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祐太郎さん
祐太郎
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16世紀~19世紀半ば,パイナップルは上流階級のシンボルだった。君は1個36万円もするパイナップルが食べられるか?
パイナップルはおいしいですよね。縁日や露店でついつい1本100円のパイナップルバーを買ってしまいます。でも,酢豚にパイナップルはどうしても許せません。

ヨーロッパ人とパイナップルの出会いは,コロンブスの第2回航海にさかのぼります。新大陸では,アマゾン川周辺原産のパイナップルが栽培が簡単なことから西インド諸島にまで人間の手を介して広がっていたのです。パイナップルの甘酸っぱさはヨーロッパ人の心をわしづかみしました。コロンブスは,パイナップルをカトリック両王フェルディナント王とイサベラ女王に献上し,フェルディナント王はその甘酸っぱい味わいと匂いに魅了されます。この瞬間,パイナップルは植民地支配に君臨する上流階級の食べ物として位置づけられました。

なにせ,パイナップルを船一杯に積んでも冷蔵機能もなく,何週間もかけてヨーロッパに届くころにはほぼすべてが腐敗してしまいます。そのため,各国の王は温室を作って栽培するという贅沢な行動にでます。結果的に,完熟のパイナップル1個が現在価値にして36万円(本文中では3000ドル)という驚愕の値段で長らく経過します。その間,中流階級は砂糖漬けや後には缶入りパイナップルで我慢していました。

 それを打ち破ったのが蒸気船と冷蔵技術の進歩でした。そのため,中流階級や果ては車引き販売で等級が落ちるとはいえ,労働者階級まで「生パイナップル」が口に運べるようになると,シンボルとしてのパイナップルは崩壊します。

 改めて驚きだったのはハワイとパイナップルの関係。パイナップルがハワイに移植されたのは19世紀末。アメリカ本土では育たなかったパイナップルが常夏のハワイで生産量を増やしていき,ドールやデルモンテが成長していきます。さらに,「南国の楽園」というイメージとパイナップルが結びつき,日本人や中国人も流入し,コスモポリタンとしてのハワイの象徴のようにパイナップルが位置づけられていきます。しかし,人件費の高騰などで,一時は世界の生産量の過半数を占めていたハワイも今では数パーセントにまで低下しています。それでも,パイナップルとハワイは切っても切れない関係になっています。

 本書の最後の方には本シリーズの慣例通り?世界各地のパイナップル事情が掲載されており,日本については

「探してでも食べてみる価値があるのはパイナップル寒天だ」


と写真入りで熱く書いていますが,パイナップルの寒天ゼリーを看板メニューとして掲げているようなお店を探すこと自体,日本人でも困難を極めそうです。ネットで探しても見つかりません。どなたかご存知なら教えてください。
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祐太郎
祐太郎 さん本が好き!免許皆伝(書評数:2349 件)

片道45分の通勤電車を利用して読書している
アラフィフ世代の3児の父。

★基準
★★★★★:新刊(定価)で買ってでも満足できる本
★★★★:新古書価格・kindleで買ったり、図書館で予約待ちしてでも満足できる本
★★★:100均価格で買ったり図書館で何気なくあって借りるなら満足できる本
★★:どうしても本がないときの時間つぶし程度ならいいのでは?
★:う~ん
★なし:雑誌などの一言書評

※仕事関係の本はすべて★★★で統一します。

プロフィールの画像はうちの末っ子の似顔絵を田中かえが描いたものです。
2024年3月20日更新

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この書評へのコメント

  1. ぽんきち2015-11-04 22:03

    パイナップルというと、「おもひでぽろぽろ」で、とっても期待して食べたのに、いまいちだった・・・という残念エピソードが思い浮かびます。
    昭和40年代はまだまだ高級品で、滅多にお目にかかれないものだったのでしょうね。

  2. 祐太郎2015-11-05 19:46

    ☆ぽんきちさん
    たぶん、「完熟」ってのが下々まで生き届かなかったんだと思います。
    今は、完熟じゃないものを探す方が難しいですよね。

  3. No Image

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