efさん
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このトリックは秀逸だ! この作品は推せますよ!/ポアロしらみつぶし企画7
奔放で自分の望むものは何でも手に入れてきた美人女優のジェーンは、エッジウェア卿と結婚していました。
しかし、既に結婚生活は破綻しており、ジェーンは家を出ていたのです。
ジェーンは、次の結婚相手として、裕福で地位も高いマートン公爵に狙いを定めていました(男性としてはつまらない男かもしれませんが、結婚すれば公爵夫人ですからねぇ)。
ジェーンは、偶然知り合ったポアロに、何とかエッジウェア卿に離婚を承諾させて欲しいと依頼してきたのです。
これまで弁護士などを通じて離婚を迫ってきたのですが、ことごとく拒否されてきたと言います。
同席していたヘイスティングズ大尉は、ポアロがそんな離婚交渉などに乗り出すものかと思っていたのですが、何と!ポアロはこの依頼を引き受けてしまうのです。
ポアロは何を考えているんだ?
さっそくエッジウェア卿に面会に出かけたポアロは、ジェーンが離婚を望んでいることを切り出したのですが、何と、エッジウェア卿はこれをあっさり承諾したばかりではなく、離婚を承諾することについては既に半年前にジェーンに手紙で知らせていると言うではないですか。
今度はポアロがあんぐりと口を開ける番でした。
ジェーンは、そんな手紙は受け取っていないと言うのですが、何にせよエッジウェア卿の離婚承諾を取り付けてきたことには間違いないので、さすがはポアロだと褒めそやすのでした。
これは一体どういうことなんだ?と首をかしげるポアロとヘイスティングズです。
ところが、そんな騒ぎのすぐ後にエッジウェア卿が自宅で何者かに後頚部の急所を一突きされて殺害されるという事件が起きました。
エッジウェア家の執事と秘書は、いずれも犯行推定時刻の少し前にジェーンが訪ねて来て、少しして一人で帰っていったと証言します。
警察はジェーンが犯人だと決めつけ逮捕しようとするのですが、既にエッジウェア卿が離婚に承諾していたという事実を知っていたポアロは、ジェーンには動機が無いと指摘します。
実際、ジェーンは、犯行推定時刻にはパーティーに出席していたという鉄壁のアリバイがあることが判明するのです。
それでは執事と秘書が見たというジェーンは何者なのでしょうか?
これはポアロの推理により、物真似を得意とする女優のカーロッタの変装であることが明らかにされます。
しかし、カーロッタは所持していた麻薬の過剰摂取により死亡していたのでした。
確かに、カーロッタの部屋からはジェーンの変装に用いたと思われる衣装なども発見されましたので、ポアロの推理通り、カーロッタが何らかの理由でジェーンに化けてエッジウェア卿を訪ねたのは間違いなさそうです。
しかし、カーロッタの死亡が偶然の事故というのはあまりにもできすぎです。
ポアロは、カーロッタに変装をさせた黒幕がおり、その黒幕がカーロッタの口を封じたのではないかと推理するのです。
この後、もう一つの殺人事件が起きますが、本作のメインとなるのはご紹介したエッジウェア卿とカーロッタの死と言って良いでしょう(三番目の殺人は付け足し的であり、さほど重要なものではありません)。
さて、本作には手紙に関するトリックが出てくるのですが、これは私にも分かりました。
しかし、最も重要な、犯人が誰かという謎についてはクリスティーにしてやられてしまいました。
なるほど、これは考えましたねという秀逸なトリックが用意されています。
ただし、日本人にとっては動機はちょっと分かりにくいと言わざるを得ませんが。
本作は、なかなか緊密な構成を備えており、ミステリとして隙の無い作品になっていると思います。
犯人の意外性という点でも十分に合格点が与えられる作品です。
以前ご紹介した『アガサ・クリスティー完全攻略』ではポアロ作品のベスト10圏外でしたが、私は、本作はもうちょっと評価されても良いのではないかと思います。
なかなか優れたミステリだと思いますよ。
読了時間メーター
□□□ 普通(1~2日あれば読める)
☆ ポアロしらみつぶし(私が読んでいる中でこちらでレビューを書いた作品です。番号は出版の順番です。)
1 スタイルズ荘の怪事件(☆☆☆)
2 ゴルフ場殺人事件(☆☆)
3 アクロイド殺し(☆☆☆☆☆)
4 ビッグ4(☆)
5 青列車の秘密(☆☆☆)
6 邪悪の家(☆☆☆)
8 オリエント急行の殺人(☆☆☆☆☆)
9 三幕の殺人(☆☆☆)
10 雲をつかむ死(☆☆)
11 ABC殺人事件(☆☆☆☆☆)
12 メソポタミヤの殺人(☆☆)
13 ひらいたトランプ(☆☆☆)
14 もの言えぬ証人(☆☆☆)
15 ナイルに死す(☆☆☆☆)
16 死との約束(☆☆)
17 ポアロのクリスマス(☆☆☆)
18 杉の柩(☆☆☆)
19 愛国殺人(☆☆)
20 白昼の悪魔(☆☆☆)
21 五匹の子豚(☆☆☆☆)
22 ホロー荘の殺人(☆☆☆)
23 満潮に乗って(☆☆☆☆)
24 マギンティ夫人は死んだ(☆☆☆)
25 葬儀を終えて(☆☆☆)
26 ヒッコリー・ロードの殺人(☆☆)
27 死者のあやまち(☆☆)
28 鳩のなかの猫(☆☆)
29 複数の時計(☆☆)
30 第三の女(☆☆☆)
31 ハロウィーン・パーティ(☆☆)
32 象は忘れない(☆☆)
33 カーテン(☆☆☆)
しかし、既に結婚生活は破綻しており、ジェーンは家を出ていたのです。
ジェーンは、次の結婚相手として、裕福で地位も高いマートン公爵に狙いを定めていました(男性としてはつまらない男かもしれませんが、結婚すれば公爵夫人ですからねぇ)。
ジェーンは、偶然知り合ったポアロに、何とかエッジウェア卿に離婚を承諾させて欲しいと依頼してきたのです。
これまで弁護士などを通じて離婚を迫ってきたのですが、ことごとく拒否されてきたと言います。
同席していたヘイスティングズ大尉は、ポアロがそんな離婚交渉などに乗り出すものかと思っていたのですが、何と!ポアロはこの依頼を引き受けてしまうのです。
ポアロは何を考えているんだ?
