書評でつながる読書コミュニティ
  1. ページ目
詳細検索
タイトル
著者
出版社
ISBN
  • ログイン
無料会員登録

献本書評
かもめ通信
レビュアー:
「過去を殺した」というよりは………。
献本に応募したのは表紙の装丁に惹かれたからだ。
PCの画面でパッと目にしたとき、
ハンマースホイの絵を連想した。
もちろん、彼の絵はもっと白や黒を基調としたもっとシックな色使いだし
よく見れば全く別物なのだろうが
連想はそこに留まらず、
この表紙絵の中にはそこにいるはずの女性がいない気もして
俄然興味をもったのだった。
そうして本の紹介を読むとなんとこの小説、
ハンマースホイの出身地デンマーク発のミステリだという。

これも何かの縁だという気がして、早速献本に応募した。
ところがいざ手元に届いてみると、この作品、
女性新聞記者ディクテを主人公としたシリーズの第2弾なのだという。

事前のリサーチ不足を猛反省しながら慌てて
第1作『赤ん坊は川を流れる』を入手して読んでみた。
この1作目がとても良かったので、否が応でも本作への期待も高まる。


女性新聞記者ディクテは離婚を機に、
娘のローセと共に、学生時代を過ごした地方都市オーフス町に戻り、
町外れの古い家に住んでいる。
ある夜ディクテの隣家で火事が起こる。
あれこれと忙しく立ち回った後、煙の匂いを身にまといながら出勤すると
同じ夜、学校にも放火があったことを知らされる。
二つの火事に関連はあるのか?
その疑問を追いかけるまもなく、
火事が起こった二つの場所のどちらにも関係がある女性の惨殺死体が沼地で発見される。
やはりそれぞれの事件にはつながりがあるのだろうか?
取材の過程で次第に明らかになる、殺された女性の意外な過去とは……。

前作では血が流されなかったこともあり、
“猟奇的殺人”の登場に、
北欧ミステリにありがちな凄惨さを警戒するセンサーが身のうちに発動しかけるが、
読み進めるとグロテスクと言うほどの描写はなくホッとした。

父の死、母との確執、独り立ちをのぞむ娘、年下の恋人との微妙な関係、
友に対するわだかまり、職場関係の悪化にリストラの危機と、
自らも悩みがてんこ盛り状態の主人公は事件の真相を追ううちに
すっかり事件に巻き込まれ、文字通りのたうち回ることに……?!

原題は“Selvrisiko”、直訳すると同等のリスクといった意味のよう。
邦題が微妙なのは相変わらずだが、訳は軽快で読みやすい。

ミステリとして読むと今ひとつ、ふたつと文句をつけたくなる方もおられるだろうが、
これはもう、仕事に恋に、子育てに友情に、悩みながら
自分自身の生き方を模索する女性の物語として楽しむことをお薦めする。

本国デンマークではTVドラマ化もされている人気シリーズとのことなので
続きを読むのも楽しみだ。
お気に入り度:本の評価ポイント本の評価ポイント本の評価ポイント
掲載日:
外部ブログURLが設定されていません
投票する
投票するには、ログインしてください。
かもめ通信
かもめ通信 さん本が好き!免許皆伝(書評数:2236 件)

本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。

参考になる:26票
あなたの感想は?
投票するには、ログインしてください。

この書評へのコメント

  1. かもめ通信2016-08-02 10:31

    シリーズ第1作『赤ん坊は川を流れる』も面白かったよ!
    http://www.honzuki.jp/book/225143/review/157212/

  2. No Image

    コメントするには、ログインしてください。

書評一覧を取得中。。。
  • あなた
  • この書籍の平均
  • この書評

※ログインすると、あなたとこの書評の位置関係がわかります。

『過去を殺した女 (創元推理文庫)』のカテゴリ

フォローする

話題の書評
最新の献本
ページトップへ