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有坂汀さん
有坂汀
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本書は『カルト村で生まれました。』(文藝春秋)にて自身の衝撃的な半生をほのぼのとしたタッチで綴った高田かやさんによるエッセイコミックの続編です。ここでは中等部、高等部編に続き村を出るまでが描かれます。
本書は『カルト村で生まれました。』(文藝春秋)にて、自身の生まれ育った「カルト村」(評者注:99.9%ここで指す「村」とは「ヤマギシ会」のことであり、それを前提に筆を進めていくが、あくまでも本書の中では具体名は示されていない)、での衝撃的な半生を綴り、それが朝日新聞、毎日新聞、新潮45、TVブロス、アンアンなど、数多くの書評欄で取り上げられて大反響を巻き起こし、(僕も含めた)読者から
「その後の話が読みたい!」
の声が殺到し、それを受けて描かれた前回以上のインパクトを持って上梓された「青春編」です。

「所有のない社会」
あるいは「すべての人が幸福である社会」
もしくは
「全人幸福社会の実顕」
を目指して創設されたある種の「ユートピア社会」がなぜ、筆者が経験した朝6時から畑仕事や鶏の解体などの朝6時から畑仕事や鶏の解体などの厳しい労働の日々や、当時は中学を卒業したら高校にはいけないなどの「ディストピア社会」が繰り広げられるのか? それを僕はページをめくりながら考え込んでしまいました。

それでも、思春期を迎えた女の子(彼女たちは僕と同年代なので余計に心に突き刺さる…)たちは表向き
「音楽、男女交際、一般の本を読むことは禁止」
されていても何らかの「抜け道」を通じていて当時はやっていた歌(一つ一つがムチャクチャビビッドだった)を口ずさみ、筆者を含めた「ロンガイジャー」の女子たちが男子の部屋も掃除する話にただただ
「スゲーなー…。」
と絶句したことを覚えております。

さらに中等部、高等部に進んだ筆者たちを待っていたのは数々の「個別ミーティング」や(一番有名なのは「一生に一度しか受けられない」と言われる「特講」こと「特別講習研鑽会」)書いた内容を「世話係」と呼ばれる大人たちに検閲・チェックされる「日記」や「手紙」。このときの話を聞いた時の筆者の夫である「ふさおさん」が
「それ洗脳の一環じゃない!?」
と突っ込みをしていたのが印象的でした(「ふさおさん」の役割は「一般社会」から「村」の出来事や習慣に対するツッコミ役というポジションが作中で与えられている)。

そして、19歳になった筆者は
「ここは私のいる場所じゃない 少なくとも私にとって理想社会じゃない」
と初めて気付き、その頃村の方針で一般社会に出ることになった両親とともに村を出て暮らし、東京に住まいを変え、さらにいくつかの職業を経て(これまたビックリした)なんと、「出会い系サイト」を通じて後の伴侶である「ふさおさん」と出会い、ゴールインする事になります。

自らが生まれ育った「カルト村」と訣別を果たすも、当時のことを虚心坦懐にユーモアを交えて見つめ、「コミックエッセイ」という形で世に問うた前作同様、本書が広く世の人に受けいれられたことを自分のことのように嬉しく思うとともに、筆者である高田かやさんの幸せを陰ながらお祈りしております。
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有坂汀
有坂汀 さん本が好き!1級(書評数:2673 件)

有坂汀です。偶然立ち寄ったので始めてみることにしました。ここでは私が現在メインで運営しているブログ『誇りを失った豚は、喰われるしかない。』であげた書評をさらにアレンジしてアップしております。

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