はるほんさん
レビュアー:
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憂世を浮世にした男・歌川国芳
名前は存じ上げているのだが、風野氏の作品は多分オハツ。
1度読もうと思いつつ、シリーズものが多くてなかなか手が出なかったのだが
国芳の猫表紙がご縁となった。ありがたや。
いやもう国芳の猫絵大好き。
ぶさかわいさが絶妙過ぎて身悶える。
自分は子猫より大人猫の方が好きなものだから
サイズ的にもズボズボとツボを突かれる。
ああもうかわええなぁ!!
猫絵の話で終わりそうなので、本書の話。
実際に数匹から十数匹の猫を飼っていたという猫好き国芳の
猫と関係あるような無いような日常7話。
下手の横好き
弟子入りしてきた隠居のじいさんは、まったく絵が上手くならない。
国芳の飼い猫の1匹がいなくなり、数日してじいさんがぽっくりと。
金魚の船頭さん
お咎(とが)めがあった金魚絵を、ぜひもう一度描いてくれと言う金魚好き。
飼い猫たちは1匹覗いて、その金魚好きに妙に懐いている。
高い塔の女
国芳は高いトコロが苦手だ。猫を助けるためでも、梯子を上るのも怖い。
ある日北斎の娘が家に来て、居座るようになる。
病人だらけ
身体の調子がいまひとつで、評判の蘭学女医を家族まとめてたずねる国芳。
国芳の家には、ちょっとややこしい間柄があった。
からんころん
しょっちゅう国芳を訪ねてくる弟子が、なかなか行き違って会えない。
ソレも妙だが、猫が1匹見当たらないのも気にかかる…。
江ノ島比べ
贔屓筋の通夜で、ばったり広重と出くわす。
後日その形見分けの場で、またもや広重と「殺人」に出くわす。
団十郎の幽霊
八代目団十郎が死んで、その幽霊が出るという。
八代目は「死神」を見たのだという噂に、体調の芳しくない国芳はぞっとする。
いわゆる「捕物」的な話は1つか2つくらいで、
他はどちらかというとゆるっとした話である。
猫が主役とまではいかないが、必ず側にいる。
そんな距離感が猫らしくていい。
だが本書の国芳は57歳。享年は65歳。
円熟期最後の国芳と言っていい。
国芳は晩年に中風を患う。
いわゆる脳血管障害で麻痺がでて、作品にも衰えが見られる。
女医にかかる話もその一端だろう。
まだまだ描きたいものをあれこれと模索している姿には
ふと切ない気持ちにさせられる。
その「描きたいもの」の1つに、本書では「死神」がでてくる。
ぼんやりと己の死期を悟っているのか
本書の国芳は死神を描こう描こうとして、なかなか書く機会が得られない。
が、己の仕事のあるべき姿に立ち返り
もう「死神」は描かなくてよいという心持ちになる。
「浮世」はもとは「憂世」と書き、辛く悲しいこの世の無常を差したという。
それを「どーせ世の中変わらないんだし、浮かれて生きまっしょい!」という
ヤケクソなんだか前向きなんだか分からない(笑)字面に変わったと聞く。
当時の「浮世絵」は、世を反映するツールであった。
現代で言えば、手間暇かけたツイッターみたいなもんだ。
リアルタイムの世相を表現し、言葉ではないもので大衆にそれを伝える。
国芳はそれを面白おかしく、時には辛らつに表現した。
まさに憂世を浮世にしたのだ。
それも面白おかしく世を見る町人視点があったからこその「国芳」だ。
本書の国芳はだからこそ、フツーなのである。
猫を愛で、時にむらっけを起こしたり、幕府に捕まるかと小心したり、
江戸の下町で暮らす等身大の国芳がいる。
猫絵を作ったのは、まさにそんな国芳だろう。
ゆるっとした国芳物語、結構好きである。
1度読もうと思いつつ、シリーズものが多くてなかなか手が出なかったのだが
国芳の猫表紙がご縁となった。ありがたや。
いやもう国芳の猫絵大好き。
ぶさかわいさが絶妙過ぎて身悶える。
自分は子猫より大人猫の方が好きなものだから
サイズ的にもズボズボとツボを突かれる。
ああもうかわええなぁ!!
