ぷるーとさん
レビュアー:
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浴室に閉じこもる青年の不思議な生活。
語り手で主人公でもある青年は、何をすることもなくパリのアパルトマンで日々を過ごしている。
彼はかなりの知識人のようなのだが、定職に着いているわけでもなさそうだ。
彼は家の中でも特に浴室がお気に入りで、そこに身を置いているときが一番くつろげるらしい。自閉的傾向があるようだが、ちゃんと恋人がいて、一緒に暮らしている。突然恋人にも何も告げずにパリのアパルトマンを飛び出して、旅に出てしまったりすることもある。
そういった点では、浴室に閉じこもり他人との接触を嫌うようでありながら、彼は、どこかに人のつながりを求めているのではないかと考えられる。彼の「危険を冒さなきゃ、この抽象的な暮らしの平穏を危険に晒して」という一人つぶやきは、彼の心の様を象徴的に表わしている。
だが、そう言って浴室を出て行動に移りはするものの、いずれまた周囲の人とギクシャクして、彼は浴室に舞い戻ってきてしまう。そうやって、話はふり出しに戻っていく。
出口のないなんとも奇妙な話だが、主人公はクールなひねくれ者でありながら、なんとなくユーモアを感じさせる不思議な青年として描かれている。恋人にひどい行動をとったりするが、二人はそれでも仲がよく、恋人が主人公につらく当たることはない。むしろ、彼のことを親身になって心配している。主人公はそんな恋人に甘えているといっていいのだろう。そういったクールなようでいて親密な男女関係は、いかにもフランスっぽくておしゃれな感じさえする。
だが、他者を排除し、自分にとって害にならない人とだけ接するという閉じた彼の生活がいずれ破綻することを主人公はちゃんと知っている。その前に行動をとらなければいけない、ということも。だからこそ意を決して浴室を出て行くのだが、彼の勇気はすぐくじけ、その「危険性」よりも「平穏」な世界に舞い戻ってきてしまう。
この「危険性」と「平穏な世界」は、さまざまなことばに置き換えることができるようにも思う。
彼はかなりの知識人のようなのだが、定職に着いているわけでもなさそうだ。
彼は家の中でも特に浴室がお気に入りで、そこに身を置いているときが一番くつろげるらしい。自閉的傾向があるようだが、ちゃんと恋人がいて、一緒に暮らしている。突然恋人にも何も告げずにパリのアパルトマンを飛び出して、旅に出てしまったりすることもある。
そういった点では、浴室に閉じこもり他人との接触を嫌うようでありながら、彼は、どこかに人のつながりを求めているのではないかと考えられる。彼の「危険を冒さなきゃ、この抽象的な暮らしの平穏を危険に晒して」という一人つぶやきは、彼の心の様を象徴的に表わしている。
だが、そう言って浴室を出て行動に移りはするものの、いずれまた周囲の人とギクシャクして、彼は浴室に舞い戻ってきてしまう。そうやって、話はふり出しに戻っていく。
出口のないなんとも奇妙な話だが、主人公はクールなひねくれ者でありながら、なんとなくユーモアを感じさせる不思議な青年として描かれている。恋人にひどい行動をとったりするが、二人はそれでも仲がよく、恋人が主人公につらく当たることはない。むしろ、彼のことを親身になって心配している。主人公はそんな恋人に甘えているといっていいのだろう。そういったクールなようでいて親密な男女関係は、いかにもフランスっぽくておしゃれな感じさえする。
だが、他者を排除し、自分にとって害にならない人とだけ接するという閉じた彼の生活がいずれ破綻することを主人公はちゃんと知っている。その前に行動をとらなければいけない、ということも。だからこそ意を決して浴室を出て行くのだが、彼の勇気はすぐくじけ、その「危険性」よりも「平穏」な世界に舞い戻ってきてしまう。
この「危険性」と「平穏な世界」は、さまざまなことばに置き換えることができるようにも思う。
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ホラー以外は、何でも読みます。みなさんの書評を読むのも楽しみです。
よろしくお願いします。
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- 出版社:集英社
- ページ数:173
- ISBN:9784087731088
- 発売日:1989年12月01日
- 価格:1049円
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