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はるほん
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そのまま映画化決定!となりそうなストーリー
映画「超高速!参勤交代」に幕末まらそん侍の著者作品。
走りに走った後で、今度は歩くことにしたらしい。
が、その距離は半端ではない。
江戸から聖地・伊勢神宮を目指す、いわゆる「お伊勢参り」である。

主人公は博打打ち。
勝負のツキをちょいと誤り、積もりに積もった借金五十両。
命を取られるか尻をまくって逃げるしかないと思ったその時に
思わず舞い込んだ長屋代表「伊勢参り」役。※
(※村落などで参詣用に共同出資、代表が行くのが常だった)
全員の積立金を懐に、何やらよからぬ心持ちが見え隠れ。

さらに代参のワン公に抜け参り※の小僧、
(※家や奉公先を無断で抜け出して詣でること)
行きがかりで入水から助けた女らと家族を装い、
伊勢への道中を共にする。
が、カタギでない主人公にコトが起こらない筈もなく。

東海道五十三次にご当地のうまいもんを乗せ、
笑いあり人情ありのウォーキング時代劇──
──と、そのまま映画化決定!となりそうなストーリーだ。

やはりこの作品のよさは、題材だろう。
先の参勤交代よろしく、日本史の単語としてでなく
武士や庶民たちの生活や現実から視ている。
伊勢といえばちょっと前まで修学旅行の定番でもあったが
新幹線とバスでばびゅんと行っても意味がないのである。

徳川幕府というブラック企業傘下に、
唯一あった末端福利厚生がこの「お伊勢参り」ではないかと思う。
何をするにも締め付けと許可が必要な時代に置いて
「伊勢参り」と言えば関所もそこそこ寛容で、
オマケに人の善意である程度旅費も賄えるというユニークさがある。

今の時代で言えば、届けも無しに会社を欠勤して
1ヶ月バックパッカー旅行から帰って来ても
土産を渡せば「ま、伊勢じゃしかたねーな」と許されちゃうカンジ。
無論、それが東海道の流通経済をまわすという利点は大きいものの
♪伊・勢・ま・い・り~の所為なのねそうなのね!?なユルさが面白い。

伊勢参りは、当時の庶民たちの話題スポットだ。
今ならTDLやUSJに一度は行っとかないと的な感覚ではなかろうか。
自分も以前に行ったが、まさに「神社版ディズニーランド」だった。
たっぷりの御利益感と道中の土産話、宿場の口コミ情報は
村に帰ってまた、人たちの憧れに火をつけただろう。

そんな「お伊勢参り」だけでも味があるため
若干ストーリーは出来過ぎというか、
いかにも映画的な演出っぽいなと感じる部分がなくもないが、
歴史の入り口という意味では、著者の作品はよいと思う。

今は交通機関でちょいと行けちゃう場所ではあるが、
いまでも東海道五十三次のウォーキングなんかの旅行があり、
名物のとろろ汁や安倍川もちが味わえる。
当時を模した街並みや橋が作られている場所もあるそうで、
日本史行脚の旅が夢の自分としては、行ってみたい場所のひとつだ。

そのときに本書みたく「駄犬」が飼えると、更に楽しくなりそうなのだが。(笑)

==================================================

※「おかげ参り」
式年遷宮(定期的にお社を建て替えること)の翌年になると
伊勢参りがどっと増えるのを「お蔭参り」と呼んだ。

遷宮は20年ごとだが、なぜか60年に1度
爆発的に参詣が増えるという現象があり、江戸時代には3回あったとされる。
なぜこの周期でブームが来たのかは、今でもよくわからないそうだ。

本書ではその辺が曖昧になっていて
60年に一度遷宮があるような書き方になっていて、ちょっと気になった。
遷宮が60年なのは出雲大社のほうである。(キッチリ60年ではないが)
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はるほん
はるほん さん本が好き!1級(書評数:684 件)

歴史・時代物・文学に傾きがちな読書層。
読んだ本を掘り下げている内に妙な場所に着地する評が多いですが
おおむね本人は真面目に書いてマス。

年中歴史・文豪・宗教ブーム。滋賀偏愛。
現在クマー、谷崎、怨霊、老人もブーム中
徳川家茂・平安時代・暗号・辞書編纂物語・電車旅行記等の本も探し中。

秋口に無職になる予定で、就活中。
なかなかこちらに来る時間が取れないっす…。

2018.8.21

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この書評へのコメント

  1. 祐太郎2017-04-08 14:32

    書評を読みながら、この本を思い起こしていました。

  2. はるほん2017-04-08 20:04

    >祐太郎さん
    あ!それそれ!それも読もうと思ってたんでした!
    (そんなんばっかりやなオマエは)

    読みたい本をチェックしても、図書館に行くと
    目についた本を借りてしまうというアタマの悪さで
    なにがなにやらもう…(まだ混乱期)

  3. No Image

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