はるほんさん
レビュアー:
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認知症のバーチャンを連れてベトナムへ…、ええっ!?
10月17日から劇場公開された「ベトナムの風に吹かれて」。
(※作者の故郷・新潟では先行ロード―ショーされている)
原作「越後のbaちゃんベトナムへ行く」を
映画化にあたって加筆文庫化したものらしい。
ベトナムはハノイで日本語教師を務める小松さんは
父の死後、母親と一緒に暮らすことに決めた。
日本に帰国するのではない。
なんと要介護3の認知症を持つ82歳の母親を、
パスポートをとって飛行機に乗せ、ベトナムに連れて行くのだ。
うひゃーーーーーーーー!とひっくり返りそうな話だ。
当然、周囲からも「なにを考えてるんだ!」と反対もあったらしい。
だがそこには純粋に「一緒に暮らしたい」と言う小松さんの思いと
「当然のこと」と受け止めている自然さがあり、
なんだか(,,゚Д゚) ガンガレ!と応援したくなってしまう。
小松さんにも多大な苦労はあったろうが、
このエッセイの魅力は何より、このBaちゃんなのだ。
(※実際は母だが、御家庭のいろいろな事情で小松さんはこう呼んでいる)
生まれて初めての飛行機もしれっと乗ってしまい、
ベトナムにつくと「そらたまげたのぉ」と、しれっと生活を始めてしまうのだ。
急激な生活変化は、認知症のお年寄りに良くないと言われる。
が、どうやらBaちゃんはその時は「!」と思っても
しばらく経つと「?」になってしまい、
!と?の間で上手く自分に折り合いを付けていたようだ。
それはある意味、認知症だからこその適応力なのかもしれない。
日本で認知症と言えば、家庭介護か施設に入るのが一般的だ。
自分も多少の心当たりがあるが、
限られたスペースで変化の無い生活をしていると
当人の感覚もどんどん限られ、小さくなっていく。
だがBaちゃんは、小松さんと一緒にガンガン散歩に行き、
たまには旅行などもして、アクティブに動き回る。
それが高じて行方不明になってしまったこともあるのだが
Baちゃんはそんなことも忘れてしまう。
無論、小松さん本人は大変だったろうが、
楽しそうなBaちゃんを読んでいると、ついコチラも楽しくなってしまう。
認知の症状が改善される訳ではない。
外国語なんぞちっともわからない上に
ベトナムに居ることすらもしばしば怪しくなるBaちゃんだが
きっと小松さんは、この介護の形を選んだことを
この先後悔しなくて済むだろうと思えた。
うちもばーちゃんがリハビリ施設に入っている。
ばーちゃんの身体では絶対に家庭介護は無理だと分かっていても
「本当にこれでよかったのか」という後悔はついて回る。
きっと最後までそう思う。
不便な山村で暮らしていた時の方が、ばーちゃんはきっと自由だったろう。
Baちゃんはフリーダムだ。
アジアの遥か彼方に居ながらにして、
記憶の引き出しから日本を取り出し、時にはベトナムをしまいこんで、
ドラえもんのどこでもドアがあるかのように
国境を自由に行き来している。
が、いいことばかりではない。
Baちゃんはケガをして、寝込んでしまうのだ。
自由を失ったBaちゃんは小松さんの手に負えなくなってしまい、
「介護の本当の苦しさ」が浮かび上がる。
全体的にさらっと読める構成になっているが
むしろもっと深く書かれていてもよかったと思う。
「Baちゃんの行動や言動にはちゃんと意味があった」と言う気づきは
例え個人的なことでも、読んでみたいと思わせた。
それくらい、Baちゃんは魅力的なのだ。
本の中で小松さんが披露されている、Baちゃん短歌が微笑ましい。
子どもの歌は、何だかはっとさせられる。
余談:
カンケーないが気になったので。
映画監督があとがきを寄稿されているが、コレはないほうがよかった。(笑)
予告は結構原作イメージで作られてる感があったんだが
監督さんの話がミョーに吉川晃司推しで、
なんかトンデモ改編されてる印象…。うーん。
(※作者の故郷・新潟では先行ロード―ショーされている)
原作「越後のbaちゃんベトナムへ行く」を
映画化にあたって加筆文庫化したものらしい。
ベトナムはハノイで日本語教師を務める小松さんは
父の死後、母親と一緒に暮らすことに決めた。
日本に帰国するのではない。
なんと要介護3の認知症を持つ82歳の母親を、
パスポートをとって飛行機に乗せ、ベトナムに連れて行くのだ。
うひゃーーーーーーーー!とひっくり返りそうな話だ。
