efさん
レビュアー:
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コンセプトは抜群なんだけれど……/辛口レビューです
 随分久しぶりにこの作品を再読してみました。
私が最初にこの本を読んだのはもう遥か昔だったと思うのですが、その時はコンセプトの衝撃が凄まじかったこともあり、粗筋は今回再読する時点でもよく記憶に残っていました。
本作の舞台は、書物が禁止されているという未来社会です。
主人公は、モンターグという焚書官です。
焚書官というのは、『逆』消防士のようなもので、禁じられている書物を持っている者が発見されるとその場所に急行し、焚書車から石油をまき散らして書物に火をつけて燃やしてしまうことを仕事としている者たちなのです。
モンターグは、最初はこのような本を燃やす行為に何の疑問も持たず、喜びさえ感じており、笑いながらこの仕事に当たっていました。
ところがある日、隣に住んでいるというクラリスという少女から話しかけられ、これまでの自分の仕事に疑問を抱くようになっていくのです。
モンターグの疑問はどんどん膨らんでいき、遂には自ら本を読んでみるようになってしまうのです。
そして、書物を禁じているこの社会に決定的な不信感を持つようになり、くだらない内容のテレビやラジオに心を奪われている呆けたような人々の姿に嫌悪感を抱くようになるのです。
結末はあまりにも有名であり、ここには人間の書物に対する愛情や信頼が描き出されていて、名作と評価される作品であることも頷けます。
さて、今回本当に久しぶりに再読してみて、コンセプトの素晴らしさについての感想は変わることはありませんでしたが、初読時には全く気にならなかったのに、今回はかなり気になってしまった点がいくつかありましたのでその点について触れてみたいと思います。
まず第一点目は、主人公モンターグの行動の稚拙さ、無思慮振りについてです。
モンターグは、自ら焚書官をしているくらいですから、この世界で書物が禁じられていること、それを所持したり読んだりすると厳罰に処せられることは痛い程分かっていたはずです。
それなのに、書物に目覚めた後の行動があまりにも短絡的で無思慮過ぎると思えてなりませんでした。
書物を所持していること、読んだことなどが明らかになればすぐに密告されることは分かり切っているというのに、怒りにまかせて妻の知人の前に本を持ち出し、その詩を朗読してしまうなど、いくらなんでもそんなことするか?という点が非常に気になりました。
モンターグはこの世界の恐ろしさを知り抜いているはずではないですか。
それなのにその行動は稚拙であり、無思慮過ぎ、幼稚なものに思えてなりませんでした。
第二に、モンターグを目覚めさせたクラリスというキャラクターの扱い方についてです。
彼女は本作で重要な役割を果たしているのに、ある時点でぱったりと消えてしまい、おそらく死んだのであろうということで片づけられてしまいます。
これはあまりにももったいない構成に思えてしまったのです。
第三に、物語の展開、語り口が、今から読むとどうしても陳腐と思えてしまう点があちこちにあるように思いました。
まあ、この作品が書かれたのは1953年ですから、それも致し方ないところもあるのですけれど。
第一に書いたモンターグの行動の問題も、そういう点が影響しているようにも思えます。
主なところではこんな点が気になったのですが、コンセプトが大変すばらしい作品だけに、読み返してみるとこれらの点が本当に惜しいと思えてなりませんでした。
ブラッドベリが存命であれば、是非、書き直していただけたらと思ってしまうのですが、それももう叶わないことです。
今更本作に手を入れようと考える作家もなかなかいないでしょうから、あるとすれば再映画化などで脚色し直すこと位しか期待できないのかもしれませんが、初めてこの作品をこれから読むという読者にとって、私が気がかりに思った点がマイナスに働かなければ良いけれどと、老婆心を抱いてしまったのです。
読了時間メーター
■■■ 普通(1~2日あれば読める)
私が最初にこの本を読んだのはもう遥か昔だったと思うのですが、その時はコンセプトの衝撃が凄まじかったこともあり、粗筋は今回再読する時点でもよく記憶に残っていました。
本作の舞台は、書物が禁止されているという未来社会です。
主人公は、モンターグという焚書官です。
焚書官というのは、『逆』消防士のようなもので、禁じられている書物を持っている者が発見されるとその場所に急行し、焚書車から石油をまき散らして書物に火をつけて燃やしてしまうことを仕事としている者たちなのです。
モンターグは、最初はこのような本を燃やす行為に何の疑問も持たず、喜びさえ感じており、笑いながらこの仕事に当たっていました。
