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かもめ通信
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いやはや私、はっきりいってこの本には惚れました!
主人公のセオは、13歳の女の子。
画家のおじいちゃんと一日中机に向かって論文を書いている浮き世離れしたお母さんとともに、グリニッジビレッジのスピニー通りで暮らしていたのだが、ある日、おじいちゃんが事故に遭い「卵の下を探せ」という謎の言葉を残して亡くなってしまう。

セオには生前おじいちゃんとともに毎朝行っていた卵にまつわる行事があり、「卵」が何を意味するのか察しがついたものの、その「下」にあるものとはいったいなんのことだかさっぱりわからなかった。

突然一家の働き手を失い、経済的に行き詰まったセオは、祖父の遺した言葉にはきっと、この窮地を救ってくれるなにかがあるはずだと考えて謎の解明に乗り出す。

そして、卵を置く場所の上にかかっていた絵の下に、ラファエロの作品と思われる絵が隠されていることに気づくのだった。

幼い頃から、画家でありメトロポリタン美術館の警備員でもあった祖父から絵画のことを教わってきたセオの目は確かだったが、もしこれが本物だとしたらいったいなぜ、こんなところに隠されていたのか?
謎は謎を呼び、物語は祖父が関わった第二次世界大戦のナチスの暗部にまで及んで、思いもかけない方向へと進んでいく。

倹約家の祖父に育てられ、テレビもラジオもない家で、衣食住すべてを自分の手でまかなう少女セオの浮き世離れ感は、スマホやインターネットを駆使し、常に流行の最先端をいく有名芸能人夫婦の娘ボーディが相棒となることで“今どき”に結びつけられ、どちらも互いを否定せず、いいところを認め合う気持ちの良い友情がほほえましく心地よい。

さらには、西洋絵画の「象徴」に関する知識や、真贋の見分け方、描かれた絵と密接に関わる画家やモデルをめぐるあれこれといった美術にまつわる知識を得られ、戦争の歴史や美術館の暗部など、美術と歴史の謎にまで深くきりこんでいく展開にも目が離せない。

一つの物語が様々なものを包んでいて、しかもそれが決して散漫な印象をもたせることなく、ひとつひとつ丁寧に描かれていて、読み手がこの本を手がかりにあちこち興味を派生させていく可能性をたくさん含んでいる魅力に富んだ物語。

児童書というジャンルに分類されていたとしても、子どもにだけ読ませておくなんて勿体ない読み応えだ。
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かもめ通信
かもめ通信 さん本が好き!免許皆伝(書評数:2238 件)

本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。

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この書評へのコメント

  1. かもめ通信2017-07-26 05:45

    この本、とっても良かったので、#棚マルフェアに推薦しようかと最後まで迷ったのですが、一人3冊までということで、泣く泣く他の本にしぼりました。

    というわけ(?)で、皆様、9月にブックポート大崎店で開催される、本が好き!#棚マルフェアの推薦本は、いよいよ今月末が〆切ですよ!

    あなたの選書が!あなたのPOPが店頭に並ぶかも!

    「#棚マル「この本に惚れました!」フェアを開催します!」
    http://www.honzuki.jp/bookclub/theme/no290/index.html?latest=20

  2. No Image

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