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ぷるーと
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イタリアの貧しさを、冷徹かつ美しい文章でつづったパヴェーゼの名作。
 主人公は、私生児で、イタリアの寒村に育った。村はあまりにも貧しく、政府から支払われる5ペソ目当てに、私生児は貧しい家庭に引き取られて育つ。

 養家でのあまりにも貧しい暮らし。そこには、希望はない。
 貧しさゆえに養家の女主人が亡くなると、一家は家を売り払って別の土地へ移り住み、主人公は村一番の農家に引き取られ、大きくなるとその家の小作農となり、金をためて村を離れる。

 大都会へ行き、アメリカに渡り、いくらかの蓄えも得て主人公は故郷へ戻ってくる。
 戻ってみれば、村の近郊ではファシズムとレジスタンスの攻防が繰り返され、その爪痕が今なお残っている。
 村は戦争でさらに貧しくなり、その貧しさは代々受け継がれていく。

 貧しい国の貧しい村で、死んでいった者たち。生き残った者たち。
 私生児であったために主人公のなめた苦しみは計り知れないが、私生児であったために彼は村を離れ、貧しさと縁を切った。
 だが、代々村に住み続けている者は、どんなに貧しくても、そこでどんな惨劇が繰り広げられようとも、土地を離れることができない。村人にとっては雲の上の人だった土地の領主でさえ、その地に別荘を持つ大金持ちに比べたら田舎の貧乏貴族に過ぎなかったことを、外に出た主人公は知っている。

 ようやく戦争が終わっても貧しさは変わらず、死ぬことも生きることも辛い現実。主人公の故郷への思いは、自分だけが貧しさから逃げてしまったことへの贖罪だろうか。

 冷徹でありながら美しい散文詩のような文章に圧倒される。
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ぷるーと
ぷるーと さん本が好き!1級(書評数:2938 件)

 ホラー以外は、何でも読みます。みなさんの書評を読むのも楽しみです。
 よろしくお願いします。
 

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