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DBさん
DB
レビュアー:
華やかな時代を振り返る話
清少納言が枕草子を書く事になった経緯を回想風に仕立て上げた小説です。
歌人として有名だった清原元輔の娘として生まれ、受領の橘則光と結婚して息子を産んだが離婚。
その後華やかな世界を求めて出仕し一条天皇の妃であった中宮定子に仕える。
この定子が宮中でもっとも輝いていた頃を描いています。

二十八歳にして色あせた中年の女と自分で言ってしまうあたりは時代背景だとしても、くせ毛で容姿もよくなかったことにコンプレックスがあったようだ。
憧れの宮中へ出仕したのはいいが、女房達は皆自分より若いのにしっかり働いていて居場所に困り隠れるようにしていたとか。
それに目をとめた定子が言葉をかけ、有名な香炉峰の雪のエピソードが語られる。
自分に自信がなくて人目から隠れるようにしていた内気な女房が、徐々に刺激の多い生活に慣れ親しんでいく様が描かれています。

文学や音楽を愛した雅な天皇であった一条天皇の宮中で、貴人たちが歌を詠みかけたり、祭りの衣装に工夫を凝らして耳目を集めたりと華やかな雰囲気が伝わってくる。
歌を詠んで上手くいい返歌がくれば一夜の話題となるし貴族の覚えもめでたくなるという世界でもあるが。
せっかくなら命婦の御許も登場させてほしかった。

もちろん華やかなばかりが宮中ではない。
定子の父である藤原道隆の病死と、道隆亡き後の藤原道長と藤原伊周との権力争いがあり、自分の娘を一条天皇の正妃としたい道長から定子は様々な攻撃を受けることとなる。
だが道隆が亡くなり兄には才覚がなかった以上、定子が没落していくのは避けがたいものだっただろう。
長徳の変で定子が落飾したこと、それでも一条天皇は定子を呼び戻し皇子を産ませたことが淡々と語られていきます。
道長と伊周の骨肉の争いや、宮中での女房達の生活ぶりがよくわかる話だった。

しかし定子との関係は忠実な女房だったのだろうけど、人物像がやや綺麗事すぎていた気もする。
著名な歌人の娘としての触れ込みで宮中入りしたものの、年はとっているし容色をとっても歌の才能をとってもいまひとつ。
ならば勝気で機転のきく性格を売り込んでいこうというがむしゃらな芸人タイプの話の方が面白い。
紫式部の書き残した人物評が影響しているのかもしれない。
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DB
DB さん本が好き!1級(書評数:2033 件)

好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。

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