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Wings to fly
レビュアー:
読書はなぜ生きてゆく助けになるのか。自身の体験を心に染み入る言葉で綴った好著。
又吉さんは、喧嘩に強い不良みたいなキャラを演じてしまう少年だったそうだ。本当は優しいことや美しい景色が好きな寂しがりなのに、苦しい胸の内を誰にも理解してもらえない。どうしたらいいのかどんなに考えても答えが見つからない少年は、中学の教科書で芥川龍之介の『トロッコ』に、やがて太宰治の『人間失格』に出会う。自分と同じ悩みを持つ人間がいると知ったことは、本当に大きな救いだったと又吉さんは言う。

文学との出会い、本と読書をめぐる随想、執筆活動のことなど。また、これまでに読んできた近代文学と現代文学の紹介は、「面白そうだな。読んでみたいな。」と心を動かされるたいへん魅力的な書評だった。中でも、読書がなぜ生きてゆく助けになるのかを自身の体験から綴った第三章「なぜ本を読むのか~本の魅力」は、すでに読書が生活習慣になっている人でも心を打つ言葉に出会うことだろう。

文学は自分の人生に返ってくると、又吉さんは語る。昨年「本が好き!」の掲示板で夏目漱石読書会を主催させていただいた時に感じたのは、同じ作品を読んでも胸に響いてくる場所は人それぞれに違い、その反応の仕方も様々で、同じ人が同じ本を違う年齢で読めば異なる感想を持つということだ。それは本書の中の「物語の中で何かと何かがぶつかり合うのを読んだ時、そこにそれぞれの人生が結びつく。」という言葉を実感させる体験だった。

本を読み本と対話することによって、己の葛藤とのつきあい方を知る。本の中の様々な人の悩みに触れ、正しい答えはひとつではないと知る。それは人生の辛い夜を乗り越えるための力のひとつだよ・・・ということを、チャーミングな文章で真摯に綴った好著だと思う。答えは自分の中にしかないと、はっきり言い切っているのも気持ちが良かった。

「本を読む理由がわからない方、興味はあるけど読む気はしないという方々の背中を頼まれてもいないのに全力で押したいと思いますので、おつきあい頂ければ幸いです。」(「はしがき」より)
本に興味も読む気もある私だけれど、全力で背中を押されてしまった気がする。
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Wings to fly
Wings to fly さん本が好き!免許皆伝(書評数:862 件)

「本が好き!」に参加してから、色々な本を紹介していただき読書の幅が広がりました。

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この書評へのコメント

  1. Wings to fly2017-01-05 17:03

    遅ればせながら、明けましておめでとうございます。諸事多忙な年末と、料理を作っては運んで皿洗いに明け暮れたお正月がやっとやっと終わり、静かな日常と読書タイムが戻ってまいりました。今年はどんな本に出会うことでしょう。皆さんの書評を参考に読みたい本を積み上げるのも楽しみです。年明けに最初にこの本を読んだら、すでに数冊積み上げてしまったのですけれど(^^)
    今年もよろしくお願いします!

  2. No Image

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