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トムタン
レビュアー:
読んでもいない世界の名作『罪と罰』を読まずに語り合う!抱腹絶倒罰当たり?読書座談会。
とにかく面白かった。涙が出るほど笑った。小説に携わる仕事をしている4人が、宴会の片隅でヒソヒソとドストエフスキーの『罪と罰』を読んだことあるか?という話になった時、四人共読んだことがないことが発覚する。世界的に有名な作品にもかかわらず、全員手持ちの情報さえほどんど無い、とわかったところから「未読座談会」の企画が持ち上がる…。

一番最初のページと最後のページだけを読んで『罪と罰』を読んだことの無い4人が内容を推測する読書会。まるで江戸時代に象と言う動物を知らない盲目の人達が耳と鼻とシッポと脚を触って象について話し合うがごとき読書会。この「読まずに内容を読み取ろう読書会」は、途中でヒント的に希望のぺージを数カ所だけ読むこと、登場人物表もちょっと見ることがゆるされる。その度に起こるどよめき、嘆き、迷推理!もう、その面白さと言ったら!

座談会が始まり、最初のページが読まれると、ラスコリーニコフはまず、「超ニート野郎」とバッサリ。舞台のサンクトペテルブルクの情報は、『課長島耕作』ロシア編の記憶から。時代背景は江戸時代。ラスコリーニコフはその間に勝手に「ラスコ」と呼び捨てにされ、著者に至っては「ドスト」、途中ラスコリーニコフに自分を重ねているのでは、と「ドスコ」とまで呼ばれている。ソーニャの飲んだくれの父親マルメラードフはマメ父と略されて(マルメラードフのマはマゾのマ)なんぞとノートにメモられる始末。そしてラスコの友人ラズミーヒンはヒンと言う響きから馬扱いされそうになり、馬、馬、と呼ばれた挙句、明るく誠実な人柄なのに「修造」呼ばわりされて暑苦しいと言われる始末…(;^_^A

皆様お仕事が小説関係で創造的な頭脳の持ち主、と言う事もあるだろうが、全く読んでいない本でここまで面白い読書?会が出来るのか、と呆れるほど、抱腹絶倒の「読み」が繰り広げられる。そしてもう、出てくる登場人物は、皆さん好きなように言いたい放題。

が、後日全員が『罪と罰』を読んだ後で集まっての座談会。最初に全くかすりもしなかった登場人物の魅力を全員が挙げ、感想を述べるのを読んで『罪と罰』が読みたくなった。

そして、最後に三浦しをんさんが語る「読む」の始まりと終わりについての文章が最高に良かった。
「読んでいなくても「読む」は始まっているし、読み終えても「読む」は続いているのです。」読まない読書会を終えて、しをんさんはそう語る。

そう、読みたい本が山ほどある今、1ページも開いていなくてもそれらに愛と期待を膨らませる時、「読む」はもう始まっているのだ、そして本は待ってくれる。本好きであること、仲間がいることを改めて強く幸せだと感じる一冊でした。


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トムタン
トムタン さん本が好き!1級(書評数:200 件)

その時に読みたい!と思った本を読むので読書傾向は多国籍料理状態です。体調不良で寝たり起きたりしながら引きこもって在宅仕事(内職か?)を始めて一年余り。小説もコミックも自己啓発本も、益々読むサプリか薬の様になって来ました。つまらないと読了できないので、全部読めた本の感想を書き留めています。

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