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かもめ通信
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花の24年組は昔乙女の憧れだった!1970年代を回想するあれこれを読んで思う。確かにモー様は天才かも知れないが、私は竹宮惠子に出会わなかったら、萩尾望都も知らないままに大人になったに違いない。
実を言うと私、こと漫画に関しては比較的オクテで、
初めて少女漫画を読んだのは小学校四年の冬休みだった。
出足が遅かった分、のめり込み方も半端じゃなく、
それから5年ほど漫画漬けになって
中学時代には仲間内で同人誌のようなものまで作っていたという
黒歴史を持っている。

その頃、夢中になっていた漫画家の一人が
“ケーコたん”こと竹宮惠子さんで
家が近かったこともあって、
あの窓の向こうでは……と、
漫画家志望だった友人と共に妄想を繰り広げもしたものだった。
(今思うと驚きだが当時は、漫画家の住所が公表(?)されていたのだ!)

『ファラオの墓』にも『風と木の詩』にも『変奏曲』にも『地球へ…』にも
作品の記憶と共に、読んだ当時の思い出がしみついているのだが、
まさかそういう作品を生み出す裏で
ケーコたんがこれほど苦しい想いを抱えていたとは思いも寄らなかった。

プロになることを決意して徳島から上京、
“大泉サロン”で萩尾望都さんとの共同生活をはじめ
いつか『風木』を描きたいと強く願いながらも
実現の目処が立たないことなどもあって
仕事に身が入らず、
人と自分を比較して落ち込み、
スランプに陥り、
やがて………。

美しい少年たちに熱を上げていたあの頃、
作者が抱えるこうした苦悩を知っていたら、
なにかが変わっただろうか……と考えてみて
あらためて気がついた。

おそらく私たち読者は知っていたのだ。
登場人物達がもがき苦しむあれこれに心を痛めながら、
繊細な少年たちの抱える苦悩は
そのまま作者の苦しみでもあるのだということを。
もちろんそれは具体的な事柄を知っていたという意味ではなかったが、
作品の中に作者のナイーブな内面を見いだしていたからこそ、
一見すると自分の住む世界とは全く重なることのない漫画の中の世界に
あれほど共鳴し胸を打たれたのに違いない。


<少女漫画関連レビュー>
『少女マンガで読み解く 乙女心のツボ』
『マンガのあなた SFのわたし 萩尾望都・対談集 1970年代編』
『なのはな: 萩尾望都作品集』
『総特集 三原順 少女マンガ界のはみだしっ子』
『小さな恋のものがたり第43集』
『ひとりぼっちの幸せ チッチ、年をとるほど、片思いは深くなるね』
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かもめ通信
かもめ通信 さん本が好き!免許皆伝(書評数:2238 件)

本も食べ物も後味の悪くないものが好きです。気に入ると何度でも同じ本を読みますが、読まず嫌いも多いかも。2020.10.1からサイト献本書評以外は原則★なし(超絶お気に入り本のみ5つ★を表示)で投稿しています。

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この書評へのコメント

  1. ef2016-04-12 06:35

    私は萩尾望都派ですよん(全集持ってたりして)。

  2. かもめ通信2016-04-12 06:42

    ぜ、全集?!幻想文学の棚に並んでいるとか?!
    私もモー様作品は愛蔵版を少しずつ買い足してはいるのですが……efさん、やっぱり次回のお引っ越しの際は、ひと棚北国でお預かりしましょうww

    ちなみに私は竹宮惠子→萩尾望都と読み進みました。
    たぶんモー様の作品は小学生にはちょっと難しかったのだと思います。

  3. ef2016-04-12 07:27

    あぁ、全集じゃないですね。その愛蔵版というのですか、それですよ。

  4. タカラ~ム2016-04-12 10:11

    この本、気になってました。

    けど私、竹宮恵子も萩尾望都も読んだことないんですよね。24年組というのもよく知らないんですけどね。
    でも、ちょっと興味があります。何か読んでみたいけど、初心者にオススメの作品ってなんですか?

    萩尾望都といえば、今ちょうど武蔵野市立吉祥寺美術館で「萩尾望都SF原画展」開催中ですね。

    http://www.musashino-culture.or.jp/a_museum/exhibitioninfo/2016/02/post-138.html

  5. かもめ通信2016-04-12 11:44

    どひゃー!タカラ~ムさん!それを私に聞くの?!
    それは答えによって,熱烈ファンを敵に回す恐ろしい問いなのよ~ww

    とはいえ,聞かれたからには勇気を出して(!)お薦めしてみるわね?!

    この本のコンセプトからすると竹宮惠子作品でお薦めすべきは『風と木の詩』ということになるのでしょうが,これはね~おそらく初心者にはキツイです。おまけにコミック版で全17巻ぐらいになるかと……私も今のところいろんな意味で読み返す勇気はありません。(汗)
    なので『風木』に関しては,このたび一気読みをされたというそのじつさんのレビューを拝見して読んだ気になるのもテかとww

    比較的手軽に少年達の世界を知り,なおかつこの本の主な舞台となる“大泉サロン”を知るには『変奏曲』がお薦めかも。

    SF好きなら『地球へ…』も良いですよ~。

    って,いずれも1冊じゃすまないけどww

  6. かもめ通信2016-04-12 11:48

    続いて萩尾望都作品をww(もう止められないから続けてどうするというのはナシで!)
    『11人いる!』も大好きだけど,モー様の世界を知るための入門編としてはやっぱり,『ポーの一族』かしら?

