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まみむめも
レビュアー:
夜の空路での運輸が要だった命がけの郵便配達
星の王子様で有名なサン=テグジュペリ著書の“夜間飛行”。堀口大學さん訳が主流だったようですが、今回は二木麻里さん新訳で2010年初版。とても読みやすく、新事業にかける男たちのドラマに私の中でここ最近かなりのヒット作です。

収録は他に、アンドレ・ジッドの“序文”と、訳者の解説があり、それがまた素晴らしく、何度も読み返したくさせるのです。


物語は小型飛行機の墜落事故を題材として、南米と欧州を結ぶエアメールを運ぶ、郵便空輸事業にまつわる一夜のある状況の話。

語られているのはほんの数時間の出来事。単なる時系列ではなく、場面場面により、多少時間は前後する。機内であったり指令部てあったり。晴天なシーンありの一寸先は闇という暴風雨だったり。
文章が本当に繊細で、展開が劇的で引き込まれる。

冷血に見える、凄腕統率者のリヴィエール。彼の非道に見える処罰もまた、新事業に必要な厳しさである。しかしかれもまた人間。内心ではかなり揺れ動いている表現が絶妙。

航空業は夜間の飛行を行えるかどうかが死活問題。昼間は速度で勝っても、鉄道便や船便を相手には、夜がくるとその分帳消しになってしまうから。
真っ暗闇の飛行。そこに悪天候が加わったら果たしてどのような状況になることか。現代は失敗や多くの犠牲によって成り立つものが多い。

リヴィエールが数々の名言を発しているが、今私の心を捉えるのはこのセリフ。

「わたしは公平なのか、不公平なのか?どうでもいい。罰すれば事故は減る。
事故の原因となるのは人間ではない。
ひとたび罰しようと思ったらすべての人間を罰しなければなくなるような、ひとの手には負えない漠然とした力なのだ。
わたしがごく妥当に、隠当に処していたら、
夜間飛行は毎回死の危険を招くものになっていたはずだ。」

心打たれた言葉はもっと沢山あるのですが、今関わるプロジェクトのキーワードが含まれ、やけにシンクロしてしまったのです。


名著です。
巡りあえて良かったです。

(ブクレコ20160308)
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まみむめも
まみむめも さん本が好き!1級(書評数:221 件)

2017/04ブクレコからの移転組。拙い文ですが気楽にお付き合い頂けると幸いです。アラフォー中間管理職で2018年春に大学を卒業しました^^皆様どうぞよろしくお願いいたします♡
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この書評へのコメント

  1. mono sashi2017-04-24 00:39

    まみむめもさん、はじめまして!
    高校時代に「夜間飛行」を読みました。同じく「人間の土地」も素晴らしかったです!

  2. まみむめも2017-04-24 09:39

    mono sashiさん、はじめまして^^
    人間の土地もこのあとにすぐ購入したのですが今はツンドク状態です…(汗
    いつか読みます!

  3. mono sashi2017-04-24 12:32

    お時間がある時に、ぜひ!
    ところで、新潮文庫版の「夜間飛行」は、宮崎駿さんが表紙を描いてますよね~。
    ご本人がサンテジュクペリにいちばん影響を受けた、と仰るぐらいなので、
    映画内で夜間の飛行シーンが出てくると、ああ、彼はこんな風に作品世界をイメージしているんだぁ、とかさねて観たりしてます。

  4. まみむめも2017-04-24 22:52

    それは知りませんでした!
    でもお聞きして納得です^^

  5. No Image

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