たけぞうさん
レビュアー:
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ドイツ哲学の大人物の分かりやすい著作です。
いやあ、よかったです。ぐだぐだの愚痴パートも含めてとても楽しめました。素晴らしい出合いです。この本は、新聞の書評コーナーで大学生の悩みに答える形で三冊選ばれたうちの一冊です。ほかの二冊の選書も個性的で、非常によかったですね。選書コーナーが終わってしまい残念です。
ショーペンハウアーの哲学者としての評価は、主著の「意志と表象としての世界」で定まっています。しかし発売当初はまったく売れませんでした。
その一方で、刊行した年にベルリン大学の講師に応募し、翌年から採用されることが決まります。むかえた最初の講義。著作の理論に自信を持っていたショーペンハウアーは、なんと授業のスケジュールを当時大人気の哲学者のヘーゲル教授の時間にぶつけたのです。当然ながら惨敗でした。だって、ショーペンハウアーの理論はまだ広まっていなかったんですから。
それなのに、ショーペンハウアーは失意のどん底に落ち、講義は初回だけの開催であとは全部すっぽかしとなりました。実力と名声は必ずしも同時並行ではない典型的な例ですが、後世の評価を考えると広まってさえいれば状況は違ったのでしょうね。しかしベルリン大学は、契約に従い以降の十年間、講義予告を出し続けたのでした。ということは、大学はショーペンハウアーの素晴らしさに気がついていたのでしょう。生徒たちは待ちぼうけになっちゃったんですけど。
ものすごい変人エピソードで、読んでいて楽しくなってきます。さらに、講義をさぼって書いた余禄と補遺が、とても分かりやすくてベストセラーになったのですから、世の中は分からないものです。これが運命なのでしょう。余録と補遺に引っ張られる形で主著の再評価が進み、ショーペンハウアーは哲学の大家となったのです。
余録と補遺には代表作が多く含まれます。
「知性について」「自殺について」「女について」「幸福について」など
余録と補遺の中で、この一冊に含まれているものは、「読書について」「自分の頭で考える」「著述と文体について」
「著述と文体について」は、ベルリン大学で負けたヘーゲルほかの当時の人気哲学者や文筆家たちを徹底的にこき下ろしたものです。しかし二百年たったいま、ただの愚痴が実は本当のことだったという不思議な位置づけになっています。興味深いです。
内容的に気に入ったのが、「自分の頭で考える」と「読書について」です。非常にこころが湧きたちましたね。三作品に共通しているのは、自分で調べ、考え、整理し、自分の意思を明確にすることの大切さを強調していることですね。
読書するとは、自分でものを考えずに、代わりに他人に考えてもらうことという一文が冒頭にあります。非常に誤解を生みやすい一方で、文章全体を読むと著者の真意が伝わるので深く納得する体験ができます。
物書きには二種類ある、テーマがあるから書くタイプと、書くために書くタイプという一文も非常に重いです。特に、耳目を集めるための売文行為を激しく非難しています。著者の主張は、資料の寄せ集めで出来上がった本は読まない方がいい、先人固有の血の通った専門知識から書かれた本を読もうというものです。
自分の名前を出さずに批判文を書く行為も激しく糾弾されています。わたしは、身分を明かさずに本が好き!で自分の感想を登録させてもらっているので、ものすごく気が咎めました。賛成、反対、共感。どのスタンスを取るにしろ、自分の考えたことが大事だと伝わったので、書評を書くときに気をつけていこうと思いました。
大変刺激的な一冊です。
ショーペンハウアーの哲学者としての評価は、主著の「意志と表象としての世界」で定まっています。しかし発売当初はまったく売れませんでした。
その一方で、刊行した年にベルリン大学の講師に応募し、翌年から採用されることが決まります。むかえた最初の講義。著作の理論に自信を持っていたショーペンハウアーは、なんと授業のスケジュールを当時大人気の哲学者のヘーゲル教授の時間にぶつけたのです。当然ながら惨敗でした。だって、ショーペンハウアーの理論はまだ広まっていなかったんですから。
それなのに、ショーペンハウアーは失意のどん底に落ち、講義は初回だけの開催であとは全部すっぽかしとなりました。実力と名声は必ずしも同時並行ではない典型的な例ですが、後世の評価を考えると広まってさえいれば状況は違ったのでしょうね。しかしベルリン大学は、契約に従い以降の十年間、講義予告を出し続けたのでした。ということは、大学はショーペンハウアーの素晴らしさに気がついていたのでしょう。生徒たちは待ちぼうけになっちゃったんですけど。
ものすごい変人エピソードで、読んでいて楽しくなってきます。さらに、講義をさぼって書いた余禄と補遺が、とても分かりやすくてベストセラーになったのですから、世の中は分からないものです。これが運命なのでしょう。余録と補遺に引っ張られる形で主著の再評価が進み、ショーペンハウアーは哲学の大家となったのです。
余録と補遺には代表作が多く含まれます。
「知性について」「自殺について」「女について」「幸福について」など
余録と補遺の中で、この一冊に含まれているものは、「読書について」「自分の頭で考える」「著述と文体について」
「著述と文体について」は、ベルリン大学で負けたヘーゲルほかの当時の人気哲学者や文筆家たちを徹底的にこき下ろしたものです。しかし二百年たったいま、ただの愚痴が実は本当のことだったという不思議な位置づけになっています。興味深いです。
内容的に気に入ったのが、「自分の頭で考える」と「読書について」です。非常にこころが湧きたちましたね。三作品に共通しているのは、自分で調べ、考え、整理し、自分の意思を明確にすることの大切さを強調していることですね。
読書するとは、自分でものを考えずに、代わりに他人に考えてもらうことという一文が冒頭にあります。非常に誤解を生みやすい一方で、文章全体を読むと著者の真意が伝わるので深く納得する体験ができます。
物書きには二種類ある、テーマがあるから書くタイプと、書くために書くタイプという一文も非常に重いです。特に、耳目を集めるための売文行為を激しく非難しています。著者の主張は、資料の寄せ集めで出来上がった本は読まない方がいい、先人固有の血の通った専門知識から書かれた本を読もうというものです。
自分の名前を出さずに批判文を書く行為も激しく糾弾されています。わたしは、身分を明かさずに本が好き!で自分の感想を登録させてもらっているので、ものすごく気が咎めました。賛成、反対、共感。どのスタンスを取るにしろ、自分の考えたことが大事だと伝わったので、書評を書くときに気をつけていこうと思いました。
大変刺激的な一冊です。
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ふとしたことで始めた書評書き。読んだ感覚が違うことを知るのは、とても大事だと思うようになりました。本が好き! の場と、参加している皆さんのおかげです。
星の数は自分のお気に入り度で、趣味や主観に基づいています。たとえ自分の趣味に合わなくても、作品の特徴を書評で分かるようにしようと務めています。星が低くても作品がつまらないという意味ではありません。
自己紹介ページの二番目のアドレスは「飲んでみた」の書評です。
三番目のアドレスは「お絵描き書評の部屋」で、皆さんの「描いてみた」が読めます。
四番目のアドレスは「作ってみた」の書評です。
よかったらのぞいてみて下さい。
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- 出版社:光文社
- ページ数:101
- ISBN:B015F4CCQA
- 発売日:2013年05月20日
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