少年のみ。
少女含め、人々は言葉を喋らない。
ものを喋り、語らい、命を謳歌しているのは、少女の周りの「モノ」達だ。
ヒトに縋り付かれることを拒んだ浮き輪。
消えて行く運命に疑問を感じた石鹸。
亀の子に母性を感じたゴム手袋。
郵便物を待ち焦がれるポスト。
持ち主を失った歯ブラシ。
モノたちの会話から、少女が「あの日」に失ったものーー両親、学校、夢、言葉ーーがそれとはなしに察せられる。
ここは、彼岸か?此岸か?
これは、現実か?幻想か?
モノ達に囲まれ、静かながら平和だった世界に、ある日異変が訪れる。
遥か彼方で、煙を吐く建屋。
頻回に訪れるようになった調査団。
海岸で拾われたテレビは「真実を知りたくないか?」とモノ達に語りかけるが……。

そこからは、もう今日マチ子の世界。

メッセージがあるのかないのか。
これは、はるか未来の話なのか。それとも一種の寓話なのか。
もう誰にもわからない。

しかし、真実を知っても。
少女は、そこに留まることを、選んだのだ。
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あかつき
あかつき さん本が好き!1級(書評数:760 件)

色々世界がひっくり返って読書との距離を測り中.往きて還るかは神の味噌汁.「セミンゴの会」会員No1214.別名焼き粉とも.読書は背徳の蜜の味.毒を喰らわば根元まで.

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