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Wings to fly
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#書肆侃侃房15周年 明治・大正の面影を残す建物は、韓国併合の歴史を語る。
レンガ造りの瀟洒な洋館、“ビルヂング”とでも呼びたいような古風なビル、明治・大正の面影を宿す建物は、日本では関東大震災や空襲でほとんど消えてしまいました。地震のない韓国には、日本人が作った建物がたくさん残っています。それを訪ねて歩く旅の本は、日本が韓国を35年間(1910~1945)併合していた証拠を目の前に並べてくれるわけで、見たいけど見たくないような複雑な気持ちになります。でも、韓国の人々がその建物をどんな目で眺めているのか知っておきたいと、この本を開いたのです。

ソウルから南東方向に下ってゆく旅です。首都ソウルは、日本の統治時代に京城(けいじょう)と呼ばれていました。京城駅は今、博物館を兼ねた文化施設「文化駅ソウル284」に生まれ変わり、首都のランドマークのひとつ。東京駅丸の内口にそっくりです!新世界百貨店本館は日本橋の三越本店みたい!それもそのはず、昔は三越の京城支店でライオン像もあったとか。日本は韓国に日本の町を作ろうとしていたのですね。首都に統治時代の建物がたくさん残っていることに驚きます。不幸な歴史の産物として壊すのではなく、内部をリニューアルし外観は残して再利用しているのが、ちょっと嬉しい。クラシックなタイル壁の迷洞芸術劇場は、もと明治座でした。

港町の仁川市には、日本軍が掘ったトンネルがあります。トンネルの上には築80年の日本家屋が残っていて、カフェ”History”として営業中。釜山の温泉地に建つ日本人大地主の別荘は、韓国宮廷料理専門店になりました。立派な門構え、森のような庭、ちょっと贅沢なひと時が過ごせそうですよ。岡山県の漁師が入植・開拓した漁村の鄙びた家や1940年代の同潤会アパートなど、小さな建物まで徹底的に網羅しています。

発音が日本語そのものの韓国語(ワサビやアナゴはともかく、根性も?!)、韓国の中の日本の食べ物(トンカツはたくあん付き、うどんは関西風)なども紹介されています。韓国に遺されたのは建物だけではなく、戦前日本の置き土産が様々にあるのだと知りました。日本人はそういうことを忘れちゃいけないよね、とも感じた本です。
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Wings to fly
Wings to fly さん本が好き!免許皆伝(書評数:862 件)

「本が好き!」に参加してから、色々な本を紹介していただき読書の幅が広がりました。

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