efさん
レビュアー:
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異様な世界が綴られる恐怖のディストピア小説
彼女(一応、『オブフレッド』という名前が与えられていますが、本名ではありません。これはブレッドの所有物という程度の名前なのです)は、『侍女』と呼ばれる者のようです。
いつも全身赤い服を着て、白い翼のような布で頭部、顔を隠していなければなりません。
この国はギレアデと呼ばれる架空の国家で、北米大陸にあるのでしょう。
周囲では戦争が続けられており、ギレアデは強権的な全体主義体制を取っているようです。
『侍女』というのは、再婚した女性または婚外子を生んだ女性のようで、それらの行為はギレアデでは背徳とされており、彼女たちは『侍女』という身分に堕とされるのです。
原因は分かりませんが、ギレアデだけではなく、どうやら世界的に出生者数が減っているようなのです。
ギレアデは、これを解消するために、『侍女』(つまり、出産可能な女性)を政府高官の男性に与えているようなのです(彼に妻がいても)。
『侍女』は、男と交合して子供を産むことが使命とされています。
この世界には他の身分に属する者たちもいます。
『天使』と呼ばれる男たちは兵士でしょうか?
オブブレッドは『司令官』と呼ばれる妻帯男性に与えられています(つまり、彼がフレッドということなのでしょうか)。
そして、政府高官男性たちの『妻』や『娘』たち。
『侍女』たちはほとんど女性のみが生活する『赤いセンター』で厳重な監視の下、暮らしています。
その身の回りの世話をする『女中』たち。
『侍女』たちを監視する『保護者』。
雑用をさせられる『便利妻』。
『侍女』たちを指導するのは『小母』と呼ばれる高齢の女性たちです。
彼女たちは、もはや出産することはできないのですが、『小母』となり、若い『侍女』たちを指導する役割を果たすことにより、コロニーに送られることを免れているようです。
『侍女』たちには多くの制約が課されており、物資も十分には与えられません。
そんな中で、ひたすら子供を産むことだけを期待されて統制されているのです。
ある時、オブフレッドは、司令官に求められて私的な関係を持ってしまいます。
決められた日に司令官とまぐわうことは普通にあるのですが、それを超えた関係を持ってしまいました。
これは重罪です。
センターの壁には鈎が取り付けられており、違反者たちはそこに吊るされることになります。
最初のうちは、一体これはどういう物語なのだろうと把握し辛かったのですが、ディストピア小説なのだと気が付けば一気に物語の中に引きずり込まれてしまいます。
社会は『目』と呼ばれる者たちによって厳しく監視されており、それはジョージ・オーウェルの 『一九八四』を否が応でも思い出させます。
あるいは、この異常な状況を冷静に、淡々と受け入れていることはカズオ・イシグロの 『わたしを離さないで』も連想させました。
両作とも、非常に過酷な運命に置かれている者たちが、何故か淡々とその運命に従っているようなところ、ドライな語り口などが連想させるのかもしれません。
とにかく非常にショッキングな作品で、ガツンと一発殴りつけられるような読後感を味わいました。
現在はハヤカワepi文庫から出ているようですが、私は新潮社のハードカバーで読みました。
この本の表紙絵(赤い服を着た『侍女』が描かれています)がまた怖いのですよ。
読了時間メーター
□□□ 普通(1~2日あれば読める)
誓願
いつも全身赤い服を着て、白い翼のような布で頭部、顔を隠していなければなりません。
この国はギレアデと呼ばれる架空の国家で、北米大陸にあるのでしょう。
周囲では戦争が続けられており、ギレアデは強権的な全体主義体制を取っているようです。
『侍女』というのは、再婚した女性または婚外子を生んだ女性のようで、それらの行為はギレアデでは背徳とされており、彼女たちは『侍女』という身分に堕とされるのです。
原因は分かりませんが、ギレアデだけではなく、どうやら世界的に出生者数が減っているようなのです。
ギレアデは、これを解消するために、『侍女』(つまり、出産可能な女性)を政府高官の男性に与えているようなのです(彼に妻がいても)。
『侍女』は、男と交合して子供を産むことが使命とされています。
この世界には他の身分に属する者たちもいます。
『天使』と呼ばれる男たちは兵士でしょうか?
オブブレッドは『司令官』と呼ばれる妻帯男性に与えられています(つまり、彼がフレッドということなのでしょうか)。
そして、政府高官男性たちの『妻』や『娘』たち。
『侍女』たちはほとんど女性のみが生活する『赤いセンター』で厳重な監視の下、暮らしています。
その身の回りの世話をする『女中』たち。
『侍女』たちを監視する『保護者』。
雑用をさせられる『便利妻』。
『侍女』たちを指導するのは『小母』と呼ばれる高齢の女性たちです。
彼女たちは、もはや出産することはできないのですが、『小母』となり、若い『侍女』たちを指導する役割を果たすことにより、コロニーに送られることを免れているようです。
『侍女』たちには多くの制約が課されており、物資も十分には与えられません。
そんな中で、ひたすら子供を産むことだけを期待されて統制されているのです。
ある時、オブフレッドは、司令官に求められて私的な関係を持ってしまいます。
決められた日に司令官とまぐわうことは普通にあるのですが、それを超えた関係を持ってしまいました。
これは重罪です。
センターの壁には鈎が取り付けられており、違反者たちはそこに吊るされることになります。
最初のうちは、一体これはどういう物語なのだろうと把握し辛かったのですが、ディストピア小説なのだと気が付けば一気に物語の中に引きずり込まれてしまいます。
社会は『目』と呼ばれる者たちによって厳しく監視されており、それはジョージ・オーウェルの 『一九八四』を否が応でも思い出させます。
あるいは、この異常な状況を冷静に、淡々と受け入れていることはカズオ・イシグロの 『わたしを離さないで』も連想させました。
両作とも、非常に過酷な運命に置かれている者たちが、何故か淡々とその運命に従っているようなところ、ドライな語り口などが連想させるのかもしれません。
とにかく非常にショッキングな作品で、ガツンと一発殴りつけられるような読後感を味わいました。
現在はハヤカワepi文庫から出ているようですが、私は新潮社のハードカバーで読みました。
この本の表紙絵(赤い服を着た『侍女』が描かれています)がまた怖いのですよ。
読了時間メーター
□□□ 普通(1~2日あれば読める)
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幻想文学、SF、ミステリ、アート系などの怪しいモノ大好きです。ご紹介レビューが基本ですが、私のレビューで読んでみようかなと思って頂けたらうれしいです。世界中にはまだ読んでいない沢山の良い本がある!
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- 出版社:新潮社
- ページ数:338
- ISBN:9784105225018
- 発売日:1990年03月01日
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