かもめ通信さん
レビュアー:
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ものすごくしんどいけれど続きを読まずにはいられなくて、ようやく読み終えた後もいつまでも余韻が去らない。語る言葉が見つからず、ただただぜひ読んでみてとしか言いようがない本に出会ったのは久しぶりかも。
1981年ジンバブエに生まれ後にアメリカに移住した作家は、本書の冒頭に収録された「ブダペスト襲撃」(2010年初出)で一躍文学界に躍り出て注目を浴びた新鋭だという。
地球儀を廻してアフリカ大陸を指でなぞりながら、ジンバブエを探す。
そう、ここだ。
南アフリカの隣、かつてローデシアと呼ばれたイギリスの植民地だった国。
1980年代に悲願の独立をはたすものの、その後30年以上にわたって、一人の大統領が国を治めてきた国。
やはりジンバブエ出身の作家ペティナ・ガッパの『イースタリーのエレジー』が醸し出す静かだが芯の熱い作風を思い出しながらページをめくりはじめると、冒頭から衝撃が走る。
10歳の女の子ダーリンの語り口で描き出される日常は、高級住宅街らしい白人たちの住むエリアにグァバの実を盗みに行く様子からはじまって、かつて自分たちがくらしていた家やその暮らしそのものがブルドーザーに押しつぶされていった様子や、同じ年頃の遊び友達の妊娠、南アフリカに出稼ぎに行ったまま帰らない父のこと、母の情事、祖母の信仰、そして社会やジンバブエという国が抱える矛盾など、子どもらしい視点を保ちながらも鋭く痛烈に描き出す。
やがて叔母を頼って単身アメリカに渡るダーリンが見たのは、ありあまる食べ物と路上で暮らす貧しい人々。
郷愁と失望と罪悪感、彼女が得たもの、失ったもの。
コンゴもスーダンもジンバブエも、一緒くたに“アフリカ”とする人たち。
“あなたたち”と一括りにして“あたし”を見ない人たち。
10代の少女のその語り口があまりにも生き生きとしているがために、生々しく目を覆いたくなるような“現実”から目を背けることができず、涙も出ない。
自伝的な小説ではないが、フィクションでありながらその“現実感”に圧倒され、読んでいるうちに息苦しくなってとても一気に読むことは出来なかったが、途中でやめることもまた出来なかった。
そしてまた、読み終えた後もいつまでも余韻が去らない。
正直、大好きだとは言い難いが、心から読んで良かったと思える本であることは間違いない。
私はこの先ずっとこの物語となかなかさらない余韻のことを覚えているに違いない。
ジンバブエという国の名とともに。
地球儀を廻してアフリカ大陸を指でなぞりながら、ジンバブエを探す。
そう、ここだ。
南アフリカの隣、かつてローデシアと呼ばれたイギリスの植民地だった国。
1980年代に悲願の独立をはたすものの、その後30年以上にわたって、一人の大統領が国を治めてきた国。
やはりジンバブエ出身の作家ペティナ・ガッパの『イースタリーのエレジー』が醸し出す静かだが芯の熱い作風を思い出しながらページをめくりはじめると、冒頭から衝撃が走る。
あたしたちはブダペストへ行くところだ。バスタードとチポとゴッドノウズとシポとスティーナとあたし。ムズィリカズィ通りの向こうへは行っちゃいけないことになっていたし、バスダードは妹フラクションの子守りをしなきゃいけなかったし、あたしだって母さんに知れたら殺されるとこなんだけど、でもブダペストへ行くとこなんだ。ブダペストにはグァバはなっていて盗めるし、あたしはすごくグァバが欲しい。朝からなにも食べてなくて、胃袋は誰かがシャベルでもって掘り起こしてるみたいな感じがする。
10歳の女の子ダーリンの語り口で描き出される日常は、高級住宅街らしい白人たちの住むエリアにグァバの実を盗みに行く様子からはじまって、かつて自分たちがくらしていた家やその暮らしそのものがブルドーザーに押しつぶされていった様子や、同じ年頃の遊び友達の妊娠、南アフリカに出稼ぎに行ったまま帰らない父のこと、母の情事、祖母の信仰、そして社会やジンバブエという国が抱える矛盾など、子どもらしい視点を保ちながらも鋭く痛烈に描き出す。
やがて叔母を頼って単身アメリカに渡るダーリンが見たのは、ありあまる食べ物と路上で暮らす貧しい人々。
郷愁と失望と罪悪感、彼女が得たもの、失ったもの。
コンゴもスーダンもジンバブエも、一緒くたに“アフリカ”とする人たち。
“あなたたち”と一括りにして“あたし”を見ない人たち。
10代の少女のその語り口があまりにも生き生きとしているがために、生々しく目を覆いたくなるような“現実”から目を背けることができず、涙も出ない。
自伝的な小説ではないが、フィクションでありながらその“現実感”に圧倒され、読んでいるうちに息苦しくなってとても一気に読むことは出来なかったが、途中でやめることもまた出来なかった。
そしてまた、読み終えた後もいつまでも余韻が去らない。
正直、大好きだとは言い難いが、心から読んで良かったと思える本であることは間違いない。
私はこの先ずっとこの物語となかなかさらない余韻のことを覚えているに違いない。
ジンバブエという国の名とともに。
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本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。
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- 出版社:早川書房
- ページ数:320
- ISBN:9784152096241
- 発売日:2016年07月22日
- 価格:2376円
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