雅也-カヤ-さん
レビュアー:
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逃げてなにが悪い!!

くにさきみさと、レンタルビデオ店にてアルバイト従業員、札幌市琴似在住。
常時マスク着用のため自称“口裂け”。
この物語は過去のトラウマからマスクなしでは生きていけない
色々こじらせちゃった系主人公「口裂け」がなんとか引きこもり生活を脱し、
学生時代のトラブルメーカーの先輩や引きこもりの元友人、
意地悪なアルバイト先の後輩たち個性的な面々に揉まれつつも
彼らとの関係を再構築していくことで己の過去と向き合い成長していく青春物語。
だったはず、なんですけどね。途中までは。
物語はすすむにつれて通常の軌道をそれていく。
そして、最後の最後には青春なんかはじけとんで木っ端微塵だ。
ああ、びっくりした。
びっくりしすぎて読みながら笑っていた。
予想外の結末に読後、第一声はなんじゃこりゃ。
しかし、読み終えて、落ち着いてくると、なんか「くる」のだ。
なにかがじわじわと押し寄せてくる。
グサっとくる。
正直、面白いかと問われれば劇的なストーリー展開があるわけでもなく
どちらかというと退屈で、主人公の淀んだ内面の葛藤は
エンドレスで繰り返され正直鬱陶しいことこの上ない。
しかし、読み終えた者の心に訴えかけてくるものが間違いなくある。
これまでの読書で私の中では面白い=心に響くという公式が成立していたのだが
本書を読んで初めて面白いことと心に響くことは違うということを思い知った。
物語のラストは読者の中では賛否両論らしく、
めでたしめでたし、なんて綺麗にはいかない。
主人公にとっても、読者にとっても、甘い終わり方はしない。
家族からも友人からも自分に手を差し伸べた人たちからも逃げた「口裂け」。
でも、それが普通なんだと思う。
今まで読んできた本の主人公たちはあまりにも勇猛果敢に前に向かっていきすぎた。
口裂けは逃げたけども、逃げた後にも彼女の人生は続いていく。
続くために逃げた。
自分自身を再生するために。
逃げてなにが悪い。捨ててなにが悪い。
逃げることで失うものもあるだろう。
その覚悟さえ出来てるなら逃げたっていいだろう。
言い訳にも聞こえるかもしれないけれど逃げるのにも勇気はいるんだろう。
そこで、ようやくこの本のタイトルにいきつく。
ああ、だから、「厭世」マニュアルなんだ、と。
「大丈夫だから」「生きていけるから」
作中で登場する少女に向けた口裂けの台詞だ。
だけど、それは同時に読む者にも向けられた台詞なのかもしれない。
この口裂けの叫びが今も私の中で爽快感にも似た不思議な余韻を残している。
常時マスク着用のため自称“口裂け”。
この物語は過去のトラウマからマスクなしでは生きていけない
色々こじらせちゃった系主人公「口裂け」がなんとか引きこもり生活を脱し、
学生時代のトラブルメーカーの先輩や引きこもりの元友人、
意地悪なアルバイト先の後輩たち個性的な面々に揉まれつつも
彼らとの関係を再構築していくことで己の過去と向き合い成長していく青春物語。
だったはず、なんですけどね。途中までは。
物語はすすむにつれて通常の軌道をそれていく。
そして、最後の最後には青春なんかはじけとんで木っ端微塵だ。
ああ、びっくりした。
びっくりしすぎて読みながら笑っていた。
予想外の結末に読後、第一声はなんじゃこりゃ。
しかし、読み終えて、落ち着いてくると、なんか「くる」のだ。
なにかがじわじわと押し寄せてくる。
グサっとくる。
正直、面白いかと問われれば劇的なストーリー展開があるわけでもなく
どちらかというと退屈で、主人公の淀んだ内面の葛藤は
エンドレスで繰り返され正直鬱陶しいことこの上ない。
しかし、読み終えた者の心に訴えかけてくるものが間違いなくある。
これまでの読書で私の中では面白い=心に響くという公式が成立していたのだが
本書を読んで初めて面白いことと心に響くことは違うということを思い知った。
物語のラストは読者の中では賛否両論らしく、
めでたしめでたし、なんて綺麗にはいかない。
主人公にとっても、読者にとっても、甘い終わり方はしない。
家族からも友人からも自分に手を差し伸べた人たちからも逃げた「口裂け」。
でも、それが普通なんだと思う。
今まで読んできた本の主人公たちはあまりにも勇猛果敢に前に向かっていきすぎた。
口裂けは逃げたけども、逃げた後にも彼女の人生は続いていく。
続くために逃げた。
自分自身を再生するために。
逃げてなにが悪い。捨ててなにが悪い。
逃げることで失うものもあるだろう。
その覚悟さえ出来てるなら逃げたっていいだろう。
言い訳にも聞こえるかもしれないけれど逃げるのにも勇気はいるんだろう。
そこで、ようやくこの本のタイトルにいきつく。
ああ、だから、「厭世」マニュアルなんだ、と。
「大丈夫だから」「生きていけるから」
作中で登場する少女に向けた口裂けの台詞だ。
だけど、それは同時に読む者にも向けられた台詞なのかもしれない。
この口裂けの叫びが今も私の中で爽快感にも似た不思議な余韻を残している。
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■ 登録日 2012/07/26
■2024年 近況■
某サイトで読んだり、備忘録的に記したり、
BLソムリエとしても色々楽しく参加中。
【めも】
2013/4/14 50書評 到達。
2013/11/19 100書評 到達。
2014/10/26 150書評 到達。
2019/1/15 200書評 到達!
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- 出版社:KADOKAWA/角川書店
- ページ数:284
- ISBN:9784041033845
- 発売日:2015年09月02日
- 価格:1512円
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