ところがある日、隣に住んでいるというクラリスという少女から話しかけられ、これまでの自分の仕事に疑問を抱くようになっていくのです。
モンターグの疑問はどんどん膨らんでいき、遂には自ら本を読んでみるようになってしまうのです。
そして、書物を禁じているこの社会に決定的な不信感を持つようになり、くだらない内容のテレビやラジオに心を奪われている呆けたような人々の姿に嫌悪感を抱くようになるのです。
結末はあまりにも有名であり、ここには人間の書物に対する愛情や信頼が描き出されていて、名作と評価される作品であることも頷けます。
さて、今回本当に久しぶりに再読してみて、コンセプトの素晴らしさについての感想は変わることはありませんでしたが、初読時には全く気にならなかったのに、今回はかなり気になってしまった点がいくつかありましたのでその点について触れてみたいと思います。
まず第一点目は、主人公モンターグの行動の稚拙さ、無思慮振りについてです。
モンターグは、自ら焚書官をしているくらいですから、この世界で書物が禁じられていること、それを所持したり読んだりすると厳罰に処せられることは痛い程分かっていたはずです。
それなのに、書物に目覚めた後の行動があまりにも短絡的で無思慮過ぎると思えてなりませんでした。
書物を所持していること、読んだことなどが明らかになればすぐに密告されることは分かり切っているというのに、怒りにまかせて妻の知人の前に本を持ち出し、その詩を朗読してしまうなど、いくらなんでもそんなことするか?という点が非常に気になりました。
モンターグはこの世界の恐ろしさを知り抜いているはずではないですか。
それなのにその行動は稚拙であり、無思慮過ぎ、幼稚なものに思えてなりませんでした。
第二に、モンターグを目覚めさせたクラリスというキャラクターの扱い方についてです。
彼女は本作で重要な役割を果たしているのに、ある時点でぱったりと消えてしまい、おそらく死んだのであろうということで片づけられてしまいます。
これはあまりにももったいない構成に思えてしまったのです。
第三に、物語の展開、語り口が、今から読むとどうしても陳腐と思えてしまう点があちこちにあるように思いました。
まあ、この作品が書かれたのは1953年ですから、それも致し方ないところもあるのですけれど。
第一に書いたモンターグの行動の問題も、そういう点が影響しているようにも思えます。
主なところではこんな点が気になったのですが、コンセプトが大変すばらしい作品だけに、読み返してみるとこれらの点が本当に惜しいと思えてなりませんでした。
ブラッドベリが存命であれば、是非、書き直していただけたらと思ってしまうのですが、それももう叶わないことです。
今更本作に手を入れようと考える作家もなかなかいないでしょうから、あるとすれば再映画化などで脚色し直すこと位しか期待できないのかもしれませんが、初めてこの作品をこれから読むという読者にとって、私が気がかりに思った点がマイナスに働かなければ良いけれどと、老婆心を抱いてしまったのです。
読了時間メーター
■■■ 普通(1~2日あれば読める)
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幻想文学、SF、ミステリ、アート系などの怪しいモノ大好きです。ご紹介レビューが基本ですが、私のレビューで読んでみようかなと思って頂けたらうれしいです。世界中にはまだ読んでいない沢山の良い本がある!
この書評へのコメント
- かもめ通信2019-05-11 22:20
実は(これもまた)長年の積読本なんです。
しかも、かなり長い。もしかしたら本棚の奥で朽ちているかも!?
ちなみに今、丁度、この本↓を読んでいます。
今のところはなかなか面白く読んでいるのですが、果たして……!?クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 - かもめ通信2019-05-11 22:37
今、奥付を確認したら2014年12月・三刷でした!
読まなきゃ!読まなきゃ!と思っていたので、もっとずっと長く鎮座しているものとばかり思っていましたが、まだ結構新しかったw
しかも数ページ目に、本が好き!の栞が挟まっていました!(読みかけたのか!>自分)
ちなみに同じ地層からこの本↓も発見されました(><)クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 
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- 出版社:早川書房
 - ページ数:338
 - ISBN:B009DELIN2
 - 発売日:2008年10月31日
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