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三毛ネコ
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明智光秀の人生に2人の人物が大きく関わっていたというフィクションです。こんな展開にするのか、と感心しました。
垣根涼介のクライム・ノベルは好きである。その著者が時代小説を書いたと知り、読もうと思った。

場所は京都。辻斬りのようなことをしてわずかな金を稼ぐ兵法者、新九郎、辻博打で食べている坊主、愚息。そして十兵衛の3人が出会う。十兵衛―明智光秀は土佐源氏の流れを組む者で、京で私設外交官のような仕事をしていた。しかし、国許の明智氏は滅ぼされ、光秀も今は細川藤孝の屋敷に居候し、貧しい暮らしをしている。

最初は新九郎が光秀に対して追い剥ぎのような真似をするのだが、それが縁で愚息と新九郎は光秀の家の茶の席に招かれる。事の顛末を訊いていた細川藤孝も同席する。それ以来、光秀は愚息、新九郎と親しくなり、敬称をつけずに呼び合う間柄になる。光秀はたびたび愚息を家に招き、話を聞く。

この愚息という坊主、なかなかの知恵者であるようだ。なんでも、仏教を学びに異国に行ったこともあるという。一筋縄ではいかない人物である。

ある時、新九郎たちが住んでいる村に賊が現れる。村人たちに頼まれて、そのものたちを退治した新九郎。と、村人たちの態度ががらりと変わり、兼定という名刀をお礼に持ってきた。そして、村人たちに剣術を教えてやってほしいと言う。

米3合の報酬と共に引き受けた新九郎だったが、意外にも自分にモノを教える才能があることに気づく。そして、新九郎自身の剣術の上達にも役立っていく。新九郎の道場が有名になるほど、道場破りの剣術家も現れるようになるが、新九郎はその全ての勝負に勝つ。そして、自身が「笹の葉流」と名付けた剣法から、笹の葉新九郎と呼ばれるようになる。このあたりのくだりは剣豪小説を読んでいるようで、非常に面白い。

愚息と新九郎は架空の人物だが、この2人の存在によってこの物語はぐっと魅力的になっている。

その後、誰もが知るように光秀は信長に仕えるのだが、そこで愚息がしていた博打にそっくりな状況に出くわす。ここが、このストーリー最大の見せ場である。光秀は、そのかけに勝つことができるのか……。

垣根涼介の作品はクライム・ノベルしか読んだことがなかったのだが、時代小説にもその才能はいかんなく発揮されている。新しい光秀像を垣間見せてくれた興味深い本だった。
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三毛ネコ
三毛ネコ さん本が好き!1級(書評数:879 件)

フリーランスの産業翻訳者です。翻訳歴12年。趣味と実益(翻訳に必要な日本語の表現力を磨くため)を兼ねてレビューを書いています。サッカーファンです。

書評、500冊になりました。これからも少しずつ投稿していきたいと思います。

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