さっそくエッジウェア卿に面会に出かけたポアロは、ジェーンが離婚を望んでいることを切り出したのですが、何と、エッジウェア卿はこれをあっさり承諾したばかりではなく、離婚を承諾することについては既に半年前にジェーンに手紙で知らせていると言うではないですか。
今度はポアロがあんぐりと口を開ける番でした。
ジェーンは、そんな手紙は受け取っていないと言うのですが、何にせよエッジウェア卿の離婚承諾を取り付けてきたことには間違いないので、さすがはポアロだと褒めそやすのでした。
これは一体どういうことなんだ?と首をかしげるポアロとヘイスティングズです。
ところが、そんな騒ぎのすぐ後にエッジウェア卿が自宅で何者かに後頚部の急所を一突きされて殺害されるという事件が起きました。
エッジウェア家の執事と秘書は、いずれも犯行推定時刻の少し前にジェーンが訪ねて来て、少しして一人で帰っていったと証言します。
警察はジェーンが犯人だと決めつけ逮捕しようとするのですが、既にエッジウェア卿が離婚に承諾していたという事実を知っていたポアロは、ジェーンには動機が無いと指摘します。
実際、ジェーンは、犯行推定時刻にはパーティーに出席していたという鉄壁のアリバイがあることが判明するのです。
それでは執事と秘書が見たというジェーンは何者なのでしょうか?
これはポアロの推理により、物真似を得意とする女優のカーロッタの変装であることが明らかにされます。
しかし、カーロッタは所持していた麻薬の過剰摂取により死亡していたのでした。
確かに、カーロッタの部屋からはジェーンの変装に用いたと思われる衣装なども発見されましたので、ポアロの推理通り、カーロッタが何らかの理由でジェーンに化けてエッジウェア卿を訪ねたのは間違いなさそうです。
しかし、カーロッタの死亡が偶然の事故というのはあまりにもできすぎです。
ポアロは、カーロッタに変装をさせた黒幕がおり、その黒幕がカーロッタの口を封じたのではないかと推理するのです。
この後、もう一つの殺人事件が起きますが、本作のメインとなるのはご紹介したエッジウェア卿とカーロッタの死と言って良いでしょう(三番目の殺人は付け足し的であり、さほど重要なものではありません)。
さて、本作には手紙に関するトリックが出てくるのですが、これは私にも分かりました。
しかし、最も重要な、犯人が誰かという謎についてはクリスティーにしてやられてしまいました。
なるほど、これは考えましたねという秀逸なトリックが用意されています。
ただし、日本人にとっては動機はちょっと分かりにくいと言わざるを得ませんが。
本作は、なかなか緊密な構成を備えており、ミステリとして隙の無い作品になっていると思います。
犯人の意外性という点でも十分に合格点が与えられる作品です。
以前ご紹介した『アガサ・クリスティー完全攻略』ではポアロ作品のベスト10圏外でしたが、私は、本作はもうちょっと評価されても良いのではないかと思います。
なかなか優れたミステリだと思いますよ。
読了時間メーター
□□□ 普通(1~2日あれば読める)
☆ ポアロしらみつぶし(私が読んでいる中でこちらでレビューを書いた作品です。番号は出版の順番です。)
1 スタイルズ荘の怪事件(☆☆☆)
2 ゴルフ場殺人事件(☆☆)
3 アクロイド殺し(☆☆☆☆☆)
4 ビッグ4(☆)
5 青列車の秘密(☆☆☆)
6 邪悪の家(☆☆☆)
8 オリエント急行の殺人(☆☆☆☆☆)
9 三幕の殺人(☆☆☆)
10 雲をつかむ死(☆☆)
11 ABC殺人事件(☆☆☆☆☆)
12 メソポタミヤの殺人(☆☆)
13 ひらいたトランプ(☆☆☆)
14 もの言えぬ証人(☆☆☆)
15 ナイルに死す(☆☆☆☆)
16 死との約束(☆☆)
17 ポアロのクリスマス(☆☆☆)
18 杉の柩(☆☆☆)
19 愛国殺人(☆☆)
20 白昼の悪魔(☆☆☆)
21 五匹の子豚(☆☆☆☆)
22 ホロー荘の殺人(☆☆☆)
23 満潮に乗って(☆☆☆☆)
24 マギンティ夫人は死んだ(☆☆☆)
25 葬儀を終えて(☆☆☆)
26 ヒッコリー・ロードの殺人(☆☆)
27 死者のあやまち(☆☆)
28 鳩のなかの猫(☆☆)
29 複数の時計(☆☆)
30 第三の女(☆☆☆)
31 ハロウィーン・パーティ(☆☆)
32 象は忘れない(☆☆)
33 カーテン(☆☆☆)
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幻想文学、SF、ミステリ、アート系などの怪しいモノ大好きです。ご紹介レビューが基本ですが、私のレビューで読んでみようかなと思って頂けたらうれしいです。世界中にはまだ読んでいない沢山の良い本がある!
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- 出版社:早川書房
- ページ数:460
- ISBN:B009DEMCTG
- 発売日:2004年07月15日
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