猫絵の話で終わりそうなので、本書の話。
実際に数匹から十数匹の猫を飼っていたという猫好き国芳の
猫と関係あるような無いような日常7話。
下手の横好き
弟子入りしてきた隠居のじいさんは、まったく絵が上手くならない。
国芳の飼い猫の1匹がいなくなり、数日してじいさんがぽっくりと。
金魚の船頭さん
お咎(とが)めがあった金魚絵を、ぜひもう一度描いてくれと言う金魚好き。
飼い猫たちは1匹覗いて、その金魚好きに妙に懐いている。
高い塔の女
国芳は高いトコロが苦手だ。猫を助けるためでも、梯子を上るのも怖い。
ある日北斎の娘が家に来て、居座るようになる。
病人だらけ
身体の調子がいまひとつで、評判の蘭学女医を家族まとめてたずねる国芳。
国芳の家には、ちょっとややこしい間柄があった。
からんころん
しょっちゅう国芳を訪ねてくる弟子が、なかなか行き違って会えない。
ソレも妙だが、猫が1匹見当たらないのも気にかかる…。
江ノ島比べ
贔屓筋の通夜で、ばったり広重と出くわす。
後日その形見分けの場で、またもや広重と「殺人」に出くわす。
団十郎の幽霊
八代目団十郎が死んで、その幽霊が出るという。
八代目は「死神」を見たのだという噂に、体調の芳しくない国芳はぞっとする。
いわゆる「捕物」的な話は1つか2つくらいで、
他はどちらかというとゆるっとした話である。
猫が主役とまではいかないが、必ず側にいる。
そんな距離感が猫らしくていい。
だが本書の国芳は57歳。享年は65歳。
円熟期最後の国芳と言っていい。
国芳は晩年に中風を患う。
いわゆる脳血管障害で麻痺がでて、作品にも衰えが見られる。
女医にかかる話もその一端だろう。
まだまだ描きたいものをあれこれと模索している姿には
ふと切ない気持ちにさせられる。
その「描きたいもの」の1つに、本書では「死神」がでてくる。
ぼんやりと己の死期を悟っているのか
本書の国芳は死神を描こう描こうとして、なかなか書く機会が得られない。
が、己の仕事のあるべき姿に立ち返り
もう「死神」は描かなくてよいという心持ちになる。
「浮世」はもとは「憂世」と書き、辛く悲しいこの世の無常を差したという。
それを「どーせ世の中変わらないんだし、浮かれて生きまっしょい!」という
ヤケクソなんだか前向きなんだか分からない(笑)字面に変わったと聞く。
当時の「浮世絵」は、世を反映するツールであった。
現代で言えば、手間暇かけたツイッターみたいなもんだ。
リアルタイムの世相を表現し、言葉ではないもので大衆にそれを伝える。
国芳はそれを面白おかしく、時には辛らつに表現した。
まさに憂世を浮世にしたのだ。
それも面白おかしく世を見る町人視点があったからこその「国芳」だ。
本書の国芳はだからこそ、フツーなのである。
猫を愛で、時にむらっけを起こしたり、幕府に捕まるかと小心したり、
江戸の下町で暮らす等身大の国芳がいる。
猫絵を作ったのは、まさにそんな国芳だろう。
ゆるっとした国芳物語、結構好きである。
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歴史・時代物・文学に傾きがちな読書層。
読んだ本を掘り下げている内に妙な場所に着地する評が多いですが
おおむね本人は真面目に書いてマス。
年中歴史・文豪・宗教ブーム。滋賀偏愛。
現在クマー、谷崎、怨霊、老人もブーム中
徳川家茂・平安時代・暗号・辞書編纂物語・電車旅行記等の本も探し中。
秋口に無職になる予定で、就活中。
なかなかこちらに来る時間が取れないっす…。
2018.8.21
この書評へのコメント

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- 出版社:文藝春秋
- ページ数:337
- ISBN:9784167906801
- 発売日:2016年08月04日
- 価格:745円
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