hackerさん
レビュアー:
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これは逆『レベッカ』かな、と思いつつ読み進めましたが、しっかりミステリーでした。
これも、かもめ通信さん主催の「#やりなおし世界文学 読書会」で指定されている本です。読むのは初めてでした。津村記久子さんの『やりなおし世界文学』が元になっている読書会ですが、一人一作が大半なのに、クリスティー作品は本書と『パーカー・パイン登場』の二冊が指定されています。共に、クリスティーの大ファンの方でないと、読んでいないと思われる作品であるのが特徴です。少なくとも、クリスティーの代表作と問われて、長編謎解きミステリーでない、この二冊をあげる方は珍しいでしょう。
本書のストーリーは、他の方の書評でも紹介されているので、詳しくは語りませんが、職業を転々とし、落ち着かない世渡りをしているイギリス下層階級出の一人称の主人公マイケル・ロジャーズが、父親の遺産のおかげで、大富豪となっている21歳のエリーに偶然出会い結婚するところから始まります。そして、二人が出会った古い屋敷のある土地を買い取って、そこに主人公が理想とする家を建て、二人で住み始めます。ところが、この土地は古くから、土地を追われたジブシーの呪いがかかっているという言い伝えがあり、また、エリーが頼りにしているグレタという世話係がいて、傍から見ると、彼女はエリーのマインド・コントローラーのようだったのです。
最初これは逆『レベッカ』だなと思いながら読んでいました。つまり、『レベッカ』のヒロインを男性に置き換えた話で、物語の舞台が「ジプシーが丘」と名づけられた家というのも、スケールは違いますが『レベッカ』の舞台「マンダレー」を連想しますし、グレタの金持ちの世話係という仕事も『レベッカ』のヒロインがしていたものでした。マインド・コントローラーの存在というのも、『レベッカ』の影響を感じます。
ですが、やはりクリスティーです。事件は全体の三分の二をすぎてから起こり、ラストで全容が分かると、相応の伏線が張ってあったことが分かります。ただ、謎解きミステリーではありませんから、フェアというわけではありません。ネタバレにならない程度に言うと、『レベッカ』+クリスティー自身の某作+フランシス・アイルズの某作という作品です。これだけでも、分かる人には分かってしまうかもしれませんが。
本書の発表は1967年、クリスティーの長編は66作ありますが、執筆順では60番目となります。クリスティーは1890年生まれですから、晩年に書かれた作品であり、ミステリーとしてのオリジナリティーには欠けるかもしれませんし、代表作とは言いにくいですが、彼女の円熟味が味わえる作品だと思います。
なお、かもめ通信さんが書いておられますが、原題 "Endless Night" を「終りなき夜に生れつく」という邦題にしたのは、素晴らしいと思います。実は、これは内容を反映した邦題です。それと、表紙ですが、こちらもネタバレ気味ではあります。読んだ後でないと気づかないのが普通だとは思いますが。
本書のストーリーは、他の方の書評でも紹介されているので、詳しくは語りませんが、職業を転々とし、落ち着かない世渡りをしているイギリス下層階級出の一人称の主人公マイケル・ロジャーズが、父親の遺産のおかげで、大富豪となっている21歳のエリーに偶然出会い結婚するところから始まります。そして、二人が出会った古い屋敷のある土地を買い取って、そこに主人公が理想とする家を建て、二人で住み始めます。ところが、この土地は古くから、土地を追われたジブシーの呪いがかかっているという言い伝えがあり、また、エリーが頼りにしているグレタという世話係がいて、傍から見ると、彼女はエリーのマインド・コントローラーのようだったのです。
最初これは逆『レベッカ』だなと思いながら読んでいました。つまり、『レベッカ』のヒロインを男性に置き換えた話で、物語の舞台が「ジプシーが丘」と名づけられた家というのも、スケールは違いますが『レベッカ』の舞台「マンダレー」を連想しますし、グレタの金持ちの世話係という仕事も『レベッカ』のヒロインがしていたものでした。マインド・コントローラーの存在というのも、『レベッカ』の影響を感じます。
ですが、やはりクリスティーです。事件は全体の三分の二をすぎてから起こり、ラストで全容が分かると、相応の伏線が張ってあったことが分かります。ただ、謎解きミステリーではありませんから、フェアというわけではありません。ネタバレにならない程度に言うと、『レベッカ』+クリスティー自身の某作+フランシス・アイルズの某作という作品です。これだけでも、分かる人には分かってしまうかもしれませんが。
本書の発表は1967年、クリスティーの長編は66作ありますが、執筆順では60番目となります。クリスティーは1890年生まれですから、晩年に書かれた作品であり、ミステリーとしてのオリジナリティーには欠けるかもしれませんし、代表作とは言いにくいですが、彼女の円熟味が味わえる作品だと思います。
なお、かもめ通信さんが書いておられますが、原題 "Endless Night" を「終りなき夜に生れつく」という邦題にしたのは、素晴らしいと思います。実は、これは内容を反映した邦題です。それと、表紙ですが、こちらもネタバレ気味ではあります。読んだ後でないと気づかないのが普通だとは思いますが。
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「本職」は、本というより映画です。
本を読んでいても、映画好きの視点から、内容を見ていることが多いようです。
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- 出版社:早川書房
- ページ数:347
- ISBN:9784151310959
- 発売日:2011年10月07日
- 価格:907円
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