レビュアー:
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事件より手ごわいのは、警部の奥さんなのだ。ほんわか牧歌的な温もりに和んでしまいます。
この作品の舞台、南ドイツのアルゴイ地方は、小さな丘や渓谷が点在する風光明媚な場所です。牛がモーモーしているだけの静かな田舎に、重大事件が発生しました。チーズ製造会社の部長が殺されたのです。捜査責任者・クリフティンガー警部の(訛りのひどい)上司に言わせれば「どんでもないごど」です。「じんちょうに」捜査を進めなくてはなりません。でも、主役の警部はあんまり鋭くなさそうです。
作者が事件の行方と同じくらい力を入れているのは、この警部の家庭生活です。心は優しいけれど気が利かない、面倒くさがり屋で不器用。お洒落なレストランより節約が好き。時々イラッとする奥さんの気持ちがすごく良くわかります。警部は奥さんをなるべく刺激しないように気をつけているのですが、つい不用意なことをしでかします。「キッ!」となる奥さん、「やべぇ・・・」と縮こまる夫、なんとなく万国共通な風景に笑いを誘われます。
こいつが犯人だろうと目星をつけても、事件の展開は二転三転してなかなか楽しめます。様々なチーズが登場し、事件にチーズが絡んでいるところも、地方色を生かした味わいと言えましょう。警部は「ケーゼシュペッツレ」というバターとタマネギとチーズで作ったパスタ料理が大好物なのです。「ベタベタしてやだわ」と言いながらも、奥さんは毎週月曜日にこれを作ってくれます。その代りに、警部は音楽隊に参加させられています。担当楽器は大太鼓。事件の間中ずっと車の座席を占拠している大太鼓も、実にユーモラスな脇役です。
奥さんの鋭い観察眼に「妻こそ警部になるべきだった」なんてびっくりしちゃって、大丈夫なんだろかと思いました。でも、事件を解決に導けてよかったよかった。彼の捜査手法は地味だけど着実です。三人の部下も秘書のサンドラちゃんも、ホントは奥さんも、警部が大好きみたいだし。ユルユルで牧歌的な温もりに癒やされました。ああ、チーズが食べたい。
作者が事件の行方と同じくらい力を入れているのは、この警部の家庭生活です。心は優しいけれど気が利かない、面倒くさがり屋で不器用。お洒落なレストランより節約が好き。時々イラッとする奥さんの気持ちがすごく良くわかります。警部は奥さんをなるべく刺激しないように気をつけているのですが、つい不用意なことをしでかします。「キッ!」となる奥さん、「やべぇ・・・」と縮こまる夫、なんとなく万国共通な風景に笑いを誘われます。
こいつが犯人だろうと目星をつけても、事件の展開は二転三転してなかなか楽しめます。様々なチーズが登場し、事件にチーズが絡んでいるところも、地方色を生かした味わいと言えましょう。警部は「ケーゼシュペッツレ」というバターとタマネギとチーズで作ったパスタ料理が大好物なのです。「ベタベタしてやだわ」と言いながらも、奥さんは毎週月曜日にこれを作ってくれます。その代りに、警部は音楽隊に参加させられています。担当楽器は大太鼓。事件の間中ずっと車の座席を占拠している大太鼓も、実にユーモラスな脇役です。
奥さんの鋭い観察眼に「妻こそ警部になるべきだった」なんてびっくりしちゃって、大丈夫なんだろかと思いました。でも、事件を解決に導けてよかったよかった。彼の捜査手法は地味だけど着実です。三人の部下も秘書のサンドラちゃんも、ホントは奥さんも、警部が大好きみたいだし。ユルユルで牧歌的な温もりに癒やされました。ああ、チーズが食べたい。
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- 出版社:早川書房
- ページ数:458
- ISBN:9784151820014
- 発売日:2016年07月22日
- 価格:1145円
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