あかつきさん
レビュアー:
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北緯40度43分42秒,西経73度59分39秒に位置する小島に生息する高位霊長類の一群に対する考察
実は,ドラマ「ゴシップガール」がめっちゃ好きだった.少なくともシーズン2までは.
やっぱりベストカップルはブレア(B)とチャック(C)よね.シーズン2のラストなんてキュン死ですよっ!
……_(┐「ε:)_パタ♥
で,そのドラマの舞台となったのがニューヨークの超高級住宅街.所謂アッパー・イーストサイド.
ドラマではその超大金持ちのドラ息子・不良娘たち(そしてトンデモ両親たち)の華やかな生活と,人類皆兄弟的なくっついたり離れたりのすったもんだ恋愛を描いていたのだが,この本は筆者がそのパーク・アベニューに実際に移り住んで子育てをするルポとなっている.
原題は“Primates of Park Avenue”.つまり「パークアヴェニューの霊長類」.
筆者はもともとフィールドワークを主とする研究者なのだが,この本の視点の何が面白いかって,アッパー・イーストサイドの住人たちを「高位霊長類の群れ」と見なして研究対象にしているところだ.
高級ブランドに身を包み,体中に整形とメンテナンスを施し,バーキンを複数所有し,リムジンで送迎を受け,五つ星ホテルでのガラに参戦する女たち.彼女たちは如何にもわたしたち一般人とは遠く隔たれているように見える.だけど,ちょっと待って.
高級ブランド=一番良い場所をなめした皮,整形=高位の女である象徴の刺青,バーキン=群れを象徴するトーテム,ガラ=群れの集会と考えてみると,なんだろう,彼女たちも私たちも,原始人類とあまり変わりがないではないか.
約700万年前,人類はチンパンジーと進化の袂を分かち,森から草原へ進出した.
直立歩行に適した体は骨盤のねじれから難産と少産を余儀なくされ,それらのデメリットを補うために,人類はコミュニティによる出産及び子育てという手段をとる.
それは,今なお残る原始社会でも,わたしの住む片田舎でも,パーク・アヴェニューでも変わらない.むしろ,過酷な競争社会であるパーク・アヴェニューのほうが我々の世界よりずっとプリミティブと言っても過言ではないだろう.
コミュニティに新参者(筆者の様な)が現れた時,群れの女ボスは激しく警戒する.
お前は我々の仲間なのか,お前は我々の子供たちに害を為しに来たのか,お前は群れに忠誠を誓えるか,お前は,お前は,,,,.
新参者は,それらの問いやコミュニティに入るための試練に,言葉ではなく行為で応えて信頼を得ていかなければならない.
原始社会で群れに入るためのアイテムがこの世界ではバーキンで,原始社会でのグルーミングに変わるものがお食事会やスパだったりするわけである.
そして筆者は,最初はかなり冷めた目線で「霊長類の雌」達を観察していたのだが,研究の甲斐あっていつの間にやら完全に現地化してしまう(笑).その過程は少し呆気にとられるほど.
きっと彼女は同じ勢いでピダハンやヤノマミとも同化するに違いない.
読者はその同化速度に少し戸惑うが,最終盤の出来事によって,筆者の表現が正しかったことを実感する.
このパーク・アヴェニューの霊長類の雌の群れは,やはり原始社会と同様に子育てのために形成されたコミュニティであって,その結束力が何より強まるのは,その子供が失われた時なのだと――.
ある意味での人類進化の最先端とも言えるマンハッタンの霊長類たち.
彼らも,わたしたちも,700万年前に森へ一歩を踏み出したときの原始社会の習性を,今なお保持しているのだ.
やっぱりベストカップルはブレア(B)とチャック(C)よね.シーズン2のラストなんてキュン死ですよっ!
B「ヨーロッパにいたんじゃなかったの?」(むっつり)
C「パリにいた.お前の好きなピエール・エルメのマカロンを買うためだけに」
B「じゃあ,ドイツへは?」(微苦笑)
C「お前の好きなファルケのストッキングを買いに.おれがどれだけこれを気に入ってるか,知ってるだろ」(にやり)
B「……じゃあ,ここへは?何をしにきたの?」(婉然と)
……_(┐「ε:)_パタ♥
で,そのドラマの舞台となったのがニューヨークの超高級住宅街.所謂アッパー・イーストサイド.
ドラマではその超大金持ちのドラ息子・不良娘たち(そしてトンデモ両親たち)の華やかな生活と,人類皆兄弟的なくっついたり離れたりのすったもんだ恋愛を描いていたのだが,この本は筆者がそのパーク・アベニューに実際に移り住んで子育てをするルポとなっている.
原題は“Primates of Park Avenue”.つまり「パークアヴェニューの霊長類」.
筆者はもともとフィールドワークを主とする研究者なのだが,この本の視点の何が面白いかって,アッパー・イーストサイドの住人たちを「高位霊長類の群れ」と見なして研究対象にしているところだ.
高級ブランドに身を包み,体中に整形とメンテナンスを施し,バーキンを複数所有し,リムジンで送迎を受け,五つ星ホテルでのガラに参戦する女たち.彼女たちは如何にもわたしたち一般人とは遠く隔たれているように見える.だけど,ちょっと待って.
高級ブランド=一番良い場所をなめした皮,整形=高位の女である象徴の刺青,バーキン=群れを象徴するトーテム,ガラ=群れの集会と考えてみると,なんだろう,彼女たちも私たちも,原始人類とあまり変わりがないではないか.
約700万年前,人類はチンパンジーと進化の袂を分かち,森から草原へ進出した.
直立歩行に適した体は骨盤のねじれから難産と少産を余儀なくされ,それらのデメリットを補うために,人類はコミュニティによる出産及び子育てという手段をとる.
それは,今なお残る原始社会でも,わたしの住む片田舎でも,パーク・アヴェニューでも変わらない.むしろ,過酷な競争社会であるパーク・アヴェニューのほうが我々の世界よりずっとプリミティブと言っても過言ではないだろう.
コミュニティに新参者(筆者の様な)が現れた時,群れの女ボスは激しく警戒する.
お前は我々の仲間なのか,お前は我々の子供たちに害を為しに来たのか,お前は群れに忠誠を誓えるか,お前は,お前は,,,,.
新参者は,それらの問いやコミュニティに入るための試練に,言葉ではなく行為で応えて信頼を得ていかなければならない.
原始社会で群れに入るためのアイテムがこの世界ではバーキンで,原始社会でのグルーミングに変わるものがお食事会やスパだったりするわけである.
そして筆者は,最初はかなり冷めた目線で「霊長類の雌」達を観察していたのだが,研究の甲斐あっていつの間にやら完全に現地化してしまう(笑).その過程は少し呆気にとられるほど.
きっと彼女は同じ勢いでピダハンやヤノマミとも同化するに違いない.
読者はその同化速度に少し戸惑うが,最終盤の出来事によって,筆者の表現が正しかったことを実感する.
このパーク・アヴェニューの霊長類の雌の群れは,やはり原始社会と同様に子育てのために形成されたコミュニティであって,その結束力が何より強まるのは,その子供が失われた時なのだと――.
ある意味での人類進化の最先端とも言えるマンハッタンの霊長類たち.
彼らも,わたしたちも,700万年前に森へ一歩を踏み出したときの原始社会の習性を,今なお保持しているのだ.
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色々世界がひっくり返って読書との距離を測り中.往きて還るかは神の味噌汁.「セミンゴの会」会員No1214.別名焼き粉とも.読書は背徳の蜜の味.毒を喰らわば根元まで.
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- 出版社:講談社
- ページ数:338
- ISBN:9784062199438
- 発売日:2016年04月15日
- 価格:1728円
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