当然、周囲からも「なにを考えてるんだ!」と反対もあったらしい。
だがそこには純粋に「一緒に暮らしたい」と言う小松さんの思いと
「当然のこと」と受け止めている自然さがあり、
なんだか(,,゚Д゚) ガンガレ!と応援したくなってしまう。
小松さんにも多大な苦労はあったろうが、
このエッセイの魅力は何より、このBaちゃんなのだ。
(※実際は母だが、御家庭のいろいろな事情で小松さんはこう呼んでいる)
生まれて初めての飛行機もしれっと乗ってしまい、
ベトナムにつくと「そらたまげたのぉ」と、しれっと生活を始めてしまうのだ。
急激な生活変化は、認知症のお年寄りに良くないと言われる。
が、どうやらBaちゃんはその時は「!」と思っても
しばらく経つと「?」になってしまい、
!と?の間で上手く自分に折り合いを付けていたようだ。
それはある意味、認知症だからこその適応力なのかもしれない。
日本で認知症と言えば、家庭介護か施設に入るのが一般的だ。
自分も多少の心当たりがあるが、
限られたスペースで変化の無い生活をしていると
当人の感覚もどんどん限られ、小さくなっていく。
だがBaちゃんは、小松さんと一緒にガンガン散歩に行き、
たまには旅行などもして、アクティブに動き回る。
それが高じて行方不明になってしまったこともあるのだが
Baちゃんはそんなことも忘れてしまう。
無論、小松さん本人は大変だったろうが、
楽しそうなBaちゃんを読んでいると、ついコチラも楽しくなってしまう。
認知の症状が改善される訳ではない。
外国語なんぞちっともわからない上に
ベトナムに居ることすらもしばしば怪しくなるBaちゃんだが
きっと小松さんは、この介護の形を選んだことを
この先後悔しなくて済むだろうと思えた。
うちもばーちゃんがリハビリ施設に入っている。
ばーちゃんの身体では絶対に家庭介護は無理だと分かっていても
「本当にこれでよかったのか」という後悔はついて回る。
きっと最後までそう思う。
不便な山村で暮らしていた時の方が、ばーちゃんはきっと自由だったろう。
Baちゃんはフリーダムだ。
アジアの遥か彼方に居ながらにして、
記憶の引き出しから日本を取り出し、時にはベトナムをしまいこんで、
ドラえもんのどこでもドアがあるかのように
国境を自由に行き来している。
が、いいことばかりではない。
Baちゃんはケガをして、寝込んでしまうのだ。
自由を失ったBaちゃんは小松さんの手に負えなくなってしまい、
「介護の本当の苦しさ」が浮かび上がる。
全体的にさらっと読める構成になっているが
むしろもっと深く書かれていてもよかったと思う。
「Baちゃんの行動や言動にはちゃんと意味があった」と言う気づきは
例え個人的なことでも、読んでみたいと思わせた。
それくらい、Baちゃんは魅力的なのだ。
本の中で小松さんが披露されている、Baちゃん短歌が微笑ましい。
湯たんぽが 長野県から神戸市へ 郵便の後 空飛びハノイへ
Baちゃんに 言葉の違う世界なし 「こっちがあやせば子どもは笑うよ」
今日もまた 散歩に出かけ手にお菓子 誰がくれたか Baちゃんの手に
子どもの歌は、何だかはっとさせられる。
余談:
カンケーないが気になったので。
映画監督があとがきを寄稿されているが、コレはないほうがよかった。(笑)
予告は結構原作イメージで作られてる感があったんだが
監督さんの話がミョーに吉川晃司推しで、
なんかトンデモ改編されてる印象…。うーん。
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歴史・時代物・文学に傾きがちな読書層。
読んだ本を掘り下げている内に妙な場所に着地する評が多いですが
おおむね本人は真面目に書いてマス。
年中歴史・文豪・宗教ブーム。滋賀偏愛。
現在クマー、谷崎、怨霊、老人もブーム中
徳川家茂・平安時代・暗号・辞書編纂物語・電車旅行記等の本も探し中。
秋口に無職になる予定で、就活中。
なかなかこちらに来る時間が取れないっす…。
2018.8.21
この書評へのコメント
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- 出版社:KADOKAWA/角川書店
- ページ数:221
- ISBN:9784041034569
- 発売日:2015年09月24日
- 価格:562円
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