かもめ通信さん
レビュアー:
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一つ一つの作品は数ページと短くて“ポケットのなか”に詰め込めそうだが、トータルではかなりのシリとボリューム。それもそのはず、この本には11カ国49人もの著者の詩、小説、エッセイが収録されているのだ。
年中本ばかり読んでいると思われがちな私だが、
時には公私ともに慌ただしい日が続き
ゆっくりと時間をとって読書にいそしむことができないという時もある。
そんなときにかぎって読書熱は高くなるのが常で
長年の経験からこういうときは無理に長編に取り組まず
新たな出会いに期待して、どこから読んでもかまわない
それでいて後々の読書欲を刺激するような
アンソロジーを読むのがいいことを知っている。
そんなわけで読んでみたのが
気になってはいたものの、まだ読んでいなかったこの本だ。
一つ一つの作品は、数ページと短くて
まさに“ポケットのなか”に詰め込めそうなものばかりだが、
本自体は解説も入れると550ページを越えるボリュームがある。
それもそのはず、この本には
ポーランド、チェコ、スロヴァキア、ハンガリー、クロアチア、ボスニア、
マケドニア、ブルガリア、ベラルーシ、グルジアの
49人もの著者の詩、小説、エッセイが収録されているのだ。
(※収録作品と著者&訳者は書誌情報に掲載しておいた。)
更につけ加えると、参加している翻訳者も総勢41人、
ベテランの翻訳家からこれが翻訳デビューという若手までさまざまだ。
4年がかりで編まれたというこのアンソロジーは
『外国語上達法』や“チャペック”や“クンデラ”の翻訳で知られた言語学者、
故千野栄一さんにゆかりのある人達が
“故人を偲びその業績を讃える”ためにつくったものなのだそうだ。
ああ、だから『ポケットのなかの…』なのか!と
その昔、私がチャペックを知るきっかけとなった千野氏のエッセー
『ポケットのなかのチャペック』を思い出す。
思い出と感慨にふけりながらページをめくると……
「いやー!!なにこれ信じられない!!」と思わず叫びたくなった?!
フラバルやオルガ・トカルチュク、あるいはボジェナ・ニェムツォヴァーなど
日本にも知られた作家の作品に読み応えがあるのは当たり前として
東欧にはこんなにも才能溢れる人達がひしめいていたのかと
思わず自分の無知を恥じ入る。
これで、この方面にはちょっとは詳しいつもりでいたとはね?!
ブルガリア民話版の“蛙の花嫁”に驚いて、
ポーランドの詩人マリア・コモルニツカの見事に研ぎ澄まされた文章にうっとり。
ヴァツワフ・シェロシェフスキの「和解」はなんと今昔物語の翻案小説で、
ハーンが英語で綴った物語がドイツ語翻訳され、
さらにポーランド語で語りなおされているという
まさに世界を旅しながら少しずつ形を変えた“夫の裏切り”物語?!
「クロアチアのアンデルセン」と呼ばれているという
イヴァーナ・ブルリッチ=マジュラニッチ収録作品は
なんだか浦島太郎の様な話だとおもいきや……予想の斜め上を行く展開にびっくり!
ハンガリーのカフカ・マルギット「淑女の世界」にはすっかり惚れ込んだ。
この作家の作品は2、3の小品しか翻訳されていないようだけれど
残りの作品も探しだそう!と決意する。
チェコのルドヴィーク・アシュケナージが描く「子供のエチュード」は
父が語る幼い息子の世界は無邪気であどけなく純粋で美しい。
しみじみといいなあ。これも。
ブルガリアの作家ボヤン・ボルガルの「日本への旅」は
1956年の日本訪問記からの抜粋なのだが、
なんと当時大学生だった千野栄一先生が登場する!
本当に体当たりで語学を習得していったんだなあと、
思いながらなんだか泣けてきてしまった。
グルジアのラシャ・タブカシュヴィリの書くお話は、
お友達の家におばあちゃんを送っていって、
結局老夫人ばかりの年越しの集まりにつきあってしまう孫の視点から。
ロウジンスキーの私にはたまらない!
“宛て名どおりに手紙が届かないことはわかっている。でも、せめて…”と始まる
ブランコ・チョピッチ(ボスニア)の「親愛なるジーヤ」は、
ああ、そういう手紙だったのか……!
それからヴラディミール・デヴィデ!
いやいやびっくり!クロアチアに俳句をたしなむ数学教授がいたとはね!
と、数え上げればキリがない。
順番通り読まなくてもいい。
全部読まなくてもいい。
でもきっとパッと開いたページは、どこかの誰かの心の中の物語に繋がっている!
