書評でつながる読書コミュニティ
  1. ページ目
詳細検索
タイトル
著者
出版社
ISBN
  • ログイン
無料会員登録

献本書評
Wings to fly
レビュアー:
自ら働いて自立できる仕組みを目指したバナナペーパー・プロジェクト。読み終わった時、立ち上がって拍手を送りたくなった。
表紙を開いたところに、ベージュ色のすべすべした薄い紙が挟み込まれている。優しい風合いは和紙にそっくりだが、ルワンダ産「バナナペーパー」なのだ。日本古来の紙漉き技術とルワンダの特産品であるバナナの、奇跡のコラボレーションなのだ。なぜ奇跡なのかというと、「無理だからあきらめなさい」と和紙の人間国宝に言われてもあきらめなかった女性の努力と情熱がなければ、この世に存在しなかったからである。

ルワンダでは今、カードやランプシェードの素材などに使われ(写真をご参照下さい)、職業訓練学校には「バナナペーパーコース」が設けられ、新たな産業として注目されている。製法を考案し技術を伝えたのが、著者の津田さんだ。

4か国の大使館に勤めた津田さんは、エチオピア大使館勤務時代にコーヒー豆の価格暴落による経済危機を目の当たりにした。「NPO法人ハーベストタイム(通称HAT)」を設立してアフリカのコーヒー農民支援を始め、支援はやがてルワンダを中心に回り始める。最も貧困が深刻なのは、“お金に換えられる作物を栽培しているわけではない人々”だと、津田さんは気づく。

貧しい人たちが働いて自立できる仕組みを立ち上げようと思いついた時から、プロジェクトが軌道に乗るまでの様々な苦労と喜びが綴られている。今まで誰も作ったことのないものを作る困難、異なる習慣の人たちとのコミュニケーションの齟齬、ご自身の乳がん発症。元ニューヨークヤンキースの松井秀喜さんは「努力できることが才能である」と言ったが、津田さんも大リーガー級の才能をお持ちだ。

現地の人々の身になって考え、経済的自立を目指す。人々の生の声を大切に活動する。廃棄されるバナナの茎を利用し、機械も化学薬品も使わず、環境を汚染しない物作りをする。上から目線では接しないが、きちんと言うべきことは言う。津田さんの姿勢には「愛」を感じる。

援助活動が成功するかどうかは、また国と国とのお付き合いだって、結局のところ人と人との関係に懸かっているのだと思わされた。津田さんの真摯な挑戦と大いなる成果に、心からの拍手を送りたい。
    • ルワンダの文化や生活をデザインした、バナナペーパーカード。
    • バナナペーパーを利用したランプシェード、第1号。
    • バナナペーパーとバナナの皮のコラボ。ルワンダの若きアーティストのセンスを感じます。
お気に入り度:本の評価ポイント本の評価ポイント本の評価ポイント本の評価ポイント
掲載日:
外部ブログURLが設定されていません
投票する
投票するには、ログインしてください。
Wings to fly
Wings to fly さん本が好き!免許皆伝(書評数:862 件)

「本が好き!」に参加してから、色々な本を紹介していただき読書の幅が広がりました。

読んで楽しい:1票
参考になる:30票
共感した:3票
あなたの感想は?
投票するには、ログインしてください。

この書評へのコメント

  1. No Image

    コメントするには、ログインしてください。

書評一覧を取得中。。。
  • あなた
  • この書籍の平均
  • この書評

※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。

『ルワンダに灯った希望の光』のカテゴリ

フォローする

話題の書評
最新の献本
ページトップへ