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darklyさん
darkly
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抑制された大人すぎる愛
私は恋愛小説はあまり読まないのですが、好きな作家が書いたものは読みます。平野さんは好きな作家の一人です。ご存じの方もいらっしゃると思いますが、彼は、京都大学時代に「日蝕」で芥川賞を取りました。この小説も凄かったですが、それからしばらく結構尖がった感じの小説が多かったように思います。

尖がったというのは平たく言えば浮世離れしているというか「俺は違うんだよ」的な匂いがかなりあったように思います。結婚して子供もできたせいかどうか分かりませんが、社会への関心を示し、最近は世間に近づいた作品が多くなってきたように思います。

この作品は、蒔野聡史と小峰洋子という主人公の恋愛の物語であり、オーソドックスなものとも言えますし、そうではないと言うこともできます。

出会い、少し話しただけで即座に共感し、話がいつまでも尽きることなく、いつまでも話したい。そういった出会いの経験がある人もいると思いますが、この作品もそういった出会いから始まります。

お互いの心の中でお互いの存在感が日に日に増していき、数回しか会っていないのに相当お互い分かり合っているという部分までは、非常にオーソドックスな恋愛の物語と言えます。

そして、ハードルを乗り越え、結婚までたどり着こうとした時に、ちょっとしたことが起こります。
それに対する反応が、「おいおい、その反応、大人すぎるやろ!」と思わず突っ込んでしまいました。その後の展開も「マジっすか!」(笑)

序文に実話に近いようなことが書いてあっただけに、感情移入してしまい、物語に没頭してしまいました。

このように途中からオーソドックスではない展開となっていきますが、平野さんは、元々思索的な小説が多く、内面の描写が凄く、説得力もあり、またクラシックやジャズに詳しいこともあって音楽についても記述も多く、イラク戦争やリーマンショックなど社会的なことについての彼の主張も織り交ぜ、
非常に読み応えのある格調高い、そして面白い作品になっています。

本の帯に「毎日新聞連載終了後、「マチネロス」続出」とあります。たいていこういうのは大げさなものが多いと思いますが、この作品についてはあながち大げさではないでしょう。
すぐに影響される私はバッハの「無伴奏チェロ組曲」のCDを引っ張り出し、聴きながらこの書評を書きました。

特に大人の女性にお薦めしたい作品で、読みだすと徹夜になってしまう方も多いでしょう。
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darkly
darkly さん本が好き!1級(書評数:337 件)

昔からずっと本は読み続けてます。フィクション・ノンフィクション問わず、あまりこだわりなく読んでます。フィクションはSF・ホラー・ファンタジーが比較的多いです。あと科学・数学・思想的な本を好みます。

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この書評へのコメント

  1. ランピアン2017-11-28 21:37

    形而上的な平野さんのイメージからすると、かなり意外ですね。俄然読んでみたくなりました。

  2. darkly2017-11-28 22:02

    おっしゃるとおりで、昔のイメージとはかなり違います。

  3. No Image

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