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Wings to fly
レビュアー:
手違いで1コ余った?!この原子爆弾どうしたらいいのよ。実在の人物が続々登場のコメディ。
物語の始まりは、1970年代初頭の南アフリカ。その頃政府はアパルトヘイトを全力で推進しながら原子爆弾を製造し、ネルソン・マンデラはテロリストとして監獄につながれ、孤児の少女ノンベコ(10歳)は、まだ読み書きも出来ず貧民街で汲み取りの仕事をしていた。後に数学と語学の才能を開花させたノンベコ自身の計算によると、そういう境遇の子どもが将来スウェーデン王と首相と共に核爆弾を載せたジャガイモトラックに閉じ込められる統計的確率は、457億6621万2810分の1だという。

原子力技術者のミスで、南アフリカの原子爆弾が1コ余分に出来ちゃった。複雑な理由によりその物騒な1コと共にスウェーデンへ亡命したノンベコは、核爆弾をどうしたらいいのかとラインフェルト首相に電話しても繋いでもらえなかった。そのため、爆弾はそのまま彼女の手元に残される。

少々の史実とほとんど空想で織りなされるコメディは、偶然に偶然が重なり実在のあの人この人が入り乱れ、最後にごく内輪の会議へとなだれ込む。ちなみにその場所は自称伯爵夫人のジャガイモ畑の小屋で、スウェーデン王カール・グスタフ16世は自らの手でディナーのニワトリの首を落とし、几帳面な首相は台所をピカピカに磨き上げた。

ネルソン・マンデラ、ドイツ代表サッカー選手のミヒャエル・バラックなど、物語のあちこちに有名人の消息が語られ、時間の流れを実感させる。アパルトヘイトや核軍縮など政治問題を背景にしているが、本書の目的は読者を深く考えさせることより、いかに笑わせるかにあるようだ。

中国貴州省の若き書記長・胡錦濤とノンベコちゃんが南アフリカで友だちになる経緯とか、長い月日を経てスウェーデンで再会した時の出来事とか。様々な「ひょんなこと」から広がってゆくお話のスケールに「ワオ!」と笑い転げればいいのだ。現実世界の悲惨な紛争とか切実な核のゴミ問題とか、ちょっとの間だけ忘れさせてもらえるし。でもやっぱり、あの人があそこへ持って行った核爆弾がどうなったかは、すごく気になる。
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Wings to fly
Wings to fly さん本が好き!免許皆伝(書評数:862 件)

「本が好き!」に参加してから、色々な本を紹介していただき読書の幅が広がりました。

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この書評へのコメント

  1. 星落秋風五丈原2016-08-28 19:06

    こんばんは。西村書房の本は面白いのが多いですね。

  2. Wings to fly2016-08-28 21:06

    星落秋風五丈原さん
    はい、面白かったです。ご紹介の前作同様、本当の歴史を背景に実在の人物を配しつつ、こんなにコミカルな話を組み立てる作者の才能はすごいものでした^ ^
    ラインフェルト首相は(今は前首相ですが)、実際に綺麗好きだったと知り笑いましたし、スウェーデンの王様のキャラが可愛すぎて萌えました(笑)

  3. No Image

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