かもめ通信さん
レビュアー:
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恰幅がよく睨みもきき、度胸満点で気配り上手、眼光鋭い一方で笑顔はとても愛嬌がある。俳優でたとえるならまるで故中村梅之助さん演じる“伝七”みたいなイメージだ。といってもこのダンナ、猫なんだけど!
八百屋の裏の塀の上で、体のずんぐりと大きい猫が寝ていた。そこへ、鰹節をくわえた猫がやって来て……
こんな語り出しから始まる物語は連作短篇で、第一話の「裏町の顔役猫」は、第26回新美南吉童話賞で特別賞を受賞しているのだという。
それも納得。
猫仲間からも人間からも「ダンナ」と呼ばれるその猫は、病気や怪我で動けない猫に食べ物を届けてやるという人情派ならぬ猫情派。
本猫はそれが顔役の仕事だと思っているようだが、なかなか簡単にできることではない。
そんな彼のことを知っているから、町内の猫たちは余分に収穫があると、ダンナにお裾分けを持ってくるのだ。
顔役の仕事はそれだけではなく、よその町の猫が狼藉を働かないか見張っていたり、時には人間の落とし物をとどけてやったり、人間の迷子を連れ帰ってやることだってある。
そんなこんなで、人間の顔役である交番のおまわりさんともつなぎができ、独り暮らしのおばあちゃんの家に起こった幽霊騒動をはじめ、人間たちのゴタゴタの現場にも、その軽い身のこなしでスルッと入り込んで、見事解決に導くという活躍ぶり。
心温まる大人の童話であるだけでもなくミステリーでもあるというなかなか美味しい1冊だ。
そんな顔役のダンナにはどうやらなにか大きな秘密がありそうで………いやはやこれは、Twitterを通じて知った兼業作家による電子書籍のみで販売されている作品なのだが、殺伐とした世の中にあって癒やし効果抜群!この作家の作品をもっと読んでみたくなった。
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本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。
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- 出版社:こびと書房
- ページ数:35
- ISBN:B01LJOTT02
- 発売日:2016年09月03日
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