DBさん
レビュアー:
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ディストピアの中の話
オーシャンクロニクルの最新刊を読んだのですが、それまでの内容をすっかり忘れていることに気づいたので再読です。
表題作となる「魚舟・獣舟」がオーシャンクロニクルの世界のはじまりだ。
陸のほとんどが海に没したディストピアの世界で、人類は自らのDNAを操作することで生き延びていた。
海で生活することにした海上民は出産の際に双子を産む。
人型の子供は普通に育てて、片割れとなる魚型の子供は海へ流す。
そして十年後くらいに巨大化した魚型の片割れは自分の群れの元へと戻ってきて、その時自分の兄弟に出合えたものが魚舟という生きた舟となって共に生活するという世界だ。
だが自分の兄弟に会えなかった魚型の子供は獣舟となって陸上を目指し、そこで資源を食い荒らす存在となっていた。
そんな獣舟の中の一体を自らの片割れだと信じて執着する女と、その幼馴染であり海を捨てた男との交差する時間を描いた作品だ。
短い中に独特の世界観が盛り込まれ、心理描写も書き込まれたドラマチックな短編だった。
続く「くさびらの道」はこの短編集の中で一番印象に残っている話だった。
オーリ症という感染症が蔓延した日本を描いた話で、感染するとキクラゲのような寄生茸に全身を食い尽くされて一週間以内に死亡する。
最初のうちは抗真菌剤が効果があったが、すぐに耐性菌が現れて日本を侵食していった。
しかも胞子で感染していくのだが、胞子だけでなく特殊な毒素も放出して親しい人間の幽霊を見せて次なる被害者を呼び寄せるという。
これを映像で見たらキクラゲを食べれなくなりそうなくらい衝撃的な作品だった。
「真朱の街」も短いながらに特殊な設定の空間を見事に描き出した作品だ。
もともとは医療特区として様々な実験をするためのエリアだった街に、なぜか妖怪たちが現れる。
妖怪が街を闊歩し店を開くという不思議な街ですが、そんな中で亡くなった友人の娘を探す男の苦悩を描いていた。
音を拾って成長するブルー・グラスの話は、主人公の趣味であるダイビングと過去の恋愛を絡めてまとめてあった。
音を姿に閉じ込めるという発想よりは、誰もがひとつくらいは持っている過去の思い出を追想するという意味で面白かった。
ここまではなかなかシュールな仮想未来の話として楽しめたのだけど、最後のシリアル・キラーの話はどうも乗り切れませんでした。
どこかで見たことある世界をくっつけたような気がしたからかも。
表題作となる「魚舟・獣舟」がオーシャンクロニクルの世界のはじまりだ。
陸のほとんどが海に没したディストピアの世界で、人類は自らのDNAを操作することで生き延びていた。
海で生活することにした海上民は出産の際に双子を産む。
人型の子供は普通に育てて、片割れとなる魚型の子供は海へ流す。
そして十年後くらいに巨大化した魚型の片割れは自分の群れの元へと戻ってきて、その時自分の兄弟に出合えたものが魚舟という生きた舟となって共に生活するという世界だ。
だが自分の兄弟に会えなかった魚型の子供は獣舟となって陸上を目指し、そこで資源を食い荒らす存在となっていた。
そんな獣舟の中の一体を自らの片割れだと信じて執着する女と、その幼馴染であり海を捨てた男との交差する時間を描いた作品だ。
短い中に独特の世界観が盛り込まれ、心理描写も書き込まれたドラマチックな短編だった。
続く「くさびらの道」はこの短編集の中で一番印象に残っている話だった。
オーリ症という感染症が蔓延した日本を描いた話で、感染するとキクラゲのような寄生茸に全身を食い尽くされて一週間以内に死亡する。
最初のうちは抗真菌剤が効果があったが、すぐに耐性菌が現れて日本を侵食していった。
しかも胞子で感染していくのだが、胞子だけでなく特殊な毒素も放出して親しい人間の幽霊を見せて次なる被害者を呼び寄せるという。
これを映像で見たらキクラゲを食べれなくなりそうなくらい衝撃的な作品だった。
「真朱の街」も短いながらに特殊な設定の空間を見事に描き出した作品だ。
もともとは医療特区として様々な実験をするためのエリアだった街に、なぜか妖怪たちが現れる。
妖怪が街を闊歩し店を開くという不思議な街ですが、そんな中で亡くなった友人の娘を探す男の苦悩を描いていた。
音を拾って成長するブルー・グラスの話は、主人公の趣味であるダイビングと過去の恋愛を絡めてまとめてあった。
音を姿に閉じ込めるという発想よりは、誰もがひとつくらいは持っている過去の思い出を追想するという意味で面白かった。
ここまではなかなかシュールな仮想未来の話として楽しめたのだけど、最後のシリアル・キラーの話はどうも乗り切れませんでした。
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好きなジャンルは歴史、幻想、SF、科学です。あまり読まないのは恋愛物と流行り物。興味がないのはハウツー本と経済書。読んだ本を自分の好みというフィルターにかけて紹介していきますので、どうぞよろしくお願いします。
この書評へのコメント
2022-09-24 10:09(コメントは消去されました。)
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2022-09-24 10:09(コメントは消去されました。)
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- 出版社:光文社
- ページ数:331
- ISBN:9784334745301
- 発売日:2009年01月08日
- 価格:620円
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