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DBさん
DB
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怪異を正しく怖れる話
江戸の町を舞台に商人たちの文化や妖の出る不思議な話をつづる百物語です。
第一話の「魂取の池」は、炬燵や火鉢を出すような季節にやってきた若い娘が語り手になっている。
朱と臙脂色の花勝見という柄の着物に紅珊瑚の簪をさしたお文と名乗る娘はおちかと同じくらいの年頃で、年が明けたら嫁入りすることが決まっているという。
仲の良い幼馴染との結婚に浮かれている娘にお文の母親が語って聞かせたというお文の祖母にあたる女性の話を、三島屋名物の百物語の一つに加えようという趣向だ。
お文の祖母の実家の近くには「魂取の池」と呼ばれる小さい池があり、そこには猪の神様が住んでいて山の恵みを司るものとしてまつられていた。
ただこの神様が悋気持ちで、恋しあう男女がそろって池を訪れると必ず男に他の女ができて別れる羽目になるという。
この神様を二度も試したお文の祖母の話でした。

続いて百物語を語るのは、隠居したばかりの白粉問屋の主人だった。
心臓を患って死にかけたという主人は子供の頃に鉄砲水で家族を亡くして孤児になったという。
近所に住んでいた幼馴染たちも行方不明になっていたが、避難先で幼馴染の夢を見ると遺体が見つかるという不思議な体験をしていた。
そして先日死にかけた時にも幼馴染たちと隠れ鬼をする夢を見たが、不思議な夢と夫婦の絆を描いた話だった。

三話目は表題にもなっている「泣き童子」ですが、やつれた老人がどうしても百物語を語りたいと押しかけてきたのだった。
そのまま店先に倒れたのをいつも百物語を聞く場所である「黒白の間」へと運び込み、老人の話を聞くことになる。
産まれたばかりの捨て子を引き取った看板屋は繁盛していたが、引き取られた捨て子は三歳になっても言葉を話さない。
そして時折火が付いたように泣き出すという。
捨て子が泣き出す理由と因縁が怖ろしい話でしたが、やっぱり一番怖いのは人間だと思わせる話でもあった。

四話目は三島屋に時々顔を出す十手持ちの「黒子の親分」に誘われ、おちかは高利貸しの札差が主催する百物語の会に聴衆として参加することに。
黒子の親分もまだ十手持ちになったばかりの頃に出合った怪異について語ります。
江戸で流行ったという百物語の雰囲気を覗いているようで面白い。
他にも田舎から出てきた若侍が語る山里に時々出現する魔物とそれを取り押さえる村の伝統の話や、死人の顔が甦る話などどれも趣向が凝らしてあって楽しめました。
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DB さん本が好き!1級(書評数:2034 件)

好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。

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