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かもめ通信
レビュアー:
アメリカを旅する予定はないけれど、“よろよろ歩き”シリーズのガイドブックなら思わず買い揃えてしまいそう?!
原題は「The Shambling Guide to New York City」

タイトルと装丁から、
以前すっかりはまって思わず全巻買いそろえてしまった
シャンナ・スウェンドソンの“(株)魔法製作所”シリーズを連想して、
発売前からチェックしていた本。

とはいえ、作者の意図は脇に置いても、
出版社としては2匹目のドジョウを狙っている様な気がしないでも……と
少々穿った気持ちもあれば、
ニューヨークで求職中という主人公が前職を失った理由が、
社内不倫だというウワサを耳にしたり、
献本の抽選に外れてしまったり……と、
次第に期待値が下がってきていたところで、
あまり多くを望まないつもりで手に取ってみた。


地方都市とはいえ名の知れた出版社で
シリーズもののガイドブック本の編集者として
バリバリと仕事をこなしてきた主人公のゾーイは、
社内恋愛関係のごたごたで身も心もぼろぼろになって
故郷ニューヨークに帰ってきた。

まずは仕事を探さなければと
あちこちの出版社をあたってみるが
ある会社では“経歴が必要以上”だといわれたかとおもえば
別の会社では“経験不足”だといわれたり、
さらに別の会社では“恐れ知らずの印象が社風に合わない”と言われて不採用。

ため息をつきながら見上げた冴えない書店の掲示板に貼られていたのは
旅行ガイドブックを製作する新しい会社の求人広告だった。
「大好きなこの街のガイドブックの仕事ができれば」と
早速意気込むゾーイだが、
会社側は「キミは会社に馴染めない」の一点張り。
それもそのはず、その会社で働くのは
CEOはヴァンパイア、副社長はゾンビで、
広報担当はインキュバスというように魔物ばかり。
作ろうとしているガイドブックも
ニューヨークにやってくる魔物のためのものだったのだ。
そうと知っても、この仕事を逃したら、
次はいつチャンスがあるかわからない、
おまけになんだか面白そうだし……と、
強引に食らいついて採用にこぎつけはしたものの
人間のあれやこれやを食料とする者たちの中で働くことは
もちろん簡単なことではなかった。


吸血鬼にゾンビ、水の妖精にインキュバス、死の女神にゾーイティスト等々、
ファンタジーや怪奇小説でおなじみの面々が一堂に会して、
まさに人種の坩堝ニューヨーク?!
こういう物語は、小難しいことは考えず、
主人公に便乗して一喜一憂、ノリ良く楽しむのがお薦めだ。

その点ではこの主人公、
怖い目にあっても痛い目にあっても決して逃げない
好奇心の強さと負けん気は人一倍。
仕事はできて、柔軟性もあり、
インキュバスに誘惑されてよろめくことはあっても
自立心旺盛の元気いっぱいの女性なので
便乗するのも気持ちが良い。

(株)魔法製作所”シリーズに比べると、
こちらの“希少種”はグロテスクなものも多く、
起こる事件にも凄惨で残忍なシーンがある。
犠牲者もいるし、アダルトシーンもあるけれど、
その分派手な展開で既に映画化が決まっているというのもうなずける。

おまけに時々挟み込まれる
“希少種”向けの旅行ガイド『ニューヨークよろよろ歩き』の内容がこれ、かなり面白い。

但し終盤のドタバタ感は否めず
なにもそう慌ててまとめにはいらなくても……と思ったら、
訳者あとがきで、この作品が3部作の1作目だと知らされる!
うわ~やられた。
もしかしてあれやこれやは伏線なのか?!
また追いかけなくてはいけないシリーズができてしまった!!

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かもめ通信
かもめ通信 さん本が好き!免許皆伝(書評数:2229 件)

本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。

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