はるほんさん
レビュアー:
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──そう、それは怪異の「パンドラの箱」。
なかなかコワイと評判だったので読んでみた。
ある小説家──、おそらくは小野さん自身に重ねているのだが、
以前に書いていたホラー小説(こちらも恐らく「ゴーストハント」のこと)
のあとがきに「怪異談をお寄せください」と書いたところ
読者からそうした手紙が送られてくるようになった。
これが連載となり、後に「鬼談百景」という1冊になっている。
が、自分はどうもこういう体験談がピンと来ない。
例えばトンネルで白い服を着た女性を見たとか
例えば何時何分に階段を昇ると1段増えるとか
例えば毬を持った銅像がドリブルをしながら追いかけてくるとか
いや、最後のは聞いたとき思わず吹き出したんだが。
何というか、映画のクライマックスだけ見たようで脈絡が分からない。
意味も分からない。
怖さだけを強要されるようで、現実感が薄いのだ。
が、本書はそんな「ありがちな怪異」の根っこを掴み、
知りたくない部分までもをずるずると引き摺りだしてしまう。
──そう、それは怪異の「パンドラの箱」。
「残穢」に手を伸ばしたら
貴方自身がその手に捕まれてしまうのだから──
小説家に1通の怪異が届く。
「マンションの部屋に何かが居るような気配が──、音がする」
ありがちな話だ。
「気のせい」で済ませてしまえば済むようなその微かな音を
「見よう」としてしまったばかりに、手紙の主は目の端に一瞬、
着物のように見える「何か」を写してしまう。
そうなると、もう無視はできない。
小説家と手紙の主は、部屋が事故物件だったのでは?と考える。
当然、そう考えるだろう。
だがそのような事実はなかった。
代わりに、他に「妙に人が居着かない部屋」があると分かる。
謎は一向に解けない。
「似たような怪異」と「人が居着かない団地」が浮かび上がり
怪異は時間と場所を広げ始める。
いくつか事故や事件にはいきあたるものの、
それらは「派生」したものであり、「原本」ではないように思える。
そう 想像だにしない遠い場所と時代から「穢れ」は来ていた。
「何か」があった場所から、人を介し、物を介し、
まるで怪異の宿主からウィルスが広がるように。
穢れの残り──、「残穢」は
ふと貴方の背後に立っているかもしれないのだ。
ストーリー自体は怖いものではない。と思う。
ただ本を閉じてぼんやり考えると、
それを知ったばかりに、何かを──
「残穢」を呼び覚ましてしまったのではないかという
薄いリアルが背中をそっと撫でていく。
「体験談」が切れぎれで脈絡のない、
意味不明なモノなのも、何だか納得してしまうのだ。
むしろそれを繋げてしまったら──、
貴方が、もしくは貴方の部屋が感染してしまうかもしれない。
いや、そんなことを考えてはいけない。
隣の部屋で、いえ貴方の後ろから今
畳を這うような音がしませんでしたか──?
ある小説家──、おそらくは小野さん自身に重ねているのだが、
以前に書いていたホラー小説(こちらも恐らく「ゴーストハント」のこと)
のあとがきに「怪異談をお寄せください」と書いたところ
読者からそうした手紙が送られてくるようになった。
これが連載となり、後に「鬼談百景」という1冊になっている。
が、自分はどうもこういう体験談がピンと来ない。
例えばトンネルで白い服を着た女性を見たとか
例えば何時何分に階段を昇ると1段増えるとか
例えば毬を持った銅像がドリブルをしながら追いかけてくるとか
いや、最後のは聞いたとき思わず吹き出したんだが。
何というか、映画のクライマックスだけ見たようで脈絡が分からない。
意味も分からない。
怖さだけを強要されるようで、現実感が薄いのだ。
が、本書はそんな「ありがちな怪異」の根っこを掴み、
知りたくない部分までもをずるずると引き摺りだしてしまう。
──そう、それは怪異の「パンドラの箱」。
「残穢」に手を伸ばしたら
貴方自身がその手に捕まれてしまうのだから──
小説家に1通の怪異が届く。
「マンションの部屋に何かが居るような気配が──、音がする」
ありがちな話だ。
「気のせい」で済ませてしまえば済むようなその微かな音を
「見よう」としてしまったばかりに、手紙の主は目の端に一瞬、
着物のように見える「何か」を写してしまう。
そうなると、もう無視はできない。
小説家と手紙の主は、部屋が事故物件だったのでは?と考える。
当然、そう考えるだろう。
だがそのような事実はなかった。
代わりに、他に「妙に人が居着かない部屋」があると分かる。
謎は一向に解けない。
「似たような怪異」と「人が居着かない団地」が浮かび上がり
怪異は時間と場所を広げ始める。
いくつか事故や事件にはいきあたるものの、
それらは「派生」したものであり、「原本」ではないように思える。
そう 想像だにしない遠い場所と時代から「穢れ」は来ていた。
「何か」があった場所から、人を介し、物を介し、
まるで怪異の宿主からウィルスが広がるように。
穢れの残り──、「残穢」は
ふと貴方の背後に立っているかもしれないのだ。
ストーリー自体は怖いものではない。と思う。
ただ本を閉じてぼんやり考えると、
それを知ったばかりに、何かを──
「残穢」を呼び覚ましてしまったのではないかという
薄いリアルが背中をそっと撫でていく。
「体験談」が切れぎれで脈絡のない、
意味不明なモノなのも、何だか納得してしまうのだ。
むしろそれを繋げてしまったら──、
貴方が、もしくは貴方の部屋が感染してしまうかもしれない。
いや、そんなことを考えてはいけない。
隣の部屋で、いえ貴方の後ろから今
畳を這うような音がしませんでしたか──?
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歴史・時代物・文学に傾きがちな読書層。
読んだ本を掘り下げている内に妙な場所に着地する評が多いですが
おおむね本人は真面目に書いてマス。
年中歴史・文豪・宗教ブーム。滋賀偏愛。
現在クマー、谷崎、怨霊、老人もブーム中
徳川家茂・平安時代・暗号・辞書編纂物語・電車旅行記等の本も探し中。
秋口に無職になる予定で、就活中。
なかなかこちらに来る時間が取れないっす…。
2018.8.21
この書評へのコメント

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- 出版社:新潮社
- ページ数:359
- ISBN:9784101240299
- 発売日:2015年07月29日
- 価格:637円
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