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三太郎さん
三太郎
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桜木紫乃氏の最初期の犯罪小説。事件の舞台は根室。昔よく聞いたレポ船が登場します。
桜木紫乃氏の最初の長編サスペンス小説です。舞台は桜木さんの地元の釧路とお隣の根室。サイドストーリーとして児童のいじめと自殺についての裁判の描写がありますが、著者は裁判所勤務の経験があるとか。

主な登場人物は釧路で書道教室を営む夏紀と、根室に住む元中学校教師の徳一。徳一は若い頃、担任だったクラスの女子生徒の事故死(自殺?)を経験していました。彼女の父親は漁師でしたが少し前にソ連に拿捕され、死亡して帰国します。

後に徳一はその女子生徒が妊娠していたことを知りますが、その赤ちゃんがどうなったか誰も知りませんでした。そして事件から30年経った頃、徳一のもとに夏紀が訪ねてきますが、徳一は彼女を見て仰天します。夏紀は死んだ女子中学生が成人した姿だったのでした。徳一とその息子は謎を解き明かそうと死んだ女子生徒の母を探すことに。

人が赤の他人に成りすますというトリックを桜木氏は後の作品でも使っていますが、この作品では子供の取り換えは小説の最初の段階でほぼ明らかになっています。物語は女子生徒の死と夏紀の出生の謎について解き明かしていくことになります。

その謎解きの障害になってくるのは、根室にある古い旅館の女将の婆さんと彼女の一人息子です。女将は元は根室の花街の芸者で、女子生徒が死んだ当時は地元の警察にも影響力があり、息子は元はレポ船の元締めで、犯罪組織とも繋がりがあると想像されました。その息子が徳一の調査に気が付き暴力で調査を阻止しようと動きます。

物語の山場は徳一たちが女将と対決する場面でしょうが、事件の結末はやや呆気ない形で訪れます。

桜木氏の後のサスペンス物と比べると意外性は少なく、すっきりした読後感のお話でした。
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三太郎
三太郎 さん本が好き!1級(書評数:829 件)

1957年、仙台に生まれ、結婚後10年間世田谷に住み、その後20余年横浜に住み、現在は仙台在住。本を読んで、思ったことあれこれを書いていきます。

長年、化学メーカーの研究者でした。2019年から滋賀県で大学の教員になりましたが、2023年3月に退職し、10月からは故郷の仙台に戻りました。プロフィールの写真は還暦前に米国ピッツバーグの岡の上で撮ったものです。

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