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ふぶきんぐ
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携わった全ての人の愛がこもった珠玉の一冊。定価3兆円(税別)の価値あり。
珍しく話題の本に突撃。
当時小学6年生の山本健太郎くんが夏休みの自由研究で作った、手書き100ページの文房具図鑑を書籍化。

開いてまずその熱量に圧倒される。
原寸大だったり、メーカーロゴからクリップの突起、ラバーグリップの模様に至るまで事細かに書き込まれた挿絵と、実際に使用し尽くしてみないと書けない忌憚の無い文章。
大人の事情なんてまるで無視でバッサリと批判したり、しかし文具の歴史や仕組みは決して間違うことの無いよう徹底的に調べ上げて記している。
例えば売価に対しては子どもらしい金銭感覚で微笑ましくもあるが、全体のクオリティは小学生のものじゃない。
1ページ書くにも相当なエネルギーが必要なはずで、それを投げ出さず小学生が100ページ完成させた…それだけで彼がいかに文房具を愛しているか感じられる。

将来の夢は漫画家だという健太郎くんは表現力も素晴らしかった。
三菱鉛筆のボールペン“BOXY-100”をご存知だろうか。
「これを見て、「あっ!コレ見たことある!」って思った人は完ぺきなアラフォー世代だろう」とのことだ。それを書いている健太郎くんは何者だと言いたくなる。
自分の挿絵に対して「絵が変になってしまったクソ!!!」とは文具のプロのこだわりを感じる。
この本を読んでいて自分の語彙の貧弱さが恥ずかしくなるが、とにかくすごいのだ。
インクの種類?ラバーグリップの感触?書き味の違い?彼はどこまでも語っている。
そしてその文章にちょいちょいフフッてなる。
またボールペンなら(ボ)、メモ帳類なら(メ)というようにアイコンと凡例を作り、「もしこの文具をかって使い心地がわるくてもせきにんはとりません!!」と注意書きを入れたり、背表紙には発行人や発行所まで入れる芸の細かさ。
まさか書籍化するとは思いもしなかった時から、よりリアルで人に読ませられる本を作ろうとしていたのだろうなぁ。

そして実際に書籍化がされ、168アイテムに及ぶ文具の紹介1つ1つに対して、なんと各メーカーがコメントを付けている!
(大きいところではコクヨさんだけが巻末コメントのみだったが)
「健太郎くん」「山本君」「博士!」と名だたる文具メーカーがこぞってお礼を言ったり豆知識を披露したり真面目に反論していたりする。
この図鑑の出版に際し、一体どれだけの人が胸打たれ動かされたのだろう。
巻末に改めて各メーカー、家族、文具ライターなどの文具仲間、学校の先生や友達からのコメントが寄せられ、最後に健太郎くん自身の原稿用紙に手書きしたあとがきが載っている。
彼の努力と根気、それを支えた各方面からの愛が詰まった一冊…読み終えたら、ちょっと感動して泣きそうになった。笑

実際には約99.99999995%オフで販売されているが、定価(著者希望価格)の価値ある図鑑だ。
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ふぶきんぐ
ふぶきんぐ さん本が好き!1級(書評数:35 件)

国文学科卒ですが読書量は多くはなく。もっとたくさん本を読む人になりたい。
言語学、ミステリ、恋愛寄り。城平京先生の信者。
趣味はTRPG・観劇・ゲーム・旅行です。

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この書評へのコメント

  1. ふらりん2016-04-15 22:46

    BOXY-100はT社で販売している、とある商用車のハンドル脇にある
    ペン立てにピッタリ収まるので、愛用しています。

    車に2本、家に3本は常にあります。良いペンです。

  2. ふぶきんぐ2016-04-16 08:33

    >ふらりんさん
    著者の健太郎くん曰く、30年以上の歴史があるのに「時代のなみに流されずデザインが変わらないのはスゴイ」とのこと。
    芯の替え方が難しいそうですが、どうでしょう。
    黒ボールペンはほとんどこだわってこなかったので、私は感心しきりです。

  3. No Image

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