そんな本だった。
時には公私ともに慌ただしい日が続き
ゆっくりと時間をとって読書にいそしむことができないという時もある。
そんなときにかぎって読書熱は高くなるのが常で
長年の経験からこういうときは無理に長編に取り組まず
新たな出会いに期待して、どこから読んでもかまわない
それでいて後々の読書欲を刺激するような
アンソロジーを読むのがいいことを知っている。
そんなわけで読んでみたのが
気になってはいたものの、まだ読んでいなかったこの本だ。
一つ一つの作品は、数ページと短くて
まさに“ポケットのなか”に詰め込めそうなものばかりだが、
本自体は解説も入れると550ページを越えるボリュームがある。
それもそのはず、この本には
ポーランド、チェコ、スロヴァキア、ハンガリー、クロアチア、ボスニア、
マケドニア、ブルガリア、ベラルーシ、グルジアの
49人もの著者の詩、小説、エッセイが収録されているのだ。
(※収録作品と著者&訳者は書誌情報に掲載しておいた。)
更につけ加えると、参加している翻訳者も総勢41人、
ベテランの翻訳家からこれが翻訳デビューという若手までさまざまだ。
4年がかりで編まれたというこのアンソロジーは
『外国語上達法』や“チャペック”や“クンデラ”の翻訳で知られた言語学者、
故千野栄一さんにゆかりのある人達が
“故人を偲びその業績を讃える”ためにつくったものなのだそうだ。
ああ、だから『ポケットのなかの…』なのか!と
その昔、私がチャペックを知るきっかけとなった千野氏のエッセー
『ポケットのなかのチャペック』を思い出す。
思い出と感慨にふけりながらページをめくると……
「いやー!!なにこれ信じられない!!」と思わず叫びたくなった?!
フラバルやオルガ・トカルチュク、あるいはボジェナ・ニェムツォヴァーなど
日本にも知られた作家の作品に読み応えがあるのは当たり前として
東欧にはこんなにも才能溢れる人達がひしめいていたのかと
思わず自分の無知を恥じ入る。
これで、この方面にはちょっとは詳しいつもりでいたとはね?!
ブルガリア民話版の“蛙の花嫁”に驚いて、
ポーランドの詩人マリア・コモルニツカの見事に研ぎ澄まされた文章にうっとり。
ヴァツワフ・シェロシェフスキの「和解」はなんと今昔物語の翻案小説で、
ハーンが英語で綴った物語がドイツ語翻訳され、
さらにポーランド語で語りなおされているという
まさに世界を旅しながら少しずつ形を変えた“夫の裏切り”物語?!
「クロアチアのアンデルセン」と呼ばれているという
イヴァーナ・ブルリッチ=マジュラニッチ収録作品は
なんだか浦島太郎の様な話だとおもいきや……予想の斜め上を行く展開にびっくり!
ハンガリーのカフカ・マルギット「淑女の世界」にはすっかり惚れ込んだ。
この作家の作品は2、3の小品しか翻訳されていないようだけれど
残りの作品も探しだそう!と決意する。
チェコのルドヴィーク・アシュケナージが描く「子供のエチュード」は
父が語る幼い息子の世界は無邪気であどけなく純粋で美しい。
しみじみといいなあ。これも。
ブルガリアの作家ボヤン・ボルガルの「日本への旅」は
1956年の日本訪問記からの抜粋なのだが、
なんと当時大学生だった千野栄一先生が登場する!
本当に体当たりで語学を習得していったんだなあと、
思いながらなんだか泣けてきてしまった。
グルジアのラシャ・タブカシュヴィリの書くお話は、
お友達の家におばあちゃんを送っていって、
結局老夫人ばかりの年越しの集まりにつきあってしまう孫の視点から。
ロウジンスキーの私にはたまらない!
“宛て名どおりに手紙が届かないことはわかっている。でも、せめて…”と始まる
ブランコ・チョピッチ(ボスニア)の「親愛なるジーヤ」は、
ああ、そういう手紙だったのか……!
それからヴラディミール・デヴィデ!
いやいやびっくり!クロアチアに俳句をたしなむ数学教授がいたとはね!
と、数え上げればキリがない。
順番通り読まなくてもいい。
全部読まなくてもいい。
でもきっとパッと開いたページは、どこかの誰かの心の中の物語に繋がっている!
そんな本だった。
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本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。
この書評へのコメント
- かもめ通信2016-06-20 06:15
実は未だにやってますw
ぜひ遊びに来て下さい!
「ホンノワ」テーマ: 本が好き!<ロシア・東欧>でお宝探し?
http://www.honzuki.jp/bookclub/theme/no137/index.html?latest=20クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 - かもめ通信2016-06-20 22:18
ん?たけぞうさん、図書館にはなかったかな?それとも厚さと重さに手が引っ込んだとか?ww
これ、はっきり言って、通勤途中などに持ち歩いては読めません。
ネオチも危険なレベルでしたww
他の本~というと、例えばこんな本だったり?
(実は次はコレをと狙っている本ですww)クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 - たけぞう2016-06-21 21:49
残念ながら、置いていなかったのでした。
かもめ通信さんはご自分で? リクエスト?
見つかったのは書影の本でして、少々古そうですがまずはそちらを読もうと思います。クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。 - クリックすると、GOOD!と言っているユーザーの一覧を表示します。

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- 出版社:成文社
- ページ数:558
- ISBN:9784915730566
- 発売日:2006年11月01日
- 価格:5400円
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