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Wings to fly
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人に言えぬ秘密を抱えた少年は、レオナルド・ダ・ヴィンチの庇護のもとで成長してゆく。ルネサンス期のイタリアを舞台にした波乱万丈の物語。
☆上下巻合わせた書評です。

YAのために書かれた物語だが、いい年をした大人が読んでもたいへん面白い。その理由のひとつは、16世紀イタリア半島の雰囲気が肌で感じられるところだ。まだ「イタリア」という国は存在せず、ボルジア、メディチなど各大公家が領地を支配していた頃のこと。イタリア半島は教皇や周辺諸国に虎視眈々と狙われる。「ルネサンス期」と聞けば華麗で優雅な印象を受けるが、実は明日の命の保証もない恐ろしく不穏な時代であった。さて、ひとりの少年がレオナルド・ダ・ヴィンチに命を救われるところからお話は始まる。

マッテオ少年は、盗賊の親玉サンディーノに追われ川で溺れかけたところを救助された。サンディーノは少年に盗み出させた“あるもの”を取り返そうとしていたのだ。マッテオという名も偽名で身の上話もでっちあげのまま、少年はレオナルド・ダ・ヴィンチに庇護される。彼が何を持っているのか、なぜ盗んだのかは徐々に明らかになるが、少年の過去は謎めいている。死んだおばあちゃんはどうして彼に読み書きを教えなかったの?彼が青年になってもサンディーノが執拗に追ってくる理由は?本人も知らない秘密がありそうで、「この少年、ホントは何者?」という疑問に、読者は最後まで引っ張られてゆく。

初恋と友情。だが身につけた小袋の中身は、彼の周辺に取り返しのつかぬ災厄をもたらす。苦悩とともに成長してゆく少年を支えるのは、レオナルド・ダ・ヴィンチと工房スタッフの温かな愛情だ。当時の芸術、医術、科学はレオナルド・ダ・ヴィンチを見つめる少年の目を通して描かれ、特に「モナリザ」制作の逸話には胸打たれる。またチェーザレとルクレツィアのボルジア家兄妹をはじめ歴史上の有名人を登場させ、芸術家のパトロンとしての大公家の様子や、都市国家だったイタリア半島が抱える苦悩をわかりやすく伝えている。

芸術が花開くと共に戦乱相次ぐ歴史的背景が、見事に生かされた物語と言えよう。当時の結婚事情までわかっちゃうハッピーエンドには心が和む。

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Wings to fly
Wings to fly さん本が好き!免許皆伝(書評数:862 件)

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この書評へのコメント

  1. 星落秋風五丈原2016-05-02 23:07

    こんばんは。私も読みました。ルネサンス期のイタリアは高校の頃に塩野七生さんのチェーザレ・ボルジアや神の代理人を読んだので結構好きです。

  2. Wings to fly2016-05-03 08:56

    星落秋風五丈原さん
    ルクレツィアが印象的でしたね。しかしこの時代の混乱ぶりはヒドイ!マキャベリも出てきましたが、なんで彼が「君主論」を書いたのか理解できたような気がします(笑)

  3. No Image

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