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紅い芥子粒
レビュアー:
故国を離れ世界に散ったすべての生き物たちに、悪者あつかいされてもがんばれと、エールを送りたい。
わたしの庭は、雑草天国。春になるとさまざまな草が生え、いろいろな花が咲く。
そのほとんどが外来種だ。
アメリカフウロとか、オランダミミナグサとか、故国の名前を戴く草もある。
多くが、明治時代に日本に連れてこられた植物たちの子孫だ。
食用のためだったり、観賞用だったり、外国船の積荷に種がくっついてきたり……
自分の意志で日本にきたわけではないのに、慣れない環境に適応して、野に出て繁殖した草たち。えらいなあと思う。

外来種は、その土地の生態系を壊すから、排除すべきという説をよく耳にする。
外来種がはびこるせいで、在来種が追われて絶滅の危機にある、とか。
外来種の狂暴な魚に食べられてしまって、在来種のやさしい魚が池からいなくなってしまった、とか。
わたしの庭の草たちを見ていると、もしかしたらそうかもしれない、という気がしないでもなかった。

しかし、しかし、そんなことは、まったくないそうだ。
在来種ばかりがはびこっているというのは、差別的な印象にすぎず、科学的な根拠はないという。
わたしの胸の中でもやもやしていたことを、生態学の先生が、きっぱりと書いてくれて、すっきりさせてくれた本だった。


そもそも、在来種、外来種というが、どのくらい昔からそこに定着して繁殖していれば、在来種と認定されるのか、議論の起点となるような定義さえないそうだ。
生き物の生育環境を、大きく改変しているのは、いつだってどこだって人間で、在来種の生き物が住めなくなった隙間に、外来種の生き物が入りこんで繁殖しているにすぎないというのが、真相のようだ。

イギリスの先生の本なので、イギリスでやっかいものあつかいされている外来種のことが書かれている。そのひとつが、ナミテントウムシ。
日本でおなじみのあのテントウムシだ。もともとは日本や中国にいたのだが、害虫駆除の生物農薬として、スコットランドの農場に導入された。食欲と繁殖力が旺盛すぎて、スコットランド在来種のテントウムシをおびやかしているといわれる。
利用するだけしておいて、増えすぎたから皆殺しにしろなんて、勝手すぎるでしょ。

故国を離れ、世界に散ったすべての生き物たちに、悪者あつかいされてもに負けずにがんばれと、エールを送りたくなった。

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紅い芥子粒
紅い芥子粒 さん本が好き!1級(書評数:559 件)

読書は、登山のようなものだと思っています。読み終わるまでが上り、考えて感想や書評を書き終えるまでが下り。頂上からどんな景色が見られるか、ワクワクしながら読書という登山を楽しんでいます。

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