三太郎さん
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川上弘美による様々な恋についての短編集。
川上さんが2011年に出した、7編からなる短編集。やはり短編集の「パスタマシーンの幽霊」 の一年後の作品だ。若い女性が主人公のお話が多い。いくつか紹介します。
一実ちゃんのこと
主人公が予備校で出会った友達が一実ちゃんだ。彼女も同じ予備校生だが、ある日の昼休みに駅のそばの牛丼屋に入ろうとしたら一実ちゃんに声をかけられた。二人揃って「つゆだく大盛」を注文した。一実ちゃんはこれまで牛丼を食べたことがなかったが、その理由は・・・ちょっと奇妙な話だった。一実ちゃんは姉のクローンとして代理母から生まれたので、クローン牛を食べることができなかったという。
(食用のクローン牛は1993年から出荷されているというが、牛丼にはなっていないのでは、と思ったのですが。ただしこれは受精卵クローンで一実ちゃんのような体細胞クローンではないはず。)
遺伝子工学者の父親が、妻が亡くなったのを悲しみ、一人娘の実加ちゃんのお尻の細胞をとって人のクローンを作ったという。違法だと思うけれど。一実ちゃんの後にもう二人作って、それが二実ちゃんと三実ちゃんなのだと。四姉妹はクローンだけれど年齢が違うのでみかけも異なるとか。川上さんらしい奇妙なシチュエーションだ。
金と銀
当時五歳だった瑛子は十六歳のハトコの治樹にひいおばあちゃんの葬儀で初めて出会う。小学六年生のころ、二人は夏の海に行く。瑛子がゴムボートに乗り治樹が押して、二人は沖の方に出る。ブイにボートをつないで二人で海に入り、仰向けに大の字になって海に浮かんだ。この部分を読んでいて、僕は漱石の「こころ」の先生と私が鎌倉の海で泳ぐシーンを思い出していた。
その後、治樹は画家を志し、結婚し離婚し、絵が売れ出してからスランプになる。最後に二人が会ったのは瑛子が大学を卒業した後のこと。おれ、瑛子ちゃんのこと好きだから、こわくなる、と治樹は言い、その後失踪した。瑛子には時々海外からハガキが届く。
天頂より少し下って
主人公は中年の女性。バツイチで大学を出たばかりの息子が一人いる。三年前から年下の恋人と付き合っているが、今でも彼が好きなのかどうか解らない、などと時々思う。昔付き合っていた男たちのことも何も思い出せない(一人だけ性器の大きい男がいたことだけは思い出せる)。
恋人とホテルに寄ってから帰宅すると、息子がふさぎ込んでいる。彼女に振られたらしい。主人公は息子がマザコンだったらいいのに、などと思う。息子のことも恋人のことも好きだな、不埒だな、などと彼女は思う。
一実ちゃんのこと
主人公が予備校で出会った友達が一実ちゃんだ。彼女も同じ予備校生だが、ある日の昼休みに駅のそばの牛丼屋に入ろうとしたら一実ちゃんに声をかけられた。二人揃って「つゆだく大盛」を注文した。一実ちゃんはこれまで牛丼を食べたことがなかったが、その理由は・・・ちょっと奇妙な話だった。一実ちゃんは姉のクローンとして代理母から生まれたので、クローン牛を食べることができなかったという。
(食用のクローン牛は1993年から出荷されているというが、牛丼にはなっていないのでは、と思ったのですが。ただしこれは受精卵クローンで一実ちゃんのような体細胞クローンではないはず。)
遺伝子工学者の父親が、妻が亡くなったのを悲しみ、一人娘の実加ちゃんのお尻の細胞をとって人のクローンを作ったという。違法だと思うけれど。一実ちゃんの後にもう二人作って、それが二実ちゃんと三実ちゃんなのだと。四姉妹はクローンだけれど年齢が違うのでみかけも異なるとか。川上さんらしい奇妙なシチュエーションだ。
金と銀
当時五歳だった瑛子は十六歳のハトコの治樹にひいおばあちゃんの葬儀で初めて出会う。小学六年生のころ、二人は夏の海に行く。瑛子がゴムボートに乗り治樹が押して、二人は沖の方に出る。ブイにボートをつないで二人で海に入り、仰向けに大の字になって海に浮かんだ。この部分を読んでいて、僕は漱石の「こころ」の先生と私が鎌倉の海で泳ぐシーンを思い出していた。
その後、治樹は画家を志し、結婚し離婚し、絵が売れ出してからスランプになる。最後に二人が会ったのは瑛子が大学を卒業した後のこと。おれ、瑛子ちゃんのこと好きだから、こわくなる、と治樹は言い、その後失踪した。瑛子には時々海外からハガキが届く。
天頂より少し下って
主人公は中年の女性。バツイチで大学を出たばかりの息子が一人いる。三年前から年下の恋人と付き合っているが、今でも彼が好きなのかどうか解らない、などと時々思う。昔付き合っていた男たちのことも何も思い出せない(一人だけ性器の大きい男がいたことだけは思い出せる)。
恋人とホテルに寄ってから帰宅すると、息子がふさぎ込んでいる。彼女に振られたらしい。主人公は息子がマザコンだったらいいのに、などと思う。息子のことも恋人のことも好きだな、不埒だな、などと彼女は思う。
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1957年、仙台に生まれ、結婚後10年間世田谷に住み、その後20余年横浜に住み、現在は仙台在住。本を読んで、思ったことあれこれを書いていきます。
長年、化学メーカーの研究者でした。2019年から滋賀県で大学の教員になりましたが、2023年3月に退職し、10月からは故郷の仙台に戻りました。プロフィールの写真は還暦前に米国ピッツバーグの岡の上で撮ったものです。
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- 出版社:小学館
- ページ数:216
- ISBN:9784094060638
- 発売日:2014年07月08日
- 価格:551円
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