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ぷるーと
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雪沼とその周辺に暮らす人々を描いた連作短編集。
中部地方の山間に雪沼はある。車で行けばさほど遠くないところに市街地があり、過疎というほどではないがこぢんまりした小さな町のようだ。
『雪沼とその周辺』は、そんな雪沼とその周辺に暮らす人々を描いた7つの短編からなる。
 
「スタンス・ドット」は、雪沼に通じる道沿いにあるボウリング場が舞台。作中ボウリング場の主人が「雪沼まで車で一時間」と言っているから、題が「・・その周辺」となったのだろう。7つの短編につながりはないが、登場する人物や場所が淡く絡みあっている。あとの話によるとボウリング場の主人の亡くなった妻が雪沼の料理教室に通っていたらしく、そういった意味でこの作品も雪沼に淡くつながっているといえる。

「スタンス・ドット」「河岸段丘」「レンガを積む」は、どれも機械との密接な繋がりが描かれている。これらの登場人物たちにはとても大切にしている機械があって、その大切な機械とともに生きている。「河岸段丘」と「レンガを積む」はまだその機械と一緒に過ごすのだが、「スタンス・ドット」の主人公はボウリング場を閉めたあと大丈夫だろうかと、ちょっと心配だ。

雪沼に住む人々は、静かで穏やかに暮らしている。そんな静かな生活の中に訪れる転機が、訥々と描かれている。登場人物たちの中には悲しい別れを経験した人たちもいて、過去が現在の生活の背後に淡く透けて見える。そこには、余韻のようなものが流れている。

7つの話を読み終わって、ふと思った。ボウリング場で最後のゲームをした若い男女は、雪沼の誰に会いに行ったのだろうか、と。
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ぷるーと
ぷるーと さん本が好き!1級(書評数:2932 件)

 ホラー以外は、何でも読みます。みなさんの書評を読むのも楽しみです。
 よろしくお願いします。
 

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