  7. タカラ~ム2016-04-12 12:02

    かもめ通信さん

    > それは答えによって,熱烈ファンを敵に回す恐ろしい問いなのよ~ww

    そ、そうなんですか?
    あ、でも「熱烈ファン」が多い作家の場合、どの作品がオススメかっていうのは、確実にスイッチON!な質問ですねww

    さすがにいきなり全17巻は厳しいので、竹宮恵子作品なら「地球へ...」の方かなぁ〜
     ※そのじつさんのレビューに期待です!!

    「ポーの一族」は、名前聞いたことあります!
    そういえば、このあいだドラマやってませんでしたっけ?と思って「ポーの一族 ドラマ」で検索したら、いきなりトップに、

     ・「ポーの一族」原案ドラマに怒り殺到(http://r25.jp/entertainment/00047907/

    ってのが出てきました(笑)

    これも、「熱烈ファン」のスイッチONしちゃった典型例でしょうね。

  8. かもめ通信2016-04-12 13:49

    ちなみに,この本を読んでから,それぞれの作品に手を伸ばすというのもアリだと思います。
    というのも,描かれた背景や,それぞれの作品を竹宮惠子さんがどうとらえているかというのも読む作品を選ぶ上でポイントになり得るかも。

  9. たけぞう2016-04-12 20:16

    わたしはさらりと書かれた黒歴史のほうが気になって。。(すみません

  10. かもめ通信2016-04-12 20:45

    たけぞうさん、それはその私のどうしても消し去りたい過去をお聞きになりたいということかしら?
    えーと、そのー、より具体的に公言する決心はまだ~(汗

  11. トムタン2016-04-12 22:43

    この本、少し前に読みました。夫が注文して取り寄せたのを借りて読んだ、と言う異例の読書(≧∇≦)
    『風木』に夢中になった時代はあっても、家庭事情があって小学生の頃から漫画を家では禁止(サザエさんと小恋は別)されたまま成長したので、結婚してから恵子様やモー様の作品を夫のコレクションから借りると言う…。なのでこの本は、竹宮恵子の自叙伝として読みました。…で、私もかもめ通信様の黒歴史の方が、ズううっと気になります!(*^^*)

  12. かもめ通信2016-04-13 06:12

    トムタンさん、良い趣味をおもちの相方さんでうらやましいわあ。
    うちなんかこのテの本を読んでいると、横からぶつぶつ文句を言われそうで、ついついコソコソww

    それにしても黒歴史にそんなに反響があろうとは…(汗)

  13. ふらりん2016-04-18 21:26

    漫画家さんの住所って書いてありましたよね。例えば
    小恋の若い巻数の方は、著者の住所が書いてありましたし。

    だけど、当時は近くてもなかなか行けない環境だったのでは
    ないでしょうか?かもめ通信さんのように
    「あの窓の向こうでは・・」という方が多かったのかも知れません。

  14. かもめ通信2016-04-19 06:31

    ふらりんさん
    実際、この本の多くを占める大泉サロンでは、ファンレターを吟味してどのファンを招待するか決めていたそうです。
    竹宮さんの場合は、さすがに巻末に住所…はなかったとおもいますがw
    ファンクラブの活動も活発だったので、抜け駆けはダメって雰囲気もあったような。
    どこかに会報が数号とってあったはずだけど……と探したのですが、どこにしまいこんだんだか……ww

  15. らいまお20152016-04-19 14:47

    お邪魔いたします。
    今週の書評ランキング1位、を見て、思わず涙が❗

    24年組が大活躍だった当時に少女時代を過ごせたことは、今もとても幸運だったと思っている一人です。竹宮恵子は、やはりジルベール、萩尾望都は、私のNo.1は、「トーマの心臓」です。今もずっとそうです。その後私は、大島弓子にどっぷり浸かりました。ご存知かもしれませんが、橋本治が70年代の少女漫画評論を書いています。萩尾様をはじめとした少女漫画家さんを数名、詳しい解説しています。「花咲く乙女たちのキンピラゴボウ」(河出文庫)
    これにここ半月ほどはまり、まさに今、当時の少女漫画を再読しています☺

    かもめ通信さんの同人誌活動、とっても興味あります☺
    長々とすみません。

  16. かもめ通信2016-04-19 18:47

    ややっ!らいまお2015さん!そこ,涙するところじゃないですから!(汗)

    >24年組が大活躍だった当時に少女時代を過ごせたことは、今もとても幸運だった
    ですね!ですね!!私も本当にそう思います。
    「花咲く乙女たちのキンピラゴボウ」は知らなかったのですが,只今私も往年の少女漫画再読の呪いにかかっていますよ~(><)

    ちなみに,私の黒歴史の方は同人誌と胸を張れるほどのしろものではなくてですね。
    ほらそのなにしろ中学生のすることですし,当時は今みたいに一家に一台プリンタとか,歩けばコンビニそこにはコピー機みたいな時代ではなかったものですからね……本当に情けないようなあれこれで……ああなんで私,こんな話題,ふっちゃったんだろう……消し去りたい過去なんですよww

  17. らいまお20152016-04-19 19:37

    ちなみに、少女漫画を捨てないでいた女が母になると、約50%の確率で、オタクあるいは腐女子が育ちます。我が三十路娘は一人が、そのように。

    でも、私が掴めないコアな情報をたまに見つけてくれます。

    大島弓子は全集買っておいたからよかったんですが絶版がどうしてもありますよね。
    もっと少女漫画が注目されて、復刊されることを願うばかりです。私も、この本、ぜひとも読んでみたい!ありがとうございます。

  18. No Image

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