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星落秋風五丈原
レビュアー:
21世紀のディケンズと呼ばれる作家 オマージュがいっぱい
 ピューリッツァ賞作品第二作。美術館テロで母を亡くしたテオは、母の友人ホービーと暮らしていたものの、長い間音信不通だった父とその恋人サンドラが現れて彼をラスベガスに連れていく。ここまでが第一巻。前作で13歳だったテオは15歳になっている。

 ディケンズ作品のオマージュとすれば、赤毛の少女ピッパは『大いなる遺産』のエステラ、ベガスに連れていったものの特に仕事らしい仕事もせず、テオの財産を当てにして一発当てようと考える父親はさしずめ『オリヴァー・ツイスト』のフェイギンと考えられる。ホービーがこのまま『オリヴァー・ツイスト』の紳士ブラウンロー氏の役まわりを務めるのか。それとも、もっと強力な支援者が現れるのか。ファブリティウスの「ごしきひわ」の謎は次巻に持ち越しだが、盗難が明るみになった今、こちら絡みのアプローチも増えていくはずだ。テオは今後誰を頼るのか。

 NYでは上品で洗練された上流階級の大人たちに冷遇されていたテオが、退廃の街ベガスでやっと友ボリスを見つける。ママの良い子だったテオが酒、喫煙、麻薬などお決まりの青春の横道に逸れていく所ははらはらする。再会したかと思えばあっという間に去ってしまったピッパよりも―あくまで現時点では―ともすればボリスの方が、テオは好きなのでは?と思わせる描写もあった。テオより半歩オトナになった彼は世間慣れしているとはいえ、まだ十代で、保護者がいる故の悩みもある。明るく見せている分だけ闇も深かろう。それぞれの荒波を乗り越えた二人が再会して再び絆を結ぶのか。やはり第四巻まで読みたくなった。

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星落秋風五丈原
星落秋風五丈原 さん本が好き!1級(書評数:2337 件)

2005年より書評業。外国人向け情報誌の編集&翻訳、論文添削をしています。生きていく上で大切なことを教えてくれた本、懐かしい思い出と共にある本、これからも様々な本と出会えればと思います。

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この書評へのコメント

  1. ef2018-07-28 01:35

    なかなか意想外の展開を見せる作品ですよ。
    ここまで読まれたのですから、(この作風がお嫌いではなければ)最終巻まで読まないともったいない気もします。
    お時間が許せば最後まで読まれても損はないかな~、と思います。

  2. 星落秋風五丈原2018-07-29 01:02

    こんばんは。そうですね。今図書館で予約している本があるのであいた時間にうまく読もうと思います。ありがとうございます。

  3. No Image

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