書評でつながる読書コミュニティ
  1. ページ目
詳細検索
タイトル
著者
出版社
ISBN
  • ログイン
無料会員登録

はるほん
レビュアー:
シンデレラの詰め合わせ!
昔話は面白い。
以前に読んだ日本の昔ばなしにも書かれていたが
昔話は伝承や口伝でさまざまに形を変え、多くのバージョンを持つ。
その代表格の1つにシンデレラがある。

原典として有名なのがグリムのサンドリヨンだが、
他にもペローの灰かぶり姫、バシレの灰かぶり猫がある。
自分もバシレは名前だけで話はよく知らなかったのだが、
この本はシンデレラから派生、もしくは元ネタと思しき要素を含む
20編の民話・童話を紹介しているところが素晴らしい。

しかし読んで吃驚。
バシレ版シンデレラは、継母に苛められているという前フリは同じなのだが、
そこで女家庭教師にそそのかされ、継母を殺めてしまうのである。
が、その後女家庭教師が父の再婚相手となり…、からは例のパターンなのだが
本当に童話なんかコレ。火サスじゃなくて?

またこの頃シンデレラを助けるのは「魔法使い」ではなく、
妖精や鳩、地域によっては魚や牡牛であったりする。が、
 ・継子苛めという前フリ
 ・難題その1(舞踏会へ行くまでに掃除や豆拾いをする)
 ・主人公を助けるキャラの登場(魔法使いなど)
 ・難題その2(片方の靴から主人公を捜す)
 ・結婚(さらに悪役が成敗される)
というシンデレラポイントを全て、もしくはいくつか踏襲していることから
おそらく派生ver.であろうという仮定で話を進めている。

余りに沢山例示があって混乱するのだが、
シンデレラの大元ネタは、中国と思われるらしい。
(※南方熊楠の指摘で、今はほぼ定説となっている)
葉限という話で、魔法使い役が魚であること以外はほぼ同じだ。
また多少の類似話が日本にも見られる。

しかし原産国(?)である割に、この手の話は中国にそう多くないのだとか。
むしろバージョンアップ版としては西洋の方が数が多い。
日本にもあるとはいうものの、確かにメジャーな話ではない。
灰坊(※主人公は男性)というあきらかにシンデレラパクリ作品があるが
一読しても日本ぽくないので、コレは逆輸入のような気がする。

著者はこれを「儒教の国では継子苛めや最後の成敗シーンが
あまり受け容れられなかったのでは」と指摘する。
また生活様式などからピンと来ない話筋だったりする。
うん、まず日本で舞踏会ないしね。
足がはいらない草履や下駄も難しいよね。(笑)

比較的近い話として鉢かつぎ姫がある。
多少ストーリーは違うが、ガラスの靴の代わりが鉢である。
面白い。
日本に合わせるとここまで変わるのかと笑える半面、
そうして昔話というのは形を変えていくものなのだというのが。

また西洋では継母だけでなく、実父に結婚を迫られるver.などもあり
これは日本では見られない派生なのだとか。
東洋では成敗せず、義でオチを付けることも多い。
儒教の影響というのはあながち小さくないのやもしれない。
この東西の違いの考察が一番面白かった。

また派生ver.の中には実子と継子の比較話なども多く、
日本でいうと花咲爺や舌切り雀の話と非常によく似ている。
ひょっとしたらコレも遠くシンデレラと地続きなのかもしれない。
この本自体ではなんらかの結末で結んでいる訳ではなく、
分類表などがないために理解しづらい部分も多いのだが
とりあえず多くの例示話が入っているところがよい。

しかし今読んでもシンデレラって、家庭崩壊に気付かない父親といい、
国を挙げて女の尻(足)をおっかけてる王子といい、
ロクな男性キャラ居ないよな。(笑)
ひょっとしてコレも、男性主権の日本に根付かなかった理由か?
お気に入り度:本の評価ポイント本の評価ポイント本の評価ポイント
掲載日:
外部ブログURLが設定されていません
投票する
投票するには、ログインしてください。
はるほん
はるほん さん本が好き!1級(書評数:684 件)

歴史・時代物・文学に傾きがちな読書層。
読んだ本を掘り下げている内に妙な場所に着地する評が多いですが
おおむね本人は真面目に書いてマス。

年中歴史・文豪・宗教ブーム。滋賀偏愛。
現在クマー、谷崎、怨霊、老人もブーム中
徳川家茂・平安時代・暗号・辞書編纂物語・電車旅行記等の本も探し中。

秋口に無職になる予定で、就活中。
なかなかこちらに来る時間が取れないっす…。

2018.8.21

読んで楽しい:18票
参考になる:14票
あなたの感想は?
投票するには、ログインしてください。

この書評へのコメント

  1. かもめ通信2017-02-17 18:57

    おおそういえば!図書館を利用すれば、この本も読めるのでは?!

  2. はるほん2017-02-17 19:56

    >かもめ通信さん
    はっはー、すでに検索済みです!(ドヤァ)

    が、ウチでは取り扱いがなかったのですよ~。
    リクエストにまで手が回るようになったら(もういっぱいいっぱい)
    ゆっくりお願いするコトにします~。

  3. No Image

    コメントするには、ログインしてください。

書評一覧を取得中。。。
  • あなた
  • この書籍の平均
  • この書評

※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。

フォローする

話題の書評
最新の献本
